「建設業」とは、元請・下請、法人・個人を問わず、建設工事の完成を請け負う者のことを指します。
そして、建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除いて、必ず建設業の許可を受けなくてはいけません。
建設業は29業種に分類されており、業種ごとに許可を受ける必要があります。許可を受けるためには、様々な要件を満たす必要があります。
この許可を取得することにより、強力な信用力を得ることができるのです。
建設業許可とは?
建設業許可は、「土木と建築の2種類の一式工事」「大工・左官などの27種類の専門工事」など一定の工事を行う建設業者に取得が求められる許可です。
基本的には該当する工事を請け負う全ての建築会社が取得する必要があります。ただし、条件を満たす簡単な工事であれば、許可がなくても工事することができます。
建設業許可を取得すると、建設業許可番号が発行され許可の種類や取得年月日、会社番号などが通知されます。
建設業許可が不要な工事
建設業法では、軽微な工事を行う場合に建設業許可は不要であると定められています。
この「軽微な工事」とは、以下のいずれかに該当するものをさします。
- 専門工事で500万円未満のもの(消費税込み)
- 建設工事一式で1500万円未満のもの(消費税込み)
- 木造住宅の工事で延べ面積が150㎡未満のもの
上記の3つに関しては許可が不要な軽微な建設工事として定められています。一般的に請負契約が500万円未満(消費税込み)であれば、軽微な建設工事といえるでしょう。
また、建築工事一式として受注したものであれば、全体で1,500万円未満(消費税込み)であれば同様に軽微な建設工事といえます。住宅工事に関して言えば、上記の基準面積以下のものはごく一般的な住宅になりますのでこれも軽微な建設工事ものと言うことができそうです。
附帯工事はあくまで主たる建設工事に付随する工事なので、主たる建設工事に関する建設業許可を持っていなければ受注することができません。しかし、上記3つの軽微な建設工事のみを行う場合は、許可を取得することなく、請負契約を結ぶことができます。
建設業許可の有効期限
建設業許可の有効期限は、取得より5年となっています。継続して建設業の許可が必要な場合は、毎回有効期限を迎える30日前までに更新する必要があります。
手続きしないまま1日でも更新期限がすぎてしまうと、許可が取り消されます(許可の失効)。失効しまうと更新ができないため、必要な場合は再度新規で申請を行わなければなりません。
許可を出す行政庁(大臣許可と知事許可)
建設業許可には、大臣許可と知事許可があります。違いは、許可を取得した建設業者の営業所がある場所です。
ここで言う営業所とは、本店や支店だけではなく、常時建設工事の請負契約を行う事務所など実質的に営業を行っている事業所も含まれます。
逆に建設業の営業に関与しない店舗(本店も含む)や、工事現場の事務所・資材置き場などは含まれません。
上記の条件を満たす営業所が1箇所しかない場合や1つの都道府県内のみにある場合、該当する都道府県知事による知事許可です。
営業所が2つの都道府県以上に存在している場合は、国土交通大臣による大臣許可となります。
下請契約の規模(一般建設業と特定建設業)
下請契約の規模により、一般建設業と特定建設業の2種類があります。違いは発注者より元請として受注した工事で1件あたり4,500万円(建築業は7,000万円)以上の下請契約を結ぶかどうかです。
上記の条件に当てはまる下請契約を行う場合は特定建設業、それ以外もしくは下請契約しない場合は一般建設業となります。
あくまで判断のポイントは、元請として受注した工事を下請に出した金額です。自社施工の工事や、下請として受注しさらに下請に出した工事は対象外となります。
条件に当てはまらなければ、一般建設業でも金額を気にせず工事の引き受けが可能です。
建設工事の種類(全29業種)
建設業の許可は、全29種類の業種別に行われます。業種については2種類以上を同時に許可取得が可能で、営業する内容により異なる許可を得る必要があります。
作業と対応する業種の許可を取得していなければ、その工事を請け負えません。
電気設備と屋根など複数の作業工程がある工事を請け負う際、許可を持っている範囲しか対応できない場合もあるため注意しましょう。
建設業における工事の種類は以下の通りです。
工事の分類 | 工事の種類 |
---|---|
一式工事 | 土木一式工事 |
建築一式工事 | |
専門工事 | 大工工事 |
左官工事 | |
とび・土木・コンクリート工事 | |
石工事 | |
屋根工事 | |
電気工事 | |
管工事 | |
タイル・レンガ・ブロック工事 | |
鋼構造物工事 | |
鉄筋工事 | |
舗装工事 | |
しゅんせつ工事 | |
板金工事 | |
ガラス工事 | |
塗装工事 | |
防水工事 | |
内装仕上工事 | |
機械器具設備工事 | |
熱絶縁工事 | |
電気通信工事 | |
造園工事 | |
さく井工事 | |
建具工事 | |
水道施設工事 | |
消防施設工事 | |
清掃施設工事 | |
解体工事 |
建設業許可の6つの要件とは?
建設業許可を受けるためには、以下の6つの要件をクリアしなければなりません。
要件①経営業務の管理責任者がいること
1つ目の要件は、営業所(本店)に常勤する経営業務の管理責任者がいることです。経営業務の管理責任者の要件は常勤している取締役のうち、つぎのいづれかの要件を満たす必要があります。
- 建設業に関して5年以上取締役として経験のある者
- 建設業に関して5年以上取締役に準ずる地位(建設部長等)にあり、経営業務のある者
- 建設業に関して、6年以上取締役に準ずる地位があるものとして、経営業務を補佐する業務に従事した経験がある者
- 建設業に関して2年以上役員等として経験を有し、かつ5年以上役員又は役員に次ぐ職制上の地位にあるもの。さらに5年以上財務管理、労務管理、業務運営管理の従事した者を補佐としておくこと。
- 5年以上役員としての経験を有し、かつ建設業に関して2年以上の経験があるもので更に、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営管理に従事した補佐役をおくこと。
要件②専任技術者が営業所ごとにいること
2つ目の要件は、営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可とで異なります。
<一般建設業許可の専任技術者の要件>
以下のいずれかの要件を満たす者が専任技術者になることができます。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
<特定建設業許可の専任技術者の要件>
以下のいずれかの要件を満たす者が専任技術者になることができます。
- 定められた国家資格を持っている
- 一般建設業許可の専任技術者の要件に該当し、かつ元請としての4,500万円以上の工事について、2年以上指導監督的な実務経験を有する者※注
※注:指定建設工事業(土木工事業、建築工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、電気工事業、造園工事業の7業種)については国家資格のみ
要件③請負契約に関して誠実性があること
3つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人、役員、個人事業主、令3条の使用人などが請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれがないことです。
過去に不正な行為や不誠実な行為がなかったかどうかについてチェックされます。
不正な行為とは・・・請負契約の締結または履行に際して、詐欺、脅迫、横領などの法律に違反する行為
不誠実な行為とは・・・工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為
要件④請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
4つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人または個人事業主が請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していることです。いわゆる財産要件です。
財産要件は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
<一般建設業許可の財産要件>
次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 自己資本の額が500万円以上あること
→貸借対照表の「純資産の部」の「純資産合計」の額 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
→500万円の資金調達能力は、会社に500万円以上の預金残高がある状態でその金融機関から発行された「預金残高証明書」もしくは金融機関から発行された「融資証明書」で証明することになります。
<特定建設業許可の財産要件>
次のすべての要件を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上あること
- 資本金が2,000万円以上あること
- 自己資本が4,000万円以上あること
要件⑤欠格要件に該当しないこと
5つ目の要件は、建設業許可を受けようとする者(法人の役員、事業主本人等)が、以下の欠格要件に該当しないことです。
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けたことなどにより、その許可を取り消されてから5年を経過しない者
- 許可の取り消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
- 請負契約に関して不誠実な行為をしたことなどにより、営業の停止を命じられ、その期間が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
- 建設業法、建築基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、 又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
要件⑥社会保険に加入している
令和2年10月の法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。
すべての建設業を営む者が建設業許可の申請をする際、適切な社会保険に加入しているかを確認されます。
この建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。
法律上加入義務があるこれらの保険に加入していないと、すでに許可を取得している許可業者さまも更新ができなくなってしまいます。
建設業許可の申請の流れ
要件を満たしている前提での、建設業許可申請の流れは以下の通りです。
①申請先を確認する
↓
②許可申請書・添付書類を作成する
↓
③書類一式を提出して費用を支払う
手順の詳細を見ていきましょう!
①申請先を確認する
まずは、建築業許可の申請先を確認しましょう。営業所の所在地により、申請先が異なるためです。
また、申請先により、必要な書類や事前予約・郵送申請の可否などが異なる場合があります。
大臣許可の取得は国土交通省の各地方整備局へ、知事許可の取得は各都道府県庁へそれぞれ申請します。
②許可申請書・添付書類を作成する
申請先を確認したら、必要な許可申請書や添付書類を用意しましょう。様式や記載すべき内容を確認し、作成しましょう。
添付書類として、登記事項証明書や納税証明書といった、公的機関が発行する証明書が必要です。
提出する窓口により異なる場合もあるため、注意が必要です。
③書類一式を提出して費用を支払う
都道府県によっては、建設業許可の予備審査が行われ、その後許可申請書と添付書類一式を提出します。建設業許可の取得には手数料もしくは登録免許税が必要です。
▼建設業許可を新規で取得する場合の費用
許可行政庁 | 費用 |
---|---|
都道府県知事許可 | 手数料 9万円 |
大臣許可 | 登録免許税 15万円 |
許可の費用について、許可行政庁による違いはありますが、一般許可と特定許可で違いはありません。
一般と特定を両方同時に取得する場合は、上記の手数料を2倍した料金を支払います。
行政書士に依頼するメリット
建設業の許可申請で必要な書類については、必要となる書類が多岐にわたり、書類取得のための申請先も様々なのでとても手間が掛かります。
初めて申請する書類に関しては、申請の方法や申請先、申請に必要な添付書類や必要となる手数料をそれぞれ申請書類ごとに調べていく必要があります。
また申請時点での作成期限が求められる書類もあるので、取得のタイミングも重要ですし、慣れない書類の収集は想像以上に時間と手間が掛かります。
専門性と実務経験が豊富な行政書士に依頼すれば、建設業許可の書類作成から取得までの期間が大幅に削減することができるので、結果的に自分で申請するより早く許可を取得することができます。
まとめ
建設業許可を取得するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。基本的な許認可であれば、有資格者がいれば取得できることも多いなか、建設業許可はかなりハードルの高い許可といえます。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。