「看板の設置には建設業許可だけで足りる」と思っていませんか?
屋外に設置される看板や広告塔などの工事を請け負う際、「建設業許可を持っているから大丈夫だろう」と考えている方が非常に多くいらっしゃいます。しかし実際には、建設業許可だけでは不十分で、別途「屋外広告業者登録」が必要になるケースがあります。
屋外広告物の設置は、各都道府県が定める「屋外広告物条例」の規制対象であり、許可なく業務を行った場合には行政指導や罰則の対象となるおそれも。
「知らなかった」「うちは建設業の登録をしているから大丈夫だと思った」という言い訳は通用しません。
このページでは、建設業許可と屋外広告業者登録の違いや、それぞれに必要な登録・許可要件について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
看板設置業務に本格的に取り組む前に、ぜひ最後までご確認ください。思わぬ法令違反を未然に防ぐヒントが得られるはずです。
それぞれなにができるのか?

簡単に述べると下記のようにできることが異なります。
建築関連の業務を始める際、「建設業許可を取れば屋外広告物設置工事もできるのでは?」というご相談をよくいただきますが、これは大きな誤解です。
屋外広告業者登録と建設業許可は、それぞれ根拠法令も、目的も、対応する業務内容も異なる制度です。
区分 | 建設業許可 | 屋外広告業者登録 |
---|---|---|
内容 | 工事の請負・施工が可能(500万円以上の工事は許可が必要) | 屋外広告物(看板等)の表示・設置を業として行える |
主な対象物 | 建築、設備、解体などの工事全般 | 看板、広告塔、ポスターなど |
必要な場合 | 500万円以上の建設工事を請け負うとき | 屋外に看板等を設置する仕事を請け負うとき |
具体的には下記のように定められています。
屋外広告業者登録
屋外広告物とは、「常時又は一定の期間継続して」、「屋外で公衆に表示されるものであって」、「看板、立看板、はり紙及びはり札、広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出・表示されたもの」を言います。
これらの広告物の表示等を原則として、禁止される地域を禁止区域として定め、また建物等も禁止物件として指定し、良好な景観の形成を行っていきます。
広告主から広告物等の表示や設置に関する工事等を請け負い、屋外で公衆に表示することを業として行う場合に業者登録を受ける必要があります。
建築業許可
建設業法に基づき一件の請負代金が500万円以上の建設工事を施工する際に必要となる許可です。
このように、広告業者登録と建設業許可は、それぞれできることが違いますので、建設業許可を持っていれば、建設した建物に看板等設置できるかというと、そうはいきません。
屋外に看板や広告物を設置するには、必ず屋外広告業者登録が必要となってきます。
それでは次に、それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。
屋外広告業者登録と建設業許可:要件の違い
「看板を設置するなら建設業許可があればいい」と思いがちですが、実は屋外広告物の設置には別途「屋外広告業者登録」が必要になります。それぞれの許可を受けるために要件も大きく異なります。以下では、それぞれの制度が求める主な要件を比較しながら整理してみましょう。
屋外広告業者登録の要件
- 業務主任者を各営業所に置くこと
- 欠格事由に該当していないこと
・屋外広告業の取り消しをされ、その日から2年未満の者
・営業停止期間が完了していない者
・屋外広告物条例に違反し、罰金等課せられ執行終了日から2年未満の者
建設業許可の要件
- 経営業務に関わる方の中に、経営業務管理責任者を置く必要がある
- 工事に関わる契約を結び、見積もりを行う営業所を設置する
- 許可を受けたい業種の専任技術者を持った方がいる
- 財産的信用の基準を満たしている
- 欠格事由に該当していないこと
上記をご覧いただくと、屋外広告業登録と建設業許可の要件が違っていることが分かります。その中でもそれぞれ1.の要件についてもう少し分かりやすく解説していきます。
屋外広告業者登録:業務主任者とは
業務主任者とは、屋外広告物法の条例に基づき、屋外での広告物の表示・設置に関する法令の規定を守り、営業所ごとの業務を適正に行う人のことです。
下記の条件に、どれか一つでも当てはまる方が業務責任者となります。
- 屋外広告士に合格している者
- 屋外広告物講習会の修了者(都道府県や政令市・中核市が行う講習会)
- 技能検定合格者・職業訓練修了者・広告美術仕上げに係る者
屋外広告業者登録を行う際には、必ず「業務主任者」を各営業所に設置することが義務付けられています。
お困りの際はご相談ください
業務主任者についてどうやったらなれるのか判断が難しいこともあります。
「自分が要件を満たしているかわからない」「証明書類が揃えられるか不安」など、お困りの方はお気軽に無料相談をご活用ください。
建設業許可:経営業務管理責任者とは
建設業許可を取得する際に最もつまずきやすいのが、「経営業務の管理責任者(経管)」の要件です。
この要件は、常勤している取締役のうち、以下のいずれかを満たす必要があります。
▼経営業務の管理責任者として認められるパターン
- 建設業に関して5年以上取締役として経験のある者(←メインで使うのはこれです)
- 建設業に関して5年以上取締役に準ずる地位(例:建設部長)にあり、経営業務のある者
- 建設業に関して、6年以上取締役に準ずる地位があるものとして、経営業務を補佐する業務に従事した経験がある者
- 建設業に関して2年以上役員等として経験を有し、かつ5年以上役員又は役員に次ぐ職制上の地位にあるもの。さらに5年以上財務管理、労務管理、業務運営管理の従事した者を補佐としておくこと。
- 5年以上役員としての経験を有し、かつ建設業に関して2年以上の経験があるもので更に、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営管理に従事した補佐役をおくこと。
中小企業や個人経営に近い会社の場合は、「5年以上取締役としての経験(パターン1)」での証明が現実的です。
(例)
・建設会社の取締役として5年以上の経験がある。
・個人事業主として5年以上の経験がある。
・建設業許可を取得している建設業者の令3条の使用人(支店長)として5年以上の経験がある。
お困りの際はご相談ください
経営業務の管理責任者の要件証明に関しては判断が難しいこともあります。
「自分が要件を満たしているかわからない」「証明書類が揃えられるか不安」など、お困りの方はお気軽に無料相談をご活用ください。
建設業許可:専任技術者とは
建設業許可は経営業務管理責任者以外にも、営業所(本店等)に常勤する専任技術者が求めらます。この専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
<一般建設業許可の専任技術者の要件>
以下のいずれかの要件を満たす者が専任技術者になることができます。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
お困りの際はご相談ください
専任技術者の要件証明に関しては判断が難しいこともあります。
「自分が要件を満たしているかわからない」「証明書類が揃えられるか不安」など、お困りの方はお気軽に無料相談をご活用ください。
まとめ
建設業許可と屋外広告業者登録の違いについてご説明しましたが、ここで一番気をつけてほしいのは、「建設業許可があるから屋外広告物設置工事もできる」と誤解しているケースが非常に多いことです。
実は、建設したビルや住宅等に看板をつけるには、建設業許可だけでは法律違反となり、最悪の場合は罰則や営業停止などの厳しい処分を受けるリスクがあります。
知らずにそのまま業務を始めてしまうと、あとから大きなトラブルに発展しかねません。
だからこそ、早急に屋外広告業者登録が必要かどうかの確認を行い、未登録なら速やかに手続きを始めることが重要です。
手続きは複雑で煩雑なため、行政書士などの専門家にすぐ相談し、確実に対応しておくことを強くおすすめします。
一日でも遅れるとリスクが膨らむため、「まだ大丈夫」と放置せず、すぐに動き出しましょう。