建設業許可とは、一定の規模を上回る工事を行うために必要な許可のことです。
建設業許可を取得するには、経営業務管理責任者や専任技術者を配置や、自己資本が500万円以上あるなどの様々な要件を満たす必要があります。
要件をクリアして建設業許可を取得すると、1件あたりの請負金額が500万円以上(消費税込み)の工事を行うことができるようになります。
また、建築一式工事に該当する場合は請負金額が1,500万円以上の工事を行うことができるようになります。
さらに、建設業許可を取得している場合は、公共工事の入札に参加することもできるため、仕事の幅が広がる可能性があります。
なお、建設業許可を有していない事業者が請負金額500万円以上の工事を行うと、建設業法違反となり、最大で3年以下の懲役、あるいは300万円以下の罰金が科されます。
また、その後は5年間にわたって建設業許可が取得できなくなるペナルティもあります。
まずは、建設業許可が不要な工事に確認しましょう。
軽微な工事は建設業許可が不要
建設業法では、軽微な工事を行う場合に建設業許可は不要であると定められています。
この「軽微な工事」とは、以下のいずれかに該当するものをさします。
- 専門工事で500万円未満のもの(消費税込み)
- 建設工事一式で1500万円未満のもの(消費税込み)
- 木造住宅の工事で延べ面積が150㎡未満のもの
上記の3つに関しては許可が不要な軽微な建設工事として定められています。一般的に請負契約が500万円未満(消費税込み)であれば、軽微な建設工事といえるでしょう。
また、建築工事一式として受注したものであれば、全体で1,500万円未満(消費税込み)であれば同様に軽微な建設工事といえます。住宅工事に関して言えば、上記の基準面積以下のものはごく一般的な住宅になりますのでこれも軽微な建設工事ものと言うことができそうです。
上記3つの軽微な建設工事のみを行う場合は、許可を取得することなく、請負契約を結ぶことができます。しかし、必ずしも法令により強制されてはいませんが許可を取得することをお勧めします。
最近の建設業界の流れとして、下請けや孫請けに至るまで許可の取得を求める風潮にあります。建設業の許認可は、一定程度の工事の専門性と組織の体制について評価をする仕組みといえます。
500万円超えの請求書の分割は正当な理由なしにはNG
先ほどご紹介したように、建設業許可を有しない事業者は、請負金額が500万円未満の工事しかできないこととされています。
もしこの決まりに違反して500万円以上の工事を行った場合、法律違反となり罰則を受けてしまいます。
では、大規模な工事を請け負うために、請求書1枚あたりの金額が500万円未満となるように分割することはできるのでしょうか。
この点について、工事の請負金額を判断する基準は請求書ではなく、工事としての実態となります。
したがって、1つの工事を分割して請求したとしても、500万円未満の工事にはならないので注意しましょう。
1つの工事とみられるケース①
金額の大きな工事の場合、工期が長くなることがあります。
そこで、その工期を工事の内容に関係なく、工期だけ分けて別の契約書や請求書を作成することがあります。
たとえば、全体で800万円になる工事を、前半部分400万円、後半部分400万円に分割します。
そして、それぞれの工事を第1期工事、第2期工事として契約書や請求書を作成して、500万円未満になるようにする方法です。
しかし、工事の内容に関係なく工期だけを分割した場合、それらを合わせて1つの工事と判定されます。
そのため、工期を機械的に分割しただけで、500万円未満になるように分割することはできません。
1つの工事とみられるケース②
外壁の塗装工事を行う際に、足場を組むことや防水工事を合わせて行うことがあります。
塗装工事を行うのに付随して足場工事や防水工事を行いますが、通常は塗装工事の契約書1枚だけ作成します。
この時、塗装工事400万円、足場工事200万円、防水工事200万円の内訳とすると、合わせて800万円の工事となります。
そのため、建設業許可がなければこの工事を請け負うことはできないこととなりますえ。
そこで、塗装工事、とび工事、防水工事の3種類の工事に分割し、500万円未満の工事にできるのではないかと考えます。
しかし、このようにメインの工事を一緒に行う工事は附帯工事と呼ばれ、あわせて1つの工事という取扱いになります。
この工事を3つの分割することはできず、1つの塗装工事となります。
1つの工事とみられるケース③
建設工事の中には、材料費が大きな金額になるものもあります。
材料費を含めて工事代金を計算すると500万円以上になるものの、材料費を含めなければ500万円未満になる場合があります。
たとえば材料費300万円、工賃350万円の合計650万円の場合、建設業許可が必要な工事となります。
そこで、工事を発注したお客が材料を手配し、購入しておくとどうなるでしょうか。
材料を購入したのはお客であり、工事業者は工賃部分だけをお客に請求すればいいことになります。
その結果、工賃部分の350万円だけを請求するため、建設業許可が必要ないようにも思われます。
しかしこのような場合、請負金額はお客が準備した材料費を含めた金額になることが定められています。
そのため、このケースでは工賃だけで請求することはできません。
500万円を超える請求書を分割できる正当な理由の例
500万円を超える工事を、500万円未満になるように分割することは基本的にできません。
請負金額は工事の実態に合わせて判定することとされており、別の工事と言えなければ請求書を分割することはできないこととされています。
工事を分割、あるいは付帯工事を別の工事とみなす、または材料費を除くこともできないと定められています。
それでは、請け負った工事の代金が500万円以上になりそうな場合、どのように対処したらいいのでしょうか。
仕事を断る
建設業許可なしに500万円以上の工事を行うと、建設業法違反に問われます。
建設業法違反となった場合、懲役や罰金が科されることとなり、大きな代償を支払うこととなります。
安易に仕事を請け負うのではなく、仕事を断る勇気も必要です。
建設業許可を持つ業者を紹介する
取引のある建設業者の中には、建設業許可を有する業者がいることでしょう。
建設業許可がない状態で、無理に仕事を請け負うのではなく、建設業許可を有する業者を紹介し、依頼主の要望に応えましょう。
建築一式工事になるか検討する
専門工事とは違い、建築一式工事の場合は建設業許可がなくても1,500万円まで請け負うことができます。
新築工事の場合、この金額に収まることはないかもしれません。しかし、リフォーム工事などであれば1,500万円未満の工事が行われることはあります。そこで、建築一式工事として、1,500万円未満の工事を請け負うこととします。
リフォーム工事を行う場合、内装仕上工事や電気通信工事、ガラス工事など様々な種類の工事が行われます。
これらを総合的に企画・指導調整し、建築する工事が建築一式工事となります。
ただ、リフォーム工事がすべて建築一式工事となるわけではありません。
建築一式工事ではないとされた場合、個別の専門工事ごとにその金額を判定することとなります。
そのため、個別の工事が500万円以上である場合には、無許可で工事を行ったことと判定されてしまいます。
建築一式工事に該当するかどうかの判断は、最終的に監督官庁が行うこととなります。
不安な場合は、工事を行う前に確認しておくこともできます。
ます。建設業の許認可は、一定程度の工事の専門性と組織の体制について評価をする仕組みといえます。
まとめ
建設業許可を保有しなくても、建設業を営むことができます。
しかし、請け負うことのできる工事の金額には上限があるため、どのような工事でもできるわけではありません。
上限を超える工事を行ってしまうと、罰則を受けることとなるため、無許可とならないよう注意しましょう。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。