建設業の決算報告(事業年度終了報告)とは?手続きしてないと許可更新はできません!

建設業許可を受けると、それまで請け負うことができなかった500万円以上の工事(建築一式の場合1,500万円以上の工事)を受注できるようになります。一方で、建設業許可業者として、それまでは負うことのなかったいくつかの義務が生じることになります。

そのうちまず注意しておく必要があるのは、毎年提出しなければならない建設業の決算報告書(事業年度終了届)です。

本ページでは、建設業の決算報告(事業年度終了報告)について「いつ」「だれが」作成提出するのか。提出しなかったときのデメリットを紹介します。

建設業の決算報告は許可業者が負う義務のひとつ

建設業の決算報告は、建設業許可を取得した事業者が、毎年、1年間の収支状況や工事実績を都道府県に報告する書類です。

提出期限は、事業年度終了後、4ヶ月以内です。

例えば、12月末決算の会社の場合、4月末が提出期限となります。一人親方(個人事業主)の場合は1月~12月の実績を翌4月末までに提出する必要があります。

事業年度が終了すると税務署への申告があることは皆さんがご存じなので、税理士に書類を依頼するなどしてしっかり対応されていると思います。しかし、建設業許可業者さんの場合は、この税務申告が終わった後に建設業を受けた行政庁にも事業年度の報告書として建設業の決算報告書の提出を行うことになります。

この建設業の決算報告書の作成・提出は税理士では対応することができないので、ご自身作成するか行政書士にお願いする必要があります。

建設業の決算報告の提出期限は事業年度終了後4か月以内

先ほど紹介したように、この決算変更届の提出期限は、事業年度終了から4か月となっています。

会社・法人で建設業を営んでいる場合、事業年度が終了してから1か月半~2か月後に、経費などをすべて確定させて税務署への決算申告を行なうことが通常の流れになるかと思います。

そして、建設業の決算報告書は税務署に提出する税務申告書(法人税の確定申告書)を元に作成します。そのため、決算終了後、2か月ほどは税務申告を行う期間でその後約2か月間の間に建設業の決算報告書類を作成し提出しなければいけないことになります。

決算終了後、「4か月もある」と思っていても、建設業の決算報告書を作成するのは実質2か月程度しかないので注意が必要です。

建設業の決算報告が未提出の場合のリスクは?

ちなみにこの決算変更届(決算報告)ですが、「現場が忙しい時期だから」と提出しなかった場合はどうなるのでしょうか。

  • 日々の業務が忙しく、決算変更届の提出を忘れてしまった!
  • 5年に1度の建設業許可の更新は注意していたが、決算変更届は存在すら知らなかった!

決算変更届は本来、毎年の提出が義務付けられています。そのため、未提出で済ませてしまうのはまずいのですが、許可業者さんの中には、業務に追われているうちについ決算変更届の提出を忘れていたという方も意外と多いようです。

更新手続きや業種追加手続きが行えなくなる

決算変更届を届け出なかった場合の直接の罰則規定は、建設業法第50条に懲役刑や罰金刑などが科されています。

しかしそれ以前に、建設業者さんにとっては

  • 建設業許可の更新申請が受け付けてもらえない
  • 業種追加の申請も受け付けてもらえない

など、行政手続きの拒絶がまず直接的なデメリットとして生じることになります。

実際に、新規で建設業許可を取得し5年後更新手続きを始めたら、建設業の決算報告手続きを一度もしておらず、5年分の決算報告書を慌てて提出するというのもよくあります。許可更新までに間に合わばいいですが、許可期限を1日でも過ぎてしまった場合は許可更新はできず、許可が失効してしまいます。そうならないためにも、きちんと毎年建設業の決算報告を提出しておく必要があります。

また、ある日突然に取引先から大型案件の打診があって、短期間でどうしても業種追加の手続きの完了を求められるというケースも、建設業者ならよくあると思います。

そんなとき、決算変更届を何年も提出していなかったとなると、まずはその報告の資料集めから始めなければなりません。契約の期日が迫り、早く業種追加を行わなければならないのに、失念していた別の手続きに余計な手間や日数がかかってしまう。

最悪の場合、決算変更届のための書類準備が間に合わず、予定していた工事を請け負えない事態も考えられます。

取引先への信用悪化や自社の業績証明ができない

また、決算変更届を提出しないことによる間接的なデメリットとしては、自社の業績証明を他社(取引先)に対して行えないいう点が挙げられます。

毎年忘れずに決算変更届を行政庁に提出している建設業者さんなら、取引先がその業務状況を確認するため、行政庁で閲覧請求をすることによって一定の情報を確認することが可能です。

ところが、もし決算変更届を怠っていると、行政庁でこのような業務状況の確認を取ることができません。

決算後の報告を提出していないのですから、行政庁に毎年の情報が何もないのは当たり前ですよね。結果として、管理がしっかりしていない業者という印象を抱かれてしまいます。

  • 建設業者の情報は行政庁で閲覧できること
  • 下請業者に仕事を発注するとき、元請業者が行政庁の情報から信頼できる業者であるか確認するケースがあること

この点については、知らない建設業者も多いかもしれません。

建設工事を間違いなく行っていたという証明ができない

さらに、決算変更届さえ毎年提出していれば、その期間決算報告に記載している工事を間違いなく行っていたという確認資料として使用することができる場合があります。

なんらかの問題に対処するため自社がある業種の業績を行っていたことを証明する場合、もし決算変更届を提出していないとなると、行政庁には情報が何も残っていないため証明のしようがありません。決算変更届を提出していることによる業種・実績の証明ができませんから、他の資料に頼らざるを得ず、手続きが非常に面倒になる可能性があります。

何の業種をどれだけ行ったか、行政庁に毎年提出することは、建設業者さんにとって手間のかかるデメリットだけでなく、実績を証明できるメリットがあることにも留意しておきましょう。

決算変更届に必要な書類一覧

決算変更届で通常必要となる書類は、主に以下のようなものがあります。

法人の場合

  1. 決算変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 貸借対照表
  5. 損益計算書
  6. 完成工事原価報告書
  7. 株主資本等変更計算書
  8. 注記表
  9. 附属明細表(下記の場合に必要)
    • 株式会社で資本金の額が1億円超
    • 直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上
  10. 事業報告書(株式会社のみ)
  11. 納税証明書
    • 知事許可:法人事業税
    • 大臣許可:法人税
  12. 変更があった場合の提出書類
    • 使用人数
    • 健康保険等の加入状況
    • 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
    • 定款の写し

一人親方(個人事業主)の場合

  1. 変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 貸借対照表
  5. 損益計算書
  6. 税納税証明書
    • 知事許可:個人事業事業税
    • 大臣許可:所得税
  7. 変更があった場合の提出書類
    • 使用人数
    • 健康保険等の加入状況
    • 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表

主な書類に記載方法について

各書類は建設業の内容に合わせて、工事契約書、注文書・請書、納税申告書類をもとに作成する必要があります。特に財務諸表については、建設業専用の申告書類として作成する必要があります。

下記は、法人についてのみ記載しております。

工事経歴書

対象期間の工事実績を工事契約書、注文書・請書、請求書などを確認して記載します。

貸借対照表

税務申告書の「貸借対照表」をもとに、建設業法に基づく科目へ振り分けて作成します。

  • 流動資産
  • 固定資産
  • 繰延資産
  • 流動負債
  • 固定負債
  • 株主資本
  • 評価・換算差額等
  • 新株予約権

損益計算書

税務申告書の「損益計算書」をもとに、建設業法に基づく科目へ振り分けて作成します。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 販売費及び一般管理費
  • 営業外収益
  • 営業外費用
  • 特別利益
  • 特別損失

完成工事原価報告書

税務申告時の「損益計算書」「販売費及び一般管理費」「完成工事原価報告書」をもとに作成します。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

株主資本等変動計算書

税務申告時の「株主資本等変動計算書」をもとに作成します。

注記表

納税申告時の「個別株主資本等変動計算書」をもとに作成。貸借対照表や損益計算書などを補足する重要事項を記載する書類です。

事業報告書

特例有限会社を除く株式会社の場合に必要。

事業報告書は、当期の業績、財務状況、今後の見通しなどを記載した報告書です。決算変更届は、公開されることになるため、発注者や第三者に参照されることを前提に事業状況を説明します。

決算変更届の作成や提出でお困りの建設業者様へ

日々、現場や事務作業が忙しく、決算変更届の作成や提出がままならないという建設業者様もいらっしゃることと思います。

手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。