【就労ビザ】技術・人文知識・国際業務の要件、不許可事例をまるっと解説!

外国人が日本で働きたいと考えた場合、就労ビザを取得する必要があります。
就労する業務内容により、就労ビザは16種類に分けられるため、外国人のビザがどの分野に該当するのかを正しく把握しておくことが重要です。

このページでは、就労ビザの代表である「技術・人文知識・国際業務(ギジンコク)」についての要件や対象となる職種、申請条件や許可が下りるまでの期間、雇用の際の注意点、不許可事例などの注意すべきポイントをご紹介します。

  1. そもそも就労ビザとは?
  2. 技術・人文知識・国際業務とは?
    1. 「技術・人文・国際業務」で認められる職種一覧
      1. 「技術」
      2. 「人文知識」
      3. 「国際業務」
  3. 「技術・人文知識・国際業務」を申請するための要件
    1. 要件①:学歴(職歴)と業務内容の関連性がある
    2. 要件②:学歴は海外か日本の大学卒業、もしくは日本の専門学校卒業以上
    3. 要件③:企業の経営状態が良好
    4. 要件④:給与の水準が日本人と同等かそれ以上
    5. 要件⑤:過去の在留状況が良好であること
  4. 「技術・人文知識・国際業務」の申請方法は2パターンある
    1. 就労ビザを新規に取得する際の流れ
    2. 在留資格を変更する際の流れ
    3. 申請から許可までには30日以上かかることがある
  5. 技術・人文知識・国際業務の許可事例
  6. 技術・人文知識・国際業務の不許可事例
    1. 不許可要因①:学歴(職歴)と業務内容の関連性がない
    2. 不許可要因②:職務内容の専門性がない
    3. 不許可要因③:日本人と同額以上でない給与
    4. 不許可要因④:雇用の必要性がない
    5. 不許可要因⑤:在留中の素行
    6. 不許可になってしまったときの対応
  7. 採用する際に注意すべきポイント
    1. 副業アルバイトには資格外活動許可が必要な場合も
    2. 社内の異動に伴う業務変更に注意
    3. 更新時期に注意
    4. 「技術・人文知識・国際業務」では単純労働はできない
      1. 業務によっては在留資格「特定技能」が適している場合も……
    5. 学歴(職歴)と業務との関連性が必要
  8. 技術・人文知識・国際業務のまとめ

そもそも就労ビザとは?

就労ビザとは、外国人に対し、日本で働き収入を得ることを認める在留資格です。日本で働きたいと考える外国人は、あらかじめ就労ビザを取得しなければなりません。


そのため、外国人を採用しようと考えている企業は、就労ビザを取得している人を雇う必要があります。日本での就労が認められていない外国人を採用することはコンプライアンス違反になってしまうため注意が必要です。

技術・人文知識・国際業務とは?

外国人が、日本で技術者やオフィスワーカーとして企業で働く場合に必要になる在留資格が、「技術・人文知識・国際業務」です。

頭文字を取って、「技人国(ギジンコク)」とも呼ばれます。

学歴(職歴)と業務内容との関連性があることが要件で、外国人がこれまで学んできた知識や仕事で培ってきた経験、母国の文化や言語に関する知識と関連性のある業務であれば従事することが可能です。専門知識を必要としない業務や、外国人本人の学歴・職歴や文化などと関連しない業務の場合、「技術・人文知識・国際業務」には当てはまりません。

在留期間は5年、3年、1年または3カ月です。

「技術・人文・国際業務」で認められる職種一覧

では具体的にどんな職種に就くことができるのか、技術・人文知識・国際業務のそれぞれの主な業務内容を説明します。

「技術」

技術は、「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術を要する業務」とされています。

▼具体的な業務

  • 管理業務(経営者を除く)
  • 調査研究
  • 技術開発(農林水産分野、食品分野、機械器具分野、その他製造分野)
  • 生産管理(食品分野、機械器具分野、その他製造分野)
  • 建築・土木・測量技術
  • 情報処理・通信技術 等

「人文知識」

人文知識は、「法律学、経済学、社会学等、その他人文科学の分野に関する知識を要する業務」とされています。

▼具体的な業務

  • 法律関係業務
  • コピーライティング
  • 教育(教育機関を除く)
  • 企画事務(マーケティング、広報、宣伝)
  • 会計事務
  • 法人営業 等

「国際業務」

国際業務は、「語学力や外国の文化、国際経験等を要する業務」とされています。

▼具体的な業務

  • デザイン 
  • 翻訳
  • 通訳
  • 海外取引業務

ただし、上記の職種であれば在留資格を取得できるというわけではありません。

外国人本人のこれまでの経歴と、これから就く業務との関連性があるかどうかが最も重要なポイントとなります。これらのポイントが押さえられていないと、申請が不許可になる可能性が高いでしょう。

「技術・人文知識・国際業務」を申請するための要件

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」を申請するためには、学歴などの条件が必要で、満たしていない場合は不許可となります。

要件を詳しく見ていきましょう。

要件①:学歴(職歴)と業務内容の関連性がある

外国人本人の専門的な知識やスキル、感受性を活かせる業務内容ではない場合は、基本的に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取得できません。

要件②:学歴は海外か日本の大学卒業、もしくは日本の専門学校卒業以上

海外の大学卒の場合は「日本の大学卒に相当する」ということを証明する必要があり、海外の専門学校卒では、学歴の条件は満たせません。必要となる学歴を満たせない場合、「技術」「人文知識」では実務経験(職歴)10年以上、「国際業務」の場合は3年以上あることで条件を満たすことができます。

①学歴要件

大学(短大含む)を卒業したもの
大学は日本、海外の大学どちらでも構いません。

専門学校を卒業したもの
専門学校の場合は、日本国内の専門学校である必要があります。

②実務経験

10年以上の実務経験があること
この実務経験には、大学や専門学校、高校で当該知識又は技術に係る科目を専攻した期間を含みます。

ただし、申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発等)については三年以上の実務経験で問題ありません。

要件③:企業の経営状態が良好

受け入れ企業の経営状態が安定しているかどうか、審査されます。

その為、通常は決算報告書を申請時に提出します。経営状態が良い会社であれば問題ないのですが、大幅な赤字決算で、事業の安定・継続性が乏しい会社の場合、審査が厳しくなります。ただ、赤字だから就労ビザが下りないということではなく、事業計画書などを作成し、黒字化していく今後のビジョンをしっかり説明できれば問題ありません。実績のない新設会社も同様です。

要件④:給与の水準が日本人と同等かそれ以上

同一労働同一賃金が適用されます。外国人の給与が、同様業務を行う日本人社員と同等かそれ以上の給与条件でなければなりません。

要件⑤:過去の在留状況が良好であること

「素行善良要件」とは法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることを指します。

普段の生活の中で、人に迷惑をかけずに生活していますか?ということです。

▼具体例

  • 日本の法律に違反して、懲役、禁錮又は罰金刑を受けていないこと。
  • 過去の在留の中で多数回の交通違反をしていないこと。
  • 留学生や家族滞在等のビザの方が入管から資格外活動の許可を得て仕事をしていること、もしくはオーバーワークをしていないこと。

等があげられます。

この他にも、素行善良要件のケースはたくさん考えられますが、ケースバイケースで判断されるため明確な基準は存在しません。

この素行善良要件については日常生活において法律に違反するような行動をしていなければ、特に心配する必要はありません。

「技術・人文知識・国際業務」の申請方法は2パターンある

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の取得方法は、新規申請と変更申請の2パターンに分けられます。

  • 就労ビザの新規申請(海外から日本で働く場合)
  • 在留資格の変更申請(在留資格を切り替える場合)

状況によって手続きの流れが異なるため、外国人がどちらに当てはまるかを事前に把握しておくことが大切です。

就労ビザの新規取得と変更申請の違いを解説します。

就労ビザを新規に取得する際の流れ

外国人が来日して新たに就労を始める際には、受け入れ先の企業側が代理人として就労ビザを出入国在留管理局へ申請する必要があります。主な申請の流れは次のとおりです。

  1. 在留資格認定証明書交付申請
  2. 在留資格認定証明書が代理人に交付される
  3. 在留資格認定証明書を外国人本人に送付
  4. 外国人本人が在留資格認定証明書を在外日本公館で提示しビザ(査証)を申請
  5. 在外日本公館にてビザ発給

就労を希望している本人はまだ海外にいるうちに手続きを進めなければならないため、企業が代わりに手続きをおこないます。一般的な手続きにかかる時間は、1~3ヵ月程度です。

在留資格を変更する際の流れ

在留資格を変更して就労ビザを取得する場合は、原則本人が出入国在留管理局へ申請します。申請の流れを確認しておきましょう。

  • 在留資格資格変更許可の申請
  • 結果が通知される
  • 在留カードを受け取る

在留資格変更申請は、留学生が就職をし在留資格を変更する際などが該当します。

申請から許可までには30日以上かかることがある

外国人を海外から呼び寄せて採用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」という手続きを行います。留学生の在留資格を変更して採用する場合は、「在留資格変更許可申請」という手続きが必要です。
「在留資格認定証明書交付申請」は、大体60日程度、在留資格変更許可申請は40日~60日程度かかります。

技術・人文知識・国際業務の許可事例

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の申請の許可事例をご紹介します。

【許可事例1】
携帯ショップの販売員
業務内容:翻訳・通訳。在留外国人に向けた携帯電話の販売業務
学歴:大学・日本語学部
日本語能力:JLPT N1

「外国人に向けての翻訳・通訳業務」「語学を活かした販売促進業務であること」「外国人の来店が多い」ことがポイントです。

【許可事例2】
九州地方の旅館の従業員
業務内容:国内外の旅行業者との折衝やフロント業務、通訳業
学歴:大学・日本語学科
日本語能力:JLPT N2

日本語能力の高さと、業務を行う施設の外国人利用数などがきちんと提示できる必要があります。
単純労働としての雇用は不許可になります。あくまでも、外国人に対して通訳等を行う業務のために雇用するということが証明できるが重要です。

技術・人文知識・国際業務の不許可事例

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の申請で、不許可になった事例をご紹介します。

不許可要因①:学歴(職歴)と業務内容の関連性がない

「技術や知識などの専門性が必要な業務」をおこなうためには、大学や専門学校で専門的な技術や知識を習得する必要があります。

大学や専門学校で専攻した科目と関連しない分野に関しては、「技術や知識などの専門性」を有しているとは判断されません。

「大学や専門学校で専攻した科目」と「従事する職務内容」が関連していることが重要になります。

専修学校(ジュエリーデザイン科)を卒業し,専門士の称号を付与された者から,本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき,月額20万円の報酬を受けて,外国人客からの相談対応,通訳や翻訳に関する業務に従事するとして申請があったが,履修内容と職務内容との間に関連性が認められないため不許可となった。

教育学部を卒業した者から,弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され,弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが,当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。

このような場合は、「特定技能」などの在留資格を取得するのが良いでしょう。

出典:法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

不許可要因②:職務内容の専門性がない

「技術・人文知識・国際業務」を取得する外国人がおこなう業務は「技術や知識などの専門性が必要な業務」ですので、単純作業のような業務は認められません

以下の事例は、宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務などは「技術や知識などの専門性が必要な業務」ではないと判断され、不許可になった事例です。

本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が,本邦のホテルに採用されるとして申請があったが,従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ,主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となった。

本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し,専門士の称号を付与された者が,本邦のホテルとの契約に基づき,フロント業務を行うとして申請があったが,提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ,これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となった。

出典:法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

不許可要因③:日本人と同額以上でない給与

外国人であることだけを理由に日本人に比べて給与を安く設定することは禁止されています。

外国人と日本人が同じ業務内容の場合、外国人の報酬は日本人と同額以上とされています。

以下の不許可事例は、日本人と外国人が同種の業務でありながら外国人の報酬が日本人に比べて低く設定されていたために不許可となった事例です。

日中通訳翻訳学科を卒業した者から,輸出入業を営む企業との雇用契約に基づき,月額17万円の報酬を受けて,海外企業との契約書類の翻訳業務及び商談時の通訳に従事するとして申請があったが,申請人と同時に採用され,同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したため,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。

専修学校(声優学科)を卒業し,専門士の称号を付与された者から,外国人客が多く訪れる本邦のホテルとの契約に基づき,月額14万円の報酬を受けて,ロビースタッフとして翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが,履修内容と職務内容との間に関連性が認められないため不許可となった。

出典:法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

不許可要因④:雇用の必要性がない

大学や専門学校での専攻科目と職務内容が一致していて、給与も日本人と同等だったとしても、そもそも外国人が行う業務が雇用する会社にとって必要なものでなければ不許可となる可能性があります。

どうしても外国人を雇う必要があるという合理的な理由が必要になります。

以下の事例では、日本語を専攻した大学卒業生が通訳業務をおこなうことは問題ありませんが、通訳をする言語に必要性がないと判断されて不許可になった例です。

例えば、スペイン語の通訳が出来たとしても、その旅館の外国人宿泊客でスペイン語を話す外国人がほとんどいない場合、その旅館でスペイン語通訳の需要はほとんどないと判断されます。

本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館において,外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが,当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており,申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となった。

以下の例は、従業員が12名という会社の規模では、コンピューターによる会社の会計管理や労務管理で一人雇うほどの作業量はないのではないかと判断されて不許可になった事例です。

専修学校(情報システム工学科)を卒業し,専門士の称号を付与された者から,本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき,月額25万円の報酬を受けて,コンピューターによる会社の会計管理(売上,仕入,経費等),労務管理,顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが,会計管理及び労務管理については,従業員が12名という会社の規模から,それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと,顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術」,「人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となった。

出典:法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

不許可要因⑤:在留中の素行

大学や専門学校に通っている間の素行に関しても審査の対象となります。

以下の事例は、週28時間以内とされている資格外活動での就労(アルバイト)の規則を破り、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたため、在留状況が良好であるとは認められず不許可となった事例です。

在留資格「留学」の場合、アルバイトは1週間28時間以内と定められています。これをオーバーして働いたことで不許可になる事例は、よく見受けられます。学生自身が何時間働いたかを忘れてしまっていることも少なくないため、後から発覚する場合があり、注意が必要です。

大学(商学部)を卒業した者から,貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき,月額20万円の報酬を受けて,海外取引業務に従事するとして申請があったが,申請人は「留学」の在留資格で在留中,1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり,資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから,その在留状況が良好であるとは認められず,不許可となった。

専門学校における出席率が70%である者について,出席率の低さについて理由を求めたところ,病気による欠席であるとの説明がなされたが,学校の欠席期間に資格外活動に従事していたことが判明し,不許可となったもの

出典:法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

不許可になってしまったときの対応

採用選考の過程で、不許可にならないよう業務の関連性などを確認することはもちろんですが、それでも不許可になってしまった場合は、入管に不許可の理由を確認して対処をしましょう。

そのうえで、別の在留資格を取得したり、過去の職務履歴などから業務の関連性を立証することで、許可が下りる場合もあります。お困りの際は、行政書士などの専門家に相談することがお勧めです。

採用する際に注意すべきポイント

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を採用し、働いてもらう上で注意すべき点をご紹介します。

副業アルバイトには資格外活動許可が必要な場合も

社内規定でアルバイトが許容されていることが前提になりますが、アルバイトをすることも可能です。アルバイトの内容は、「技術・人文知識・国際業務」で許可されたものでなければなりません。アルバイトをする場合は「資格外活動許可」が必要です。

また、副業として自営をすることはできません。自分でビジネスを始めて収入を得ることは、「技術・人文知識・国際業務」で認められた活動の範囲外と考えられます。

社内の異動に伴う業務変更に注意

社内の異動に伴って業務内容を変更する場合には、「異動後の業務内容が在留資格にあっているかどうか」に十分な注意が必要です。

単純労働にあたる場合はもちろん不可能ですが、技術・人文知識・国際業務の資格の中での変更についてはケースバイケースとなるため、念のため出入国在留管理庁に確認しましょう。

実務経験と業務の関連性が薄い場合など、ケースによっては不許可になる可能性もあるので、不安な場合は、異動させる前に専門の行政書士に相談することをおすすめします。

更新時期に注意

次の在留期間更新申請がいつなのか、企業側も把握しておくことが重要です。「技術・人文知識・国際業務」の在留期間は、3カ月、1年、3年、5年ですが、初めて申請するタイミングでは1年更新となる場合が多いです。

万が一期限を超えて在留してしまうと、不法滞在になってしまい、不法滞在の外国人を雇用していると、企業も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。

「技術・人文知識・国際業務」では単純労働はできない

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人には、原則としてそのような単純労働をさせることができません

単純労働は、専門知識を必要としない業務です。「技術・人文知識・国際業務」は、専門知識を必要とする業務に就くための在留資格であるため、単純労働をおこなうことは認められていないのです。

例えば、工場でのライン作業や飲食店での接客作業、ホテルであればベッドメイキングなどは単純労働にあたります。入社後の新人研修の一環として単純労働が含まれている場合でも、事前に出入国在留管理庁に相談しておいた方が良いでしょう。

業務によっては在留資格「特定技能」が適している場合も……

もし、単純労働を含む業務を外国人に担当させたいのであれば、在留資格「特定技能」が適している場合もあります。特定技能は、「技術・人文知識・国際業務」よりも対応できる業務が幅広く、大学卒業などの学歴の条件もないため、採用の門戸を広げやすいことが特徴です。試験に合格する必要はありますが、任せたい業務内容によっては、「特定技能」を検討してみるのも一つの方法です。

学歴(職歴)と業務との関連性が必要

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザで外国人に働いてもらう場合、学歴(職歴)と業務の関連性が最重要です。

大学で情報科学を専攻したのでシステムエンジニアとして働く、大学で法律学を学んだので日本の法律事務所に就職し弁護士の補助職員として働く、というように大学(あるいは日本の専門学校)で勉強したことと、業務内容が関係していなければいけません。

技術・人文知識・国際業務のまとめ

今回は、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」でできる業務とできない業務について紹介しました。また、申請する条件と、申請方法についても説明しました。

「技術・人文知識・国際業務」は、在留期間の更新回数の制限がなく、家族の帯同もできるため、求職者にとって人気の在留資格です。

しかし、年々審査が厳しくなっており、以前であれば許可がおりたケースであっても、現在は不許可となることもあります。中でも、「技術・人文知識・国際業務」は、外国人本人の学歴(もしくは職歴)と、業務との関連性が重要視され、認められない場合は不許可になる事例が多数みられます。

自社では関連性があると思っていても、出入国在留管理庁は関連性がないと判断されることもあり、できるだけ、客観的に関連性を証明する必要があります。

毎日様々な申請を取り扱う出入国在留管理庁の職員が読んだときに、「なるほど、学歴と業務内容との関連は確かにある」と納得できるような内容の書類作成が大事です。

不安な場合は、在留資格に詳しい行政書士に問い合わせることをおすすめします。