電気工事と電気通信工事とは建設業29業種に分類され、電気工事では、電気通信工事ができるところとできない部分に細かく分かれています。混同してしまうと思わぬトラブルを招くかもしれません。
また違いのひとつに、それぞれに必要な資格が挙げられます。しかし、工事の範囲を見ていくと、電気通信工事に関わる部分でも電気工事で可能な範囲もみられます。
そこで、電気工事と電気通信工事の違いについて解説します。また、必要な資格やそれぞれにできることについても説明します。
電気通信工事とは
有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事については、電気通信工事業として区分されます。いわゆる「弱電工事」と呼ばれます。
この区分に該当する工事の例としては次のものがあります。
例:有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事
既に設置された電気通信設備の改修、修繕又は補修は電気通信工事に該当します。保守に関する業務は、電気通信工事に該当しません。
電気通信工事の作業内容で馴染み深いものをご紹介します。
①LAN工事
家庭や社内でネットワークが使えるように外部からインターネット回線を引き込み、LANケーブルの設置やパソコンなど機器への接続を行う工事です。この工事が終われば、インターネットの使用が可能です。
ただし、LAN工事は、ただ設置すればいいというわけではありません。HUBは設置したら終わりですが、LANケーブルは機器間の空間にどう配線するかを設計する必要があります。実はケーブルの配線は意外と難易度が高いものです。
②防犯カメラ設置工事
カメラ設置位置の選定・取り付け、カメラ、モニター等の機器からコントローラー(制御装置)までの屋外・屋内配線、通信線の接続などが主な作業内容です。
防犯カメラはその特性上、導入する時にこそ知識や経験が求められます。
③電話工事
オフィスに欠かせない通信手段である電話のための工事には2つの工程があります。
- 電話線を屋外から屋内へ引き込む工事
- 電話線を電話機まで配線する工事
- 新設(新しく電話機を設置)
- 移設・増設(電話機の場所の移動や増設に対応)
- 配線整理
引き込み工事では高所作業車を使い、電柱から建物内へと電話線を引き込みます。
屋内の工事は主に3つの種類に分けられて、新しいオフィスでレイアウトに合わせて電話の設置をする以外に、すでに運用中のオフィスの電話の移動や増設が考えられます。また移動や増設を繰り返したことでわかりにくくなった配線を整理することも仕事です。
一般的にオフィスでは複数の電話を運用できるような配線が必要な上、近年は電話機能を持った複合機を使用している例も多く、電話工事単体ではなくインターネット回線などいくつかの工事と合わせて行った方が作業効率が良いこともあります。
④光ケーブル敷設工事
光ファイバーケーブルを使った光回線による通信は、一般的な従来の回線と比べ通信が安定しており速度も速いです。
光回線のインターネットを使うには、外部から光ファイバーケーブルを引き込む工事が必要です。
電気通信工事に必要な資格
電気通信工事に必要な資格には「電気通信主任技術者」「電気通信工事施工管理技士」があります。
それぞれ国家資格であり、建設業の専任技術者になることができる資格です。
電気通信工事と電気工事の違い
電気通信工事とよく混同されるものとして、電気工事があります。電気通信工事と電気工事では必要となる資格が違い、扱える工事に差があります。電気工事に含まれる工事の特徴や具体例をご紹介します。
電気工事の基本的な仕事内容3種
電気工事では、変電所や鉄塔、電柱などを経た電気をビルや住宅などの施設へ通し、使えるようにします。建設や建物に関わる工事です。いわゆる「強電工事」と呼ばれます。
【電気工事の例】
- 発電設備
- 変電設備
- 送配電設備
身近な例としては、照明器具やコンセントの移設や増設があります。また、「鉄道電気工事」という鉄道に関わる工事もあります。
電気工事士の資格には種類があるため一概には言えませんが、電気工事では電気通信工事よりも大きな電力を扱えるのが特徴です。
電気工事と混同されやすい電気通信工事
電気通信工事の範囲には、電気工事と混同されやすいものもあります。
- インターフォンの設置
- アンテナの設置
- 防犯カメラの設置
これらは情報の取り扱いがメインとなるため、電気通信工事です。
電気工事に必要な資格と取得方法
電気工事を仕事として行うには資格が必要です。
電気工事を行うための資格には「電気工事士」「電気主任技術者」「電気工事施工管理技士」などが挙げられます。
どれも国家資格で、受験にはそれぞれに要件があります。
「電気工事士」は電気工事士法によって定められている資格で、第1種電気工事士と第2種電気工事士の2つに分かれています。難易度が高いのは第1種電気工事士のほうで、筆記試験と技能試験のいずれも合格しなければなりません。
また、受験に合格できても「電気工事士」の免状を交付されるには、合格後3年〜5年の実務経験が必要です。
第2種電気工事士のほうは難易度が低く、高校や大学などで電気工学を終了しているなど、いくつか要件を満たしていれば筆記試験が免除になります。
「電気主任技術者」には1種と2種、そして3種があります。
「電気主任技術者」も1種が最も難易度が高く、受験に合格した後に一定の実務経験を経て、「電気主任技術者」としての免状が交付されます。
まとめ
建設業29業種の電気工事と電気通信工事の違いについて紹介しました。電気工事も電気通信工事も同じ電気工事と勘違いされている方が多いですが、かなり細かく違いが定められています。
自社で施工している工事がどの業種に該当するかをきちんと把握したうえで、建設業許可を取得する必要がございます。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。