これから建設業の許認可の取得を考えている担当者の方に向けて7つのポイントを紹介します。これについて知っておけば、自分の会社にとって必要な許可の種類が分かります。
また、そもそもどうして許認可が必要なのかも理解できると思います。許認可の取得を考えたならば、まずは本稿を読んでもらえると概要を理解できると思います。
はじめて許認可の取得を行う場合は、用意する書類や要件の確認に手間を要し時間がかかってしまうものです。行政書士等の専門家に依頼する場合も、自身で行う場合もまずは全体像を把握する必要があります。
1. 建設業許可取得に向けて知っておきたい9つのポイント
ポイント1 自社にとって本当に許可が必要なのかを考える
まず、建設業許可は何のために取得するのでしょうか?建設業の許認可の取得は、業種ごとに行われます。業種については、国交省(当時は建設省)の昭和49年に公示した考え方により分類されます。建設業許可は、一式工事2種類と専門工事27種類の計29業種に細かく分類されていて、それぞれの業種ごとに許可を取得する必要があります。
苦労して許可を受けたものの、「工事請負に必要なのは別の業種だった」なんてことにならないように、しっかり内容を把握しておきましょう。
また、工事の規模も大小様々です。1件あたり数億円の規模の公共工事もあれば、個人の依頼により100万円程度の簡易な工事を受注することもあるでしょう。また、工事を行う会社の組織にも様々あります。一か所の営業所で営業を行う場合もあれば、複数の営業所を展開する場合もあります。
このような会社に対して、一律に同じ内容の許認可を強制すると弊害が起こります。許可の種類は「一般建設業」と「特定建設業」、「知事許可」と「大臣許可」に分かれますが、基本的には29の業種別に許可をとることとなっています。
また、軽微な工事に関してもいちいち許可の取得を強制することも合理的ではありません。このため、一定以下の受注金額の工事や、一定の内容の工事に関して許可は不要とされています。許可が不要な工事は下記の三種類です。
- 専門工事で500万円未満のもの(消費税込み)
- 建設工事一式で1500万円未満のもの(消費税込み)
- 木造住宅の工事で延べ面積が150㎡未満のもの
上記の3つに関しては許可が不要な軽微な建設工事として定められています。一般的に請負契約が500万円未満(消費税込み)であれば、軽微な建設工事といえるでしょう。
また、建築工事一式として受注したものであれば、全体で1,500万円未満(消費税込み)であれば同様に軽微な建設工事といえます。住宅工事に関して言えば、上記の基準面積以下のものはごく一般的な住宅になりますのでこれも軽微な建設工事ものと言うことができそうです。
上記3つの軽微な建設工事のみを行う場合は、許可を取得することなく、請負契約を結ぶことができます。しかし、必ずしも法令により強制されてはいませんが許可を取得することをお勧めします。
最近の建設業界の流れとして、下請けや孫請けに至るまで許可の取得を求める風潮にあります。建設業の許認可は、一定程度の工事の専門性と組織の体制について評価をする仕組みといえます。
公共工事や大口の工事を直接受注する大規模な企業はもちろん許可を取得していることと思います。元請けが下請けにも許可を求めるのは、下請としての取引相手にも許可取得を求めることでさらに顧客などへのイメージアップを狙うことができるからです。
また、許認可の取得までには時間を要するという点も挙げられます。最初は、許可の必要のない範囲で営業を行っていたとしても、突然にチャンスに恵まれ一定金額以上の比較的大きな契約の機会が訪れたとします。このようなときに、許可を持っていなければ契約の締結そのものができないのです。
許可取得の代行費用やその後の手続き費用を含めても、数万円から数十万円程度で行える手続きです。すべて自身で行えば、数万円の費用で済ませることもできます。
手間はかかりますが、決して高額な費用がかかるものではありません。これを機会にぜひ検討してみてください。
ポイント2 建設業許可取得のメリットを考える
①対外的な信用
許可取得の手続きは、まさに工事へ専門性をもって対応することができるかということと、会社の組織体制に一定程度の信頼性があるかどうかを確認する作業になります。
建設業の工事は非常に多岐にわたり、各分野では専門性が求められます。これに対応できる専門性を有しているかの確認は非常に重要です。
工事を発注したものの、内容に問題があっては発注者も困ります。工事を間違いなく技術的に遂行できることを確認することは大切なことです。
また、建設業については、一般の飲食業や小売業とは異なり、一契約ごとの取引金額が大きなものになります。代金の収受についても多くの場合信用取引を行います。
貸し倒れや、工事途中での倒産が起こっては取引の安全が保たれません。したがって、管理責任者の経営経験や、一定程度の財産的基礎の確認を行うのです。
晴れて許可を得られた会社というのは、この確認を済ませた会社になりますので対外的な信用が高まります。取引相手としての信頼性はもちろんのこと、人材募集についても威力を発揮します。
他の業種においてもそうですが、建設業においても人材が非常に重要になります。各種専門性を持ったよりよい人材を募集する際には、許可取得済みの会社の方が応募者にとっても安心できるでしょう。
②公共工事受注
建設業の許可を取得すると公共工事を受注することができます。このために許可を取得する方も多くいるのではないでしょうか。
公共工事を入札によって受注するためには、まずは入札への参加資格を得なければなりません。地方自治体等の発注する公共工事の競争入札に参加するためには入札に関する審査を受けます。
この参加資格の申し込みに際して、経営事項審査が必須となります。これは許可業者しか受けることができないのです。
③銀行評価
中小企業が経営を続けるにあたって、どうしても金融機関からの資金調達に頼らざるを得ないことがあります。
しかも、建設業という業種の特性上、多額の売掛金が発生します。しかも、完成・引き渡しを待って入金となることが多いので、資金負担も長期にわたります。毎日毎日売上現金がレジに入金される飲食業とは決定的に違うのが資金繰りです。
銀行や信用金庫へ融資の申し込みに行くと、まず初めに行うのが自社の業種の説明です。金融機関の審査においては、業種のはっきりしない会社は厳しい取り扱いをされます。
規模が小さいうちは、コンサルティング会社など法的な許可や届け出が必要のない業種の会社は本当に苦労します。銀行は融資した資金が、確実に借入目的に沿ったものに使用されるかを非常に重視します。この点、しっかりと建設業の許認可を取得していれば、銀行からの評価も上がることでしょう。
ポイント3 許可取得後の注意事項について理解する
許可を取得できた後、そのまま放置するようなことはいけません。許可取得の際の要件は、許可を受けている間に保持している要件でもあります。
したがって、取得当初に備えていた要件を欠くことのないようにしましょう。たとえば、専任技術者として雇い入れた人が移動や退職によって営業所からいなくなってしまったような場合にはすぐに変わりの人を補充しなければなりません。
また、許可取得後の手続きも存在します。会社の名称や、住所、役員等の重要な事項が変更になった場合には各種変更届を提出する必要があります。この変更届には、提出期限が2週間のものや30日のものなどがあります。
また、毎年税務署への決算報告とは別に建設業の決算報告届を許可を受けている行政庁へ提出する必要もあります。
さらに、許可の有効期限が5年ですのでこのタイミングごとに更新の申請を行うことが必要です。この申請を忘れてしまうと、許可を失効してしまいます。このようにいったん許可を取った後も、継続して各種届け出や申請を行う必要が生じますので注意が必要です。
ポイント4 建設業許可を取得する際の期間がどのくらいかかるかを理解する
建設業許可が下りるまでに1か月から3か月程度の期間がかかります。
たとえば東京都の場合、知事許可であれば標準処理期間が1カ月程度とされています。これは、窓口に不備のない資料一式が到達してから審査が完了するまでの期間を示しています。
実際には、まず担当者が窓口に赴き事前の相談を行います。この結果を受けて、会社に戻って書類一式を用意したのち再度相談に行きます。そこで、不備を指摘され修正し再度チェックを受け申請を行うという流れになります。この修正や追加の資料収集が長期にわたることもあります。
大臣許可の場合は、標準処理期間は3か月程度とされています。したがって、知事許可の場合と比較してさらに時間がかかることになります。
この点、行政書士などの専門家に依頼をすれば必要な資料の収集を代行してくれたり、あらかじめ問題となりそうなところを相談してくれたりします。その結果、不慣れな担当者が自分で手続きを行うよりも格段に早く許可が出ると思います。
この点については、許可が必要なスケジュールや、コスト負担を考えて選択すればよいと思います。
ポイント5 建設業許可の取得に掛かる費用を理解する
建設業許可の取得にかかる行政費用は9万円です。ご自身で資料を収集して、必要書類を作成し申請を行えばこの金額で取得することができます。ただし、知事免許の新規の許可の金額になります。大臣免許であれば15万円の費用になります。
この手続きを行政書士等の専門家に依頼した場合には、別途手数料が発生します。手数料の相場は、15万円程度ですから合計でも20万円から15万円程度の費用で済みそうです。
このほかにも、添付書類の用意にお金がかかる場合がありますが、法務局で謄本を取得したり、役所で住民票など、これらの費用は数千円で済むことがほとんどです。
ポイント6 知事許可と大臣許可の違いについて知る
建設業の許可には知事許可と大臣許可の2種類があります。これらは何を意味するのでしょうか。これは営業所を設置する場所と数によって決定します。
複数の都道府県をまたいで営業所を設置した場合に大臣許可となり、一つの都道府県内のみに営業所を設置した場合に知事許可となります。
したがって、営業所を2か所以上、なおかつ2つの都道府県に営業所を設置したときだけが大臣免許になります。営業所を何か所設置しても、それがすべて一つの都道府県内であれば知事免許になるということです。
東京都の知事免許を持つ会社が、神奈川県内の工事現場において工事を行うことは全く問題がないのです。あくまでも営業所の場所が重要なのです。
営業所とは工事を行う場所ではなく契約を締結する場所を指します。営業所には専任技術者の配置が求められています。工事に関する専門性を持ちつつ、請負契約の適正な締結を行うために配置されるものです。
また、工事計画の変更や、見積もりの修正や相談にも応じます。営業所において工事の契約を締結する際や、それを随時履行していく時に常勤として専任技術者がいなければ取引相手に不利益が生じてしまいます。
このように、営業所の存在は非常に重要な問題です。これによって許可の種類が変わるのです。あくまでも契約の締結を行えないだけであって、工事が行えないわけではないのでこの点にご注意ください。
なお、通常でも許可を要しない軽微な工事については、知事許可でも他県でまったく自由に契約締結を行うことができることとなります。
大臣許可が必要になるのか、それとも知事許可で事足りるかの判断については判断に迷うこともあるかもしれません。
請負契約を履行する工事現場と営業所との距離の問題もあるかもしれません。契約を締結する頻度や回数による場合もあります。一か所の営業所で事足りることも多くあります。心配になった場合には、行政書士等の専門家に相談してみるのもよいかも知れません。
ポイント7 「一般建設業」と「特定建設業」の違いについて知る
建設業の許可には、一般建設業許可と特定建設業許可の二種類があります。各工事の業種ごとに一般または特定の許可を取る必要があります。
一定金額以上の請負工事の受注に関しては許可が必要である旨は上記で説明しました。具体的には、500万円以上の専門工事または1500万円以上の建設工事一式と、150㎡以上の木造住宅です。
この区分を超えた工事については、許可を得なければ契約することができません。その許可は、「一般」と「特定」のどちらでも構いません。これらの工事を自分で施工する際には、金額の上限はなく「一般」の許可でも問題ないのです。
どんなに大きな金額の工事でも自分自身で施工する分には一般許可で構わないのです。では「一般」と「特定」の違いは何になるのでしょうか。
それは、元請けとなるかどうかです。下請けとして受注する限りは、一般で足ります。仮に、元請け業者から受注して、それを孫請け業者に発注するような場合においても、発注者から直接受注したわけではありませんので「元請け」には該当しません。
一定規模以上の工事について元請け業者として下請けに出す場合にのみ「特定」が必要となります。一定規模とは具体的に、専門工事の場合は4,500万円以上、建築工事一式の場合は7,000万円以上であることと定められています。
これ以外の工事においては「一般」の許可で事足りてしまうのです。自分の会社が本当に「特定」の許可が必要かどうかは営業計画に従ってしっかりと吟味したほうがよさそうです。案外に特定の許可までは必要のない会社も多いのではないでしょうか。
一般と特定の許可の要件について、特定の方がより厳しいものになっています。財産的な要件も厳しいですし、専任技術者の要件も厳しくなっています。
元請け業者となり各下請けに発注する際には、万が一支払いが滞ったり会社が倒産してしまうようなことがあると、その影響は下請けにまで及び連鎖して悪影響を被ることになります。売掛金が貸し倒れて黒字倒産する例は数多くあります。
「特定」の制度は、このような下請けの保護を趣旨としています。また、受注金額が大きくなれば当然工事の技術的な難易度も高くなることは容易に理解できます。
技術的な問題で工事が途中で止まってしまったり、納期が大幅に遅れるなどした場合には上記と同様の問題が生じます。このようにならないためにも、技術的な要件を厳しいものにすることによって高い技術を持った適正な施工をもその趣旨としています。
まとめ
建設業許可を取得する前に確認しておいたほうが良いポイントを7つ紹介いたしました。
はじめて許認可の取得を行う場合は、用意する書類や要件の確認に手間を要し時間がかかってしまうものです。行政書士等の専門家に依頼する場合も、自身で行う場合もまずは全体像を把握しておきましょう!
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。