酒類販売業免許とは、酒類を継続的に販売することが認められる免許です。酒類を販売しようとする場合は、酒税法の規定に基づき、販売場ごとに酒類販売業免許を受ける必要があります。
ここでは飲食店でお酒を提供するのではなく、店舗で酒を販売する場合に必要なお酒の免許(酒類販売業免許)についてご紹介します。
一般酒類小売業免許とは?
酒類販売業免許に区分される「小売業」とは、消費者や料飲店営業者又は菓子等製造業者に対し、酒類を継続的に販売することを言います。
ですので、販売店に来店されるお客様や飲食店であっても同業者向けに販売するのは小売業になります。
一般酒類小売業免許は、販売場において原則すべての品目の酒類を販売することができます。
一般的にコンビニやスーパー等の店頭販売をする場合に取得されることが多いですが、必ずしも店舗で酒類を陳列して販売することは必要はありません。例えば飲食店向けの業務用卸売をしている会社が取得する免許は一般酒類小売業免許で、事務所で注文を受けて、倉庫から飲食店へ配達する方法により販売されます。
2都道府県以上の広範な地域への販売になると一般酒類小売業免許でなく「通信販売酒類小売業免許」が必要となりますので、注意しましょう。
一般酒類小売業免許を取得するための要件・条件
一般酒類小売業免許を取得するためには大きく分けて4つの要件・条件をクリアする必要があります。
- 人的要件
- 場所的要件
- 経営基礎的要件
- 需要調整要件
それぞれ詳しく見ていきましょう!
人的要件
人的要件ときくと、なにやら難しそうだなと思われるかもしれませんが、全然難しいことはありません。一般酒類小売業免許の申請先が税務署なため、いままで酒税法違反がないか、税金の滞納がないか等が問われます。
▼具体的には以下のとおりです
- 酒税法の免許、アルコール事業法の許可を取り消されたことがない
- 法人の免許取消し等前1年内に業務執行役員であった者で、取消から3年を経過している
- 国税・地方税に関する法令により罰金刑や通告処分を受けてから3年を経過している
- 未成年者飲酒禁止法や風俗営業等適正化法、刑法等により、罰金刑に処せられてから3年を経過している
- 禁錮以上の刑の執行が終わった日や執行がなくなった日等から3年を経過している
- 免許の申請前2年内に、国税又は地方税の滞納処分を受けていない
なお、この人的要件は代表だけでなく役員も見られるので、新しい方を役員に迎え入れる場合は人的要件に違反していないか注意しましょう。
場所的要件
酒類販売を適正な場所で行えるかを判断する基準です。まず、申請者に酒類販売業を営む販売場(店舗や事務所)の使用権限があることが条件となります。賃貸借物件の場合は、賃貸借契約書の使用目的や、法人で借りているのか個人で借りているのか名義に注意しましょう。
さらに、場所的要件には、以下の事項に該当する場合、場所的要件を満たさないとされてしまいます。
➀申請販売場が、製造場、販売場、居酒屋、料理店等と同一の場所である場合
➁申請販売場における申請者の営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていない場合
例えば、狭あいな店舗(料飲店等)の一部に陳列棚を設置し、申請販売場として、他の事業(飲食業)と同一のレジにより代金決済をする場合等には、酒類販売業免許の取得は難しいでしょう。
しかし、必ずしも料飲店内での酒類販売業免許の取得が不可能ということではなく、要件を満たすことができれば、例外的に取得できる場合もあります。
酒類販売業を行う販売場について判断に困っている人は、専門の行政書士に相談するのもよいでしょう。
経営基礎的要件
「経営基礎要件」は、資金、経営状況等について、免許を付与するにふさわしいかを判断する基準です。
酒税法では「①酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合②その他その経営の基礎が貧弱であると認められる場合」は免許を取得することはできないと定めています。
「経営の基礎が貧弱であると認められる場合」とは、申請者等について、事業経営のために必要な資金の欠乏、経済的信用の薄弱、製品又は販売設備の不十分、経営能力の貧困等、経営の物的、人的、資金的要素に相当な欠陥が認められ、酒類製造者の販売代金の回収に困難を来すおそれがある場合をいうとされています。
法令等解釈通達において次のとおりに定められ、1つでも該当する場合には、「経営の基礎が貧弱であると認められる場合」としてみなされてしまいます。
- 破産者で復権を得ていない場合
- 現に国税又は地方税を滞納している場合
- 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
- 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が、資本金等の額を上回っている場合(法人申請のとき)
- 最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合(法人申請のとき)
- 酒税に関係のある法令の違反による通告処分等を受けている場合
- 建築基準法や都市計画法等の違反による店舗の除去等を命じられている場合
- 現に酒類製造免許を受けている酒類に対する酒税につき、担保の提供を命ぜられたにもかかわらず、その全部又は一部の提供をしない場合
- 申請酒類小売販売場において酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる場合
法人申請の場合には、直近3事業年度における決算の内容を審査されますので、決算要件が満たされていない場合には、酒類販売業免許申請を先送りにしなければならない場合もあります。
また、免許を受けている酒類の製造業務・販売業務や調味食品等の販売業務に3年以上従事している必要もあります。これらの従事経験や経営経験がない場合には、その他の業での経営経験に加え「酒類販売管理研修」の受講が必要になります。
酒類販売業免許申請の経営基礎要件は、非常に複雑であり、免許取得を左右する重要な要件です。自分では要件確認の判断に迷う場合には、管轄の税務署や専門の行政書士に相談することをおすすめします。
需給調整要件とは
「需給調整要件」とは、酒類販売業を営む上で、申請者に適正な仕入・販売を行えるかを判断する基準のことです。酒税法10条11号に規定され、次のように記載されています。
- 販売先が原則としてその構成員に特定されている法人又は団体でない
- 免許の申請者が酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でない
2の「酒場、旅館、飲食店等酒類を取り扱う接客業者でないこと」という項目があるのは、酒類販売免許を持っていない料飲店を保護しようとする観点からです。
したがって、酒販店と料飲店で場所的区分を行い、併せて酒類の仕入・売上・在庫管理等も明確に区分した帳簿を作成するなどの措置を行った上で酒類指導官と協議することで、免許付与の可能性がかなり高まるでしょう。
一般酒類小売業免許の申請先
酒類販売業免許申請書及び所定の添付書類の提出先は、販売店(事務所や店舗)の所在地を所轄する税務署です。
審査期間
一般酒類小売業免許の審査期間は約2カ月になります。審査が完了したら、登録免許税を納付し、免許通知書を受け取ることができます。
管轄の税務署によっては免許取得後の注意事項等の説明が酒類指導官ありその後、免許通知書が交付されることもあります。
一般酒類小売業免許の申請に必要な書類
一般酒類小売業免許の申請を行う場合、様々な申請書類を作成し、必要資料を集めなくてはいけません。
以下、2つに分けてみてみましょう。
- 一般酒類小売業免許の申請書類
- 一般酒類小売業免許に必要な添付書類
こちらに記載した必要書類は一般的なケースを元に作成しています。許可を取得する業種や、会社の状況によって変わってきますので、事前に行政書士等の専門家に相談されるのが安全です。
では、建設業許可の申請時に必要書類を確認してみましょう!
申請書
「酒類販売業免許申請書」は、頭書のページに「申請者」「販売場の所在地及び名称」「業態」「販売管理者の選任(予定)」「申請する販売業免許等の種類」「販売しようとする酒類の品目の範囲及び販売方法」「申請の理由」のほか、「既に酒類の免許を保有している場合には、主たる酒類販売場の詳細」などを記載します。
そのほかにも、別紙として、次葉1~6があり、「販売場の敷地の状況」「建物等の配置図」「事業の概要」「収支の見込み」「所要資金の額及び調達方法」「酒類の販売管理の方法に関する取組計画書」などが申請書の一部の書類として、添付が必要です。
一般酒類小売業免許の申請書類 | 説明 |
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酒類販売業免許申請書 | 申請者や販売場の情報を記載します。 |
販売場の敷地の状況 | 建物の一部であっても建物の全体図にその位置を記載します。 |
建物等の配置図 | 倉庫部分や、標識の掲示、酒類の陳列場所等を記載します。 |
事業の概要 | 店舗等の広さ、什器備品等について記載します。 |
収支の見込み | 事業計画、規模にあった収支見込みを記載します |
所要資金の額及び調達方法 | 自己資金の場合は資金捻出の根拠説明書、融資の場合は融資証明書を提出します。 |
酒類の販売管理の方法」に関する取組計画書 | 販売責任者の予定者やお酒を販売する業態などを記載します。 |
添付書類
申請書のほか、申請書に添付する必要書類は、「酒類販売業免許の免許要件誓約書」「申請者の履歴書」「地方税の納税証明書」「最終事業年度以前3事業年度の財務諸表(申請者が個人の場合には収支計算書等)」「土地及び建物の登記事項証明書」などです。
これらの書類以外にも必要となってくる書類もありますので、事前に管轄税務署への確認が必要です。
一般酒類小売業免許の添付書類 | 説明 |
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酒類販売業免許の免許要件誓約書 | 申請者、申請法人の役員、申請販売場の支配人について必要です。 |
申請者の履歴書 | 法人の場合には、監査役を含めた役員全員の職歴を記載します。 |
定款の写し | 申請者が法人の場合は、提出してください。 |
地方税の納税証明書 | 都道府県及び市区町村が発行する納税証明書で、申請者につき各種地方税について、 ①未納の税額がない旨 ②2年以内に滞納処分を受けたことがない旨の両方の証明がされたものを提出します。 法人については、証明事項に「特別法人事業税」を含める必要があります。 |
販売場の土地・建物の登記事項証明書 | 申請販売場の建物が複数の土地(地番)にかかる場合には、その全ての地番に係る土地の登記事項証明書が必要になります。 |
販売店の賃貸借契約書等の写し | 土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写しが必要になります。 |
最終事業年度以前3事業年度の財務諸表 |
一般酒類小売業免許における酒類販売管理者の必要性
一般酒類小売業免許を付与された後は、酒類業組合法上の義務として、酒類販売場ごとに、酒類の販売業務を開始する時までに「酒類販売管理者」を選任する必要があります。
酒類小売業者は、酒類販売管理者の選任後2週間以内に、所轄税務署長に「酒類販売管理者選任届出書」の提出が必要です。
「酒類販売管理者」には、以下の選任要件をすべてクリアする必要があるので押さえておきましょう。
【酒類販売管理者の要件】
- 選任前3年以内に酒類販売管理研修を受けること
- 成年であること
- 酒類販売管理者の職務を適正に行える認知・判断・意思疎通等の能力があること
- 一般酒類小売業免許の申請者の人的要件のうち、税の滞納処分を除いた要件を満たしていること
- 引き続き6ヶ月以上雇用予定であること
- 他の販売場で酒類販売管理者に選任されていないこと
なお、酒類小売業者(法人であるときはその役員)が、販売場で酒類販売業務に従事するケースでは、自ら酒類販売管理者となることができます。
酒類販売管理研修を受けた後も3年ごとに酒類販売管理研修を受講する必要があります。。
また、以下のケースでは、酒類販売管理者の代替者として、必要数の「責任者」を配置することが必要です。
【責任者の設置が必要なケース】
- 夜間(午後11時〜翌日午前5時)
- 酒類販売管理者の長時間(2~3時間以上)不在
- 販売場の面積が大きい(100㎡超ごとに1名追加)
- 同一建物内で複数階で酒類販売場の設置(各階ごとに1名以上)
- 同一階の複数の酒類販売場が20mル以上離れている(離れていなくとも同一階で3ヶ所以上酒類販売場がある場合を含む)
夜間(午後11時〜翌日午前5時)の「責任者」に関しては、成年者である必要があります。
まとめ
このページでは、一般酒類小売業免許について、取得するための要件・条件や取得手続きの流れ、申請に必要な書類、酒類販売管理者の必要性などをご紹介いたいました。
一般酒類小売業免許は、酒類の小売業をはじめるに際して、最初に取得する一般的な免許となります。
それでも、所管税務署の審査がある点や申請書類等の作成や煩雑な申請手続きがあるなど比較的ハードルの高い許認可といえます。
免許取得のための要件や、申請手続きの流れ、必要書類など、ポイントや注意点をしっかりと押さえておく必要があります。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。