東京都にはレストランから居酒屋まで約65,000もの飲食店が営業されており、全国の約15%が東京都内に集中しています。
これだけ集中しているので飲食店をオープンするための手続きがわからなくて、困っているオーナーも多いです。
飲食店オープンのために「いつまでに手続きすれば、オープンに間に合うのか?」「オープンの準備が忙しくて、許可の手続きをする余裕がない」「居ぬき店舗だから、申請に必要な図面がない」というご相談が多いです。
レストランや居酒屋、喫茶店などの飲食店をオープンするためには店舗の所在地を管轄している保健所に営業許可申請を行う必要があり、東京都が定める施設基準に合った店舗を作り、営業許可を受けてはじめて店舗をオープンさせることができるのです。
このページでは、東京都で飲食店をオープンするための流れや必要な設備・資格ををご紹介します。
飲食店をオープンするには、飲食店営業許可が必要です
飲食店営業許可申請には、営業所の配置図を提出しなければいけないです。もちろんスケルトン状態から店舗改修工事を依頼している場合は内装業者が作成してくれるはずです。
しかし居ぬき物件を借りそこから厨房機器メーカーに依頼してカスタマイズする場合には、配置図を作成してくれないことのほうが多いため、なかなか許可申請できずに困るオーナー様が多いようです。
設計士が作成するような複雑な配置図を用意する必要はないですが、申請時のチェックポイントを押さえた配置図の作成は、初めての人には難しいです。
▼配置図記載例
ポイント①:最低限押さえておくべき設備の基準
1.流し
流しは原則2槽必要になります。食材を洗うところと食器を洗うところを分ける必要があるためですちなみに1槽の大きさは内径で45センチ(幅)×36センチ(奥行)×18センチ(深さ)必要です。
スケルトンで店舗を借りる場合、水回りの設計には十分注意して下さい。あとで基準に合致していないことが分かって追加工事となると、それだけで結構な出費となってしまいます。水回りの工事費は意外とお金がかかるのです。
2.手洗い設備
これは従業者用とお客様用の二つが必要になります。東京都の場合、従業者専用の手洗器は、外径が36センチ(幅)×28センチ(奥行)のサイズ基準があります。また、衛生面を考えて、蛇口はセンサー式か足踏式が推奨されています。
また、消毒装置が固定で付いていなければなりません。
3.調理場と客席の区画
調理場と客席がきちんと区切られていることが必要です。ドアで区切られていればまず問題はないですが、スイングドア(パタパタと開閉するタイプ)でも大丈夫です。
居抜き物件の場合、このドアを邪魔だからという理由で取り外してしまっている場合があります。許可を取るためには必要ですので注意しましょう。
4.温度計
冷蔵庫には温度計がついていなければなりません。通常のコールドテーブルであれば最初からついている場合が多いです。
5.給湯器
原則としてお湯が出る必要があります。「洗浄や消毒のためには水だけではダメでしょ?」ということです。
6.食器戸棚
食器を収納しておく戸棚ですが、「戸」棚ですので、戸が付いていなければなりません。
7.床材が耐水になっていること
調理場内は水が跳ねたりしますので、床材が耐水になっている必要があります。
耐水とは、要するに水をはじく材質のものである、ということです。
8.床・天井・壁が平たんになっていること
調理場は清潔さを保つことが求められますので平たんであることが必要です。
よくおしゃれなカフェやバーで天井にボードを張らずに吹き抜けのまま塗装などをして仕上げる天井があると思います。吹き抜けの天井は天井を高く見せることができますし、開放感がありますので人気ですが、調理場がこの天井になっていると再調査になる可能性があります。
最低限、調理場だけはボードを張り、平たんな状態にして申請をしましょう。
この他にも照度、ダクト、ネズミ・虫の防除からごみ箱に至るまで細かな基準がたくさんあります。
ポイント②:食品衛生責任者の選任が必要です!
食品衛生責任者は食品衛生法に定められた資格であり、各都道府県の保健所が管轄する公的資格でもあります。食品衛生責任者になるためには、栄養士や調理師免許などの特定の資格を取得する方法と、食品衛生責任者養成講習会を受ける方法があります。
栄養士・調理師などの資格を取得する
栄養士や調理師をはじめとした、以下の資格を取得している人は食品衛生責任者の資格を取得できます。
- 調理師
- 製菓衛生士
- 栄養士
- 船舶料理士
- と畜場法に規定する衛生管理責任者
- と畜場法に規定する作業衛生責任者
- 食鳥処理衛生管理者
- 食品衛生管理者または食品衛生監視員の資格要件を満たす者
該当の資格を持っている人は、食品衛生協会などへ申請して食品衛生責任者手帳を発行してもらいましょう。手帳が発行された段階で、食品衛生責任者資格が取得できます。
資格者養成講習会を受講する
栄養士や調理師などの資格を持っていない人は、資格者養成講習会を受講することで、食品衛生責任者の資格を取得できます。
講習会で行われるのは、食品衛生学、食品衛生法、公衆衛生学の計3科目の学習と確認試験です。合格率はほぼ100%なので、きちんと講習を受ければ基本的には食品衛生責任者になることができます。
ポイント③:水質検査成績書が必要なケースがある
水道水・専用水道・簡易専用水道”以外”の水を使用する場合は水質検査成績書が必要になります。
この「水質検査成績書」とは、飲食店で利用する水質が適正なものなのかどうか検査したものになります。東京都内の店舗物件では水道水を利用できるケースのほうが多いのであまり気にする必要はないですが、「貯水槽の水」や「井戸水」を利用する場合には水質検査を受ける必要があります。
少し古いマンションの場合は貯水槽を利用するケースも多いので、事前に確認しておきましょう。
なお、「貯水槽の水」や「井戸水」を利用しなければいけない場合は物件を管理している大家さん、もしくは不動産業者に相談してみましょう。通常、年一回以上検査をし、水質検査成績書を保管しておく義務があるため、自身で水質検査を行わなくても「水質検査成績書」があるはずです!
飲食店営業許可の流れ
飲食店営業許可申請では、(1)管轄保険所との事前相談→(2)飲食店営業許可申請→(3)確認検査(現地審査)→(4)許可証発行
という流れで進みます。場合によっては(1)と(2)を同時に行うケースもあります。
まず、許可申請で提出した配置図をもとに必要な設備が整っているかどうかを現地審査で確認し、問題がなければ許可証が発行されます。
許可証が発行されれば、オープンです!
許可申請に必要な書類
飲食店営業許可申請で必要な書類は下記の通りです。
- 営業許可申請書
- 施設の構造・設備の図面(配置図)
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(管理者手帳等)
- 水質検査成績書(貯水槽の水や井戸水を利用する場合のみ)
なお、工事完成予定日の10日前をめどに提出します。
許可申請の提出先
必要書類が全て揃ったら、店舗を構える管轄保健所の担当窓口まで持参しましょう。
予約の必要性など管轄保険所によって申請方法が異なりますので、事前にHPや電話などでチェックしておきましょう。
申請手数料
東京都内の場合は申請手数料は18,300円となっています。
施設完成の確認検査(現地審査)
検査確認の際は立会いが必要となります。万一、施設基準に適合しない場合は許可になりません。不適合事項に関し改善し、改めて検査日を決めて再検査を受けます。
行政書士に依頼するメリット
飲食店営業許可申請において、許可申請書の作成や配置図作成などはとても手間と時間がかかるものです。
特に工事が完了してから施設基準に不適合だった場合は、適合するよう追加工事をしなければいけないケースもあります。
その分費用もかかるしオープンも遅くなってしまいます。行政書士などの専門家に相談しながら進めるほうがスムーズに申請することができ、結果的にご自身で行うより早くオープンすることができます。
飲食店営業許可のまとめ
今回は飲食店営業許可申請について紹介しました。
飲食店をオープンするためには、施設基準を満たし、食品衛生責任者の選任など様々な条件をクリアする必要があります。また、この営業許可申請とは別に、必要に応じて警察・消防への各種届出も行う場合もあります。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。