一人親方だけど、建設業許可って取れるの?
このような疑問を持つ方は少なくありません。なんと、一人親方(個人事業主)でも一定の条件を満たせば、建設業許可を取得することは可能です。
建設業許可は、法人・個人を問わず取得可能な制度です。一人で現場に出ている個人事業主でも、許可の取得が認められているため、「一人親方だから取れない」ということはありません。
個人事業主が建設業許可を必要になるタイミング

建設業許可が必要となるのは、1件あたりの請負金額が500万円(税込)以上の建設工事を請け負うときです。
この金額には材料費なども含まれるため、住宅リフォーム工事や外構工事などで知らないうちに500万円を超えるケースも多く見られます。
そのため、個人事業主でも「自分には関係ない」と思っていると、知らないうちに無許可工事を行ってしまっていた…というリスクも。
個人事業主の建設業許可取得は珍しくない
「建設業許可はハードルが高い」と思われがちですが、実は建設業許可を持っている業者の約14%が個人事業主です。
つまり、すでに多くの個人事業主が建設業許可を取得し、仕事の幅を広げているのです。
許可の有無が仕事の受注に影響することも
最近では、元請業者や施主から「建設業許可を持っているか」の確認があることも増えてきました。
許可がないことで仕事を断られたり、元請との取引が難しくなったりするケースもあるため、今後の売上拡大を考えるなら早めの取得を検討するのがおすすめです。
少しでも建設業許可を検討されている方へ
建設業許可は要件が複雑ですので、行政書士など専門家への相談をおすすめします。今すぐ[無料相談フォーム]からご相談ください。
個人事業主の一般建設業許可要件について
個人事業主が建設業許可を受けるためには、以下の6つの要件をクリアしなければなりません。
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者が営業所ごとにいること
- 請負契約に関して誠実性があること
- 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
- 欠格要件に該当しないこと
- 社会保険に加入している
①経営業務の管理責任者がいること
建設業許可を取得する際に最もつまずきやすいのが、「経営業務の管理責任者(経管)」の要件です。
この要件は、個人事業主本人が下記いずれかを満たす必要があります。
▼経営業務の管理責任者として認められるパターン
- 建設業に関して5年以上取締役・個人事業主・令3条の使用人(建設業許可業者の支店長)として経験のある者(←メインで使うのはこれです)
- 建設業に関して5年以上取締役に準ずる地位(例:建設部長)にあり、経営業務のある者
- 建設業に関して、6年以上取締役に準ずる地位があるものとして、経営業務を補佐する業務に従事した経験がある者
- 建設業に関して2年以上役員等として経験を有し、かつ5年以上役員又は役員に次ぐ職制上の地位にあるもの。さらに5年以上財務管理、労務管理、業務運営管理の従事した者を補佐としておくこと。
- 5年以上役員としての経験を有し、かつ建設業に関して2年以上の経験があるもので更に、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営管理に従事した補佐役をおくこと。
中小企業や個人経営に近い会社の場合は、パターン1での証明が現実的です。
例えば・・・
よく相談をうけるのはこの3つのパターンに分かれます。
- 許可のない業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
- 許可のある業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
それぞれ対処方法を解説します。
①許可のない業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時

建設業許可がない法人の代表または個人事業主(一人親方)として5年以上営んできた場合、建設業を行っていた証明をしなければいけません。その証明方法は建設業に関する請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録といった書類の提出です。
「書類がない!」という相談は、本当によくあります。5年以上しっかり建設業をしてきたにも関わらず、証明書類が手元に残っていない――
ですが、あきらめる必要はありません。
下記のような方法で、証明できる可能性があります。
1.請負契約書や注文書+請書がない場合
当時の取引先に依頼して、契約書や注文書のコピーをもらう方法があります。工事の実績が確かであれば、意外と協力してもらえるケースも多いです。
2.請求書+入金記録がない場合
請求書は、確定申告時に税理士にコピーを渡しているケースは多いと思うので、税理士に確認するのもいいでしょう。
通帳がなくても、入金記録は過去10年分まで取引明細書発行してもらえることが多いので銀行に問い合わせましょう。
入金記録さえ入手することができ、かつ、工事実績が確実にあるのであれば、証明する方法はいくつもあります。
なお、申請する都道府県によっては、請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録がいらないケースもあります。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を1都3県ごとにまとめましたので、ご確認ください。
都道府県 | 個人事業主の経験 | 法人役員の経験 |
東京都 | ①確定申告書(受付印のあるもの) + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:3か月ごとに1件) | ①登記事項証明書 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:3か月ごとに1件) |
神奈川県 | ①確定申告書(受付印のあるもの) + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) or 確定申告書(業種欄に建設業とわかるものに限る) (必要年数分) | ①登記事項証明書 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) or 確定申告書(業種欄に建設業とわかるものに限る) (必要年数分) |
埼玉県 | ①確定申告書(受付印のあるもの) or 市町村発行の課税証明書 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:3か月ごとに1件) | ①登記事項証明書 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:3か月ごとに1件) |
千葉県 | ①確定申告書(受付印のあるもの) or 市町村発行の課税証明書 ※確定申告書が紛失、かつ、 課税証明書が発行期間を過過ぎてしまった場合、 ②を1年ごとに2件 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) | ①登記事項証明書 + ②工事請負契約書、 注文書+請書、 請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) |
<個人事業主の経験について>
個人事業主の確定申告書は、原則紛失してしまった場合は事業主としての経験を証明できない場合が多いですが、埼玉県と千葉県のみ課税証明書でもOKとされています。
<工事実績証明について>
建設業を営んでいた証明について、東京都・埼玉県は3か月ごとに1件の実績確認書類が必要ですので、5年間証明する場合は計20件以上の実績資料が必要になります。
ですが、千葉県・神奈川県は1年ごとに1件で大丈夫なため、5年間証明する場合はわずか5件~6件程度の実績資料でクリアできるのです。
しかも、神奈川県は確定申告書の業種や事業種目に「建設業や建設工事」と記載があれば、工事請負契約書や請求書などは一切不要になるケースもあり、かなりスムーズに許可が取得できるでしょう。

他社での役員経験で、協力を得ることができないケースは相当ハードルが高くなりますが、当時の取引先と関係性が続いているのであれば、そこからクリアの糸口を見つけていくことも方法です。
諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。お気軽にお問合せください。
②許可のある業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
許可がある業者で経営経験がある場合、基本的には許可通知書を提出することで経営経験を証明することができます。しかし、許可を持っている他社で役員として5年以上の経験がある場合でも、その証明に協力を得ることができないケースはよくあります。
その場合、次の方法で証明を進めることができます
- 会社の許可を取得した都道府県を確認
許可を取得していた都道府県をまず確認することが重要です。 - 東京都や神奈川県の場合
行政に対して「会社名」「営業所の住所」「当時の代表取締役」を伝えることで、その会社がいつからいつまで許可を取得していたのかの情報を提供してもらえる場合があります。 - 大阪の場合
大阪では、行政文書の開示請求をすることで、許可状況が記載された「黒台帳」という文書を手に入れることが可能です。
これらの情報から証明することができるので、諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
▼ 許可が失効している場合の注意点
もし許可が失効している場合には、廃業届が出ていないと、最後の許可通知書(5年間)を証明書として使えないことが多いです。なぜなら、許可が失効しているため、その期間適切に許可が維持されていたかが確認できないからです。
したがって、許可を取得して一度も更新していない、かつ、許可が失効してしまっている場合は、建設業許可通知書では建設業を営んでいた証明をすることができないので注意が必要です。
②専任技術者が営業所ごとにいること
2つ目の要件は、営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。経営業務の管理責任者に次いで専任技術者もハードルが高いです。この専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
<一般建設業許可の専任技術者の要件>
以下のいずれかの要件を満たす者が専任技術者になることができます。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
ちなみに、専任技術者は従業員で構いません。
実務経験を証明する方法
実務経験の証明方法は、経験を積んだ会社の許可の有無によって変わります。
①建設業許可のある業者で実務経験を積んだ場合
許可がある業者で実務経験がある場合、基本的には許可通知書を提出することで証明することができます。しかし、すでに退社している場合は協力を得ることができないケースはよくあります。
その場合、次の方法で証明を進めることができます
- 会社の許可を取得した都道府県を確認
許可を取得していた都道府県をまず確認することが重要です。 - 東京都や神奈川県の場合
行政に対して「会社名」「営業所の住所」「当時の代表取締役」を伝えることで、その会社がいつからいつまで許可を取得していたのかの情報を提供してもらえる場合があります。 - 大阪の場合
大阪では、行政文書の開示請求をすることで、許可状況が記載された「黒台帳」という文書を手に入れることが可能です。
これらの情報から証明することができるので、諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
②建設業許可のない業者で実務経験を積んだ場合
建設業許可を取得していない会社での経験の場合は、ハードルがかなり高くなります。
該当の工事業種に関する請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録といった証明書類が必要になります。
前職の経験を使用する場合は、そこの協力が不可欠なため、証明ハードルは非常に高いです。当時の取引先と関係性が続いているのであれば、そこからクリアの糸口を見つけていくことも方法です。
お困りの際はご相談ください
建設業許可の要件は複雑で、特に実務経験の証明に関しては判断が難しいこともあります。
「自分が要件を満たしているかわからない」「証明書類が揃えられるか不安」など、お困りの方はお気軽にご相談ください。
③請負契約に関して誠実性があること
3つ目の要件は、事業主本人に「建設工事について契約上のトラブルを起こす可能性がないこと」が求められます。
過去に以下のような行為があると、許可が下りない可能性があります
● 不正な行為
請負契約の締結・履行に関して、法令に違反する行為をした場合
例えば・・・
- 詐欺行為で契約を結んだ
- 脅迫して契約を履行させた
- 工事代金を横領した
● 不誠実な行為
契約内容に反して、信義に反する工事対応を行った場合
例えば・・・
- 約束した工期を故意に大幅に遅延
- 契約内容と異なる資材や施工方法を用いた
「自分の過去の経歴に問題がないか不安…」という方は、事前に確認しておくと安心です。
少しでもご心配な点があれば、専門家に相談されることをおすすめします。
④請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
4つ目の要件は、、工事を最後まできちんと完了できるだけの資金力があるかを審査されます。これを「財産要件」と呼びます。
● 一般建設業許可の財産要件
次のいずれかの要件を満たす必要があります。
⑤欠格要件に該当しないこと
5つ目の要件は、個人事業主本人に「一定のルール違反に該当していないこと」が求められます。これを「欠格要件(けっかくようけん)」といいます。
以下のいずれかに該当すると、許可を受けることができません。
実際に、この欠格要件のご相談はかなり多いです。
例えば・・・
これはすべて本当に相談された内容です。欠格要件に該当してもばれないと思ったけど不許可になったという相談もありました。
「昔のことだから大丈夫だろう」と自己判断してしまうのは危険です。欠格要件に該当するケース・該当しないケースありますので、過去の経歴に不安がある場合は、必ず事前に専門家に相談して確認しましょう。
⑥社会保険に加入している
令和2年10月の法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。
すべての建設業を営む者が建設業許可の申請をする際、適切な社会保険に加入しているかを確認されます。
建設業において求められる社会保険は、以下の3つです。
社会保険に未加入の場合は、
- 新規で建設業許可を取得できない
- すでに許可を持っている場合でも更新ができない
という事態に陥ります。「まだ加入していない」「以前のまま放置している」という方は、まずは保険の加入状況を確認し、早めの対応を行うことが重要です。
※5人以上の従業員で健康保険・厚生年金加入必須
※1人以上の従業員で雇用保険加入必須
個人事業主で建設業許可は自社で取得できる?
建設業許可の申請先は、営業所の所在地を管轄する都道府県になりますが、実際の運用や審査基準は都道府県によって異なるのが実情です。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県における建設業許可の取り方については、別ページで詳しく解説しておりますので、そちらもあわせてご確認ください。
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手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。