建設業者(一人親方)も対象?フリーランス新法が始まってます!

2023年4月にフリーランス保護新法が成立しました。正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。一人親方をはじめ、フリーランスのトラブルや労働環境を守る法律です。

今回は、一人親方を守る、フリーランス保護新法について解説します。さらに、法律が成立した背景や下請法との違いについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

一人親方を守るフリーランス新法とは

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」のことをいいます。

2024年11月から施行される新制度で、働き方が多様化するなか、フリーランスが受注した業務に安定して働ける就業環境を整備することを目的とした制度です。

法律が成立した背景

近年、働き方の多様化が進んできています。テレワークやデジタル社会の進展にともない、フリーランスという働き方が広がりつつあります。

一人親方などのフリーランスを含めた多様な働き方が進むなかで、それぞれのニーズに柔軟に対応できる環境を整備することが求められているのです。一方で、政府の実態調査やフリーランス・トラブル110において、フリーランスが取引先とのさまざまな問題やトラブルが報告されています。

2021年の内閣府の実態調査において、フリーランスの約4割が報酬不払いや支払い遅延、発注する際の取引条件や業務内容が明示されないなどが問題となっています。また、約4割の方が、納得できない依頼者の行為に対して、受注そのものを自ら断ったという結果も出ています。こうした問題は、ひとりの個人として業務委託を受けるフリーランスと、依頼者側との間には、交渉力や情報収集力の格差が生じやすいことにあります。

事業規模が小さいフリーランスは、特定の発注事業者に依存しやすくなったり、業務完了までは報酬が支払われなかったりと、取引する上で立場上弱くなりやすい環境にあります。こうした問題から、取引の適正化を実現するため、就業環境の整備が急がれています。

下請法との違い

下請法は、資本力の小さな企業やフリーランスに発注した商品やサービスに対して、不当な代金の減額や不当な返品、支払い遅延を禁止するための法律です。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といい、独占禁止法を補完する法律になり、公正・自由な競争の実現を目指すものです。

下請法が適用される条件としては、発注側と下請け業者との間で資本金の基準が定められており、発注側の資本金が1,000万円超えの事業者が対象となります。発注事業者側の資本金が1,000万円を超えていない場合は、下請法が適用外となってしまい、トラブルが起きてもフリーランスは守られなくなってしまいます。

一方で、フリーランス保護新法は資本金の大小問わず、すべての発注業者が規制対象となります。今後、フリーランスとの業務委託契約を結ぶ際は、発注事業者もフリーランス保護新法で定められたルールを守らなければいけなくなり、フリーランスは守られる立場となるのです。

一人親方も対象のフリーランス保護新法の適用範囲

ここでは、フリーランス保護新法が適用となる範囲について解説します。

フリーランス新法は、あらゆる業種が適用対象とされているので、建設業界にも適用されます。

保護対象:特定受託事業者

保護対象となるのは「特定受託事業者」です。具体的には、従業員を置かない個人事業主役員や従業員を置かない法人代表者(いわゆる「一人親方」)の2つになります。

フリーランスと呼ばれる個人以外にも、代表者1人の法人も対象に含まれることが特徴です。フリーランス保護新法におけるフリーランスの定義は、以下のすべてに該当する労働者となります。

  • 実店舗がない
  • 個人経営者や一人社長(一人親方も含まれます)
  • 従業員を雇用していない
  • 経験やスキルなどを活用して収入を得ている

規制対象:特定業務委託事業者

規制対象としては、以下の要件を満たす「特定業務委託事業者」になります。

  • 従業員を雇っている個人事業主
  • 1人以上の従業員を雇っている法人または、2人以上の役員がいる法人
  • 特定受託事業者(フリーランス)に業務を委託する発注事業者
  • 業務を委託の内容として「製造や加工の委託」「プログラムやコンテンツなどの作成の委託」「サービスを提供する委託」のいずれか

なお、従業員とは「週の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」を対象とし、短時間や短期間などの一時的に雇用される人はこれには含まれません。

基本的には、特定受託事業者(フリーランス)に仕事を発注する側に、従業員を雇用している企業が対象です。消費者や従業員を雇用しない企業や個人事業主は対象外です。

フリーランス保護新法では、以下のような不当な受領の拒否、報酬の減額、成果物の返品などが禁止となります。

  • 特定受託事業者(フリーランス)側の責めに帰すべき理由のない成果物の受領拒否
  • 特定受託事業者(フリーランス)側の責めに帰すべき理由のない報酬の減額
  • 特定受託事業者(フリーランス)側の責めに帰すべき理由のない成果物の返品
  • 相場に比べて著しい低い報酬を設定する
  • 正当な理由のない指定商品の購入または役務の利用の強要
  • 委託事業者のために、金銭や役務そのほかの経済上の利益の提供を強要する
  • 特定受託事業者(フリーランス)側の責めに帰すべき理由のない給付内容の変更や、やり直しの強要

上記いずれの場合も、依頼主の一方的または、不当な扱いによるフリーランスの不利益につながる行為が禁止されます。

ハラスメント防止措置

一人親方のようなフリーランスは、企業に雇用されるわけではないため、労働基準法の適用がありません。そのため、セクハラやパワハラ、マタハラなどに関して、就業環境が害されることがないように、ハラスメント防止措置が適用となります。

フリーランスとの長い期間にわたる業務委託がある場合は、フリーランスが育児や介護を両立できるよう、出産や育児、介護などに対しても配慮しなければいけません。フリーランス側の対応にもよる部分もありますが、納期遵守や日頃の対応が問題ない状況での、納期の変更やスケジュールの再調整にも対応する必要があります。

上記のように、フリーランス側からの相談に、適切に対応するために必要な体制や環境を整備することが義務化されます。また、相談に対して、不当な扱いや契約解除は行ってはいけません。

これまで説明した、上記のフリーランス保護新法の内容が守れなかった場合には、罰則の処置があります。公正取引委員会、中小企業庁官庁または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令などが行われ、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります

また、50万円以下の罰金が適用されるのは法人両罰規定となります。なお、発注事業者が違反した場合は、違反者となる担当者だけでなく、発注側の依頼主も罰則の対象となるため注意が必要です。

建設業者が注意すべきは「偽造1人親方」

偽造1人親方は、本来であれば元請建設業者や上位下請建設業者が雇用をしなければならない人を外注(業務委託等)している場合を指します。

建設業は仕事がコンスタントに入ってこないという事情から、一人親方を雇用から外注にすることで、必要なときにだけ仕事をしてもらい、その分の報酬を支払えば良くなるので、固定費がかかることもありませんし、社会保険料等も一人人親方自身が支払うため、大幅な経費削減になります。

ただ実態は多くの場合、雇用と同じように、指揮命令することを前提としています。そのため、労働者性が高くなることには注意です。たとえば労働基準監督署などから、労働者性が認められてしまえば、フリーランスではなく、従業員として考えなければなりません。

フリーランス新法で一人親方が保護されるようになりましたが、対象の一人親方がフリーランスなのか、契約上は外注でも本来は雇用しなければならない従業員なのか、会社の実態からよく考える必要があります。

フリーランス新法のまとめ

フリーランス新法は、2023年4月28日に可決された新しい法律です。発注事業者からフリーランスが不当な扱いを受けないように、発注事業者へのさまざまな遵守事項が設けられています。

働き方の多様化から、今後もフリーランス人口は増加していくでしょう。フリーランス新法の制定によって、自分にあった働き方を選択できる社会の実現が期待されます。

番外編:一人親方(個人事業主)が建設業許可を取る方法!裏ワザも!

一人親方(個人事業主)では建設業許可はとれないからどうすればよいかという相談を受けることがあります。たとえ一人親方であっても、一定の要件を満たすことで建設業許可を取得することは可能です。

建設業許可は、条件を満たせれば法人・個人を問わずに取得できるものであるため、一人親方であることがネックとなることはありません。1件あたりの請負金額が500万円を超える建設工事を請け負うためには、一人親方であっても建設業許可が必要になります。500万円という金額には材料費なども含むため、一人親方でも請負金額が500万円を超えてしまうケースは決して珍しくはありません。

許可の有無が仕事の受注に直結してしまうこともあるため、ある程度一人親方として経験を積んだら建設業許可の取得を検討していきましょう。

なお、建設業許可を取得するためには、さまざまな要件を満たす必要があり許認可のなかでもかなりハードルの高い許可といえます。

どうしようもできずに「裏ワザ」はないのか?という質問をよくされます。なんと、建設業許可には「裏ワザ」があります!

手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。