外国人が日本に在留して活動をおこなうために必要な在留資格は、目的別に就労関係と身分関係のものがあり、そのなかでも多くの種類があります。資格の種類によって在留期限や就労の可否なども変わってくるため、非常に複雑です。
また、企業にとっては、業務範囲や在留期限などが大きく関係してくるため、採用担当者は在留資格に対する正しい知識が必須です。
このページでは、29種類に分かれている在留資格についてご紹介します。
そもそも在留資格とは?
在留資格とは、「日本に合法的に滞在するための資格」のことです。
外国人が日本に在留する間一定の活動を行ったり、一定の身分や地位があるということを認めた「入管法」における資格となります。目的に合わせた在留資格を取得することによって、許可された期間まで日本に滞在することができます。
なお、在留資格には、就労できない資格、就労可能な資格など、全部で29種類の資格があります。
在留資格には期限がある
在留資格には有効期限があり、在留資格の種類や外国人の素行条件に応じて、5年・3年・1年・3ヵ月などと在留期間が個別に与えられています。在留期間を過ぎても日本に滞在したい場合には、在留期間の更新をしなければなりません。
出入国在留管理庁の「在留審査処理期間(日数)」(2024年7~9月許可分)によると、在留資格の更新手続きにかかる更新期間は、10~50日程度です。具体例を挙げると、在留資格「短期滞在」では更新期間の平均が12.1日と短いものの、「特定技能1号」では平均で43.2日もの日数を要しています。
在留期間更新にかかる日数は、在留資格の種類によっても変わるため、余裕を持って更新手続きを行いましょう。
ビザ(査証)と在留資格は別物
在留資格は「ビザ」と呼ばれることがありますが、ビザと在留資格は別ものです。
ビザ(査証)は、日本へ上陸する外国人の入国許可証として外務省が発行するもので、上陸審査を通過すれば役割を終えます。
一方、在留資格は日本で活動する内容に応じて、法務省管轄の出入国在留管理庁が外国人に与える資格です。ただし、外国人が日本で就労する場合、一部の在留資格を「就労ビザ」と呼ぶケースはあります。
在留資格取得の要件
基本的には日本国籍を取得していない人、が取得の対象者です。取得の要件は、在留資格ごとに異なります。しかし、以下に該当してしまうとそもそも入国の許可がおりません。海外現地の外国人材を採用する場合には注意が必要です。
①法令違反で刑に処されたことがある
②麻薬などの常用者
③銃や刀剣などを不法に所持
④過去に強制退去となったことがある
⑤出国命令制度を利用して出国
⑥犯罪歴などがあり素行が悪い
在留資格は「居住資格」と「活動資格」に分かれる(全29種類)
在留資格は、大きく「居住資格」と「活動資格」に分けられ、2024年11月時点で計29種類の資格があります。以下では、各資格の紹介をするので、ぜひ自社の事業に適した外国人材を雇用するうえでの参考にしてください。
居住資格(4種類)
地位や身分に基づく居住資格は4種類あり、それぞれの在留資格に該当する外国人は以下のとおりです。住居資格では就労は制限されていません。
在留資格 | 該当者 | 在留期間 |
---|---|---|
永住者 | 法務大臣が永住を認めた外国人 | 無期限 |
定住者 | 法務大臣が特別な理由を考慮し、一定期間の居住を認めた外国人 | 5年、3年、1年、6月 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者や子、特別養子にあたる外国人 | 5年、3年、1年、6月 |
永住者の配偶者等 | 永住者の配偶者、または子にあたる外国人 | 5年、3年、1年、6月 又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲) |
活動資格(25種類)
在留資格には、就労可否などの条件が異なる活動資格が25種類あります。以下では、就労条件に応じて、在留資格を3つの項目で解説します。
▼活動範囲内で就労できる在留資格(19種類)
就労するうえで活動内容に制限のある在留資格は19種類です。以下では、在留資格の活動範囲や在留期間を紹介します。
上表のとおり、在留資格の種類によって活動範囲や在留期間がそれぞれ規定されています。外国人材を受け入れる際は、自社の事業との関連性なども踏まえて、適切な在留資格を持つ外国人労働者を雇用することが大切です。
▼原則就労できない在留資格(5種類)
以下の在留資格は、原則として就労することができません。
在留資格 | 活動内容 |
---|---|
文化活動 | 収入をともなわない学術・芸術上の活動、または日本特有の文化・技芸に関する専門的な研究、もしくは専門家による指導を受ける活動 |
短期滞在 | 日本に短期間滞在して行う観光や保養、スポーツ、講習などの活動 |
留学 | 日本の大学、高等専門学校、高等学校などで教育を受ける活動 |
研修 | 日本の公私機関で技能等を習得する活動 |
家族滞在 | 教授、芸術、宗教などの在留資格を持つ外国人の扶養を受ける配偶者、または子どもとして行う日常的な活動 |
ただし、文化活動・留学・家族滞在の在留資格に限っては、「資格外活動の許可」を受ければ一定の範囲内で就労が可能になります。 これらの在留資格を持った外国人が応募してきた場合、必ず資格外活動の許可を得ているかを確認しましょう。
許可を受けずに就労すると、罰則が科されてしまいます。
ケースによって就労可能な在留資格:特定活動
在留資格「特定活動」は、外国人が個別に許可された活動内容に応じて、就労の可否が変わるのが特徴です。該当例としては、ワーキング・ホリデーや家事使用人などが挙げられます。
在留期間は、5年・3年・1年・6ヵ月・3ヵ月、または法務大臣が5年を超えない範囲で個別に指定する期間です。
認められていない活動に従事させることは違法
外国人が就業する際は、活動内容が在留資格の範囲内である必要があります。在留資格で許可された時間数を超えて働くことや、認められていない活動に従事することは不可能です。
例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格では、「コンビニで接客をする」といった単純労働は認められていません。単純労働に従事させた場合は、資格外の活動に従事させたとして不法就労助長罪に問われ、企業も処罰の対象となる可能性があります。
ただし、単純労働が短期間の研修に含まれているようであれば、許可されるケースもあります。業務内容によっては、在留資格の取得後に資格を取り消されてしまうので注意が必要です。
在留資格を取得する方法
企業が外国人を採用する際は、在留資格の取得に向けて申請をサポートする必要があります。在留資格を取得するおもな流れは、以下のとおりです。
1.在留資格認定証明書を交付申請する
2.外国人が現地でビザを申請する
3.外国人が日本で在留カードを受け取る
まずは、外国人の在留資格認定証明書の交付申請を行い、従事する予定の活動が対象の在留資格と適合しているかを出入国在留管理庁に審査してもらいます。
外国人が海外在住であれば、在留資格認定証明書が許可されたあとに、現地の日本大使館・領事館でビザ申請を行います。その後、日本へ入国した外国人が空港で在留カードを受け取る、という流れです。
なお、在留手続きに関してはオンラインでの申請も可能です。
在留資格「特定技能」であれば幅広い業務に従事できる
在留資格「特定技能」は、人手不足が顕著な「介護」「外食」「宿泊」などの12の特定産業分野で、即戦力としての働きが期待できる外国人材に向けた在留資格です。
単純労働が付随的な業務に含まれている場合には、在留資格が許可される見込みがあります。活動範囲が限定的な一部の在留資格に比べると、より柔軟性を持って外国人材を重要な戦力として迎え入れられるでしょう。
「特定技能2号」の取得者は在留期間の制限なしで働ける
特定技能には、相当程度の知識または経験が必要な技能を持つ外国人向けの「特定技能1号」と、熟練した技能を持つ外国人向けの「特定技能2号」があります。
特定技能1号は通算で最大5年の在留期間が設けられています。一方、特定技能2号は在留期間の更新制限なしで働けるうえに家族帯同も可能なので、外国人材の長期的な活躍が期待できることが魅力です。
2023年には特定技能2号で9分野が追加され、介護分野を除く11分野が対象になりました。なお、介護分野に関しては在留資格「介護」があるため、特定技能1号から在留資格を移行することで、無期限の就労が可能です。
まとめ
今回は在留資格の基本について解説しました。 日本で働くことのできる在留資格は、活動内容に制限があるものと、制限のないもの(身分に基づく在留資格)に種類が分かれています。また、特定活動の場合はケースによっては就労が可能です。
外国人社員を採用するときはもちろん、社内の異動時にも、在留資格で認められている業務かどうかのチェックが必要です。 在留資格で認められていない活動の場合、在留資格が不許可になってしまうため、十分に気をつけてください。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。