マンション管理業とは、管理組合から委託を受けて、業としてマンションの管理事務を行う事業のことをいいます。このうち、マンションの区分所有者等がそのマンションについて行うものは除外されています。
土地利用の高度化の進展その他国民の住生活を取り巻く環境の変化に伴い、マンションの重要性が高まっていることにより、マンション管理業者の登録制度を実施するなどの措置を講ずることによって、その適正化を推進しています。
そこでこのページでは、マンション管理業法で求められる登録制度について解説します。コンプライアンス違反にならないよう、チェックしておきましょう。
マンション管理業法ってなんだろう?
マンション管理業とは、「管理組合から委託を受けて、業としてマンションの管理事務を行う事業形態」を指します。すなわち、マンション管理業と呼べるためには、以下の3つの要素にすべて該当する必要があります。
- 管理組合から委託を受けること
- マンションの管理事務を行うこと
- 業として行うこと
管理組合からの委託
あくまで管理組合から委託を受けることが要素とされているため、マンションの区分所有者等がそのマンションについて行う行為は除外されています。
管理事務
管理事務とは、基幹事務を含むマンションの管理に関する事務のことをいいます。また、基幹事務とは、管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいいます。
したがって、マンションの警備や防火管理者としての業務だけを請け負う場合は、マンション管理業登録は必要ありません。
事業性
事業性とは、対価の有無を問わず、反復継続的に行う意思をもって行為をなすことを言います。
ただし、そもそも管理行為自体が反復性と継続性を推認することができる行為ですので、あまり深く考え込む必要はないかもしれません。
マンション管理業に係る登録制度とは?
マンション管理業を営もうとする者は、国土交通省からマンション管理業者の登録を受けなければなりません。
もしも無登録でこれらの業務を行ってしまった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。また、宅建業の欠格事由にも該当するため、管理業だけでなく宅建業の営業停止などの影響も受けます。
マンション管理業登録にはどんな要件がある?
マンション管理業登録の要件には、主に以下のようなものがあります。
- 営業所の確保
- 営業所ごとに一定数以上の管理業務主任者の選任
- 財産的基礎があるか
- 一定の欠格要件に該当していないこと
要件1~3について詳しく紹介していきます。
要件①営業所の確保
営業所は、建設業や宅建業ほど厳しい要件を課されません。ただし、法人の場合は登記上の所在と異なる場所に事務所を設置する際など、賃貸借契約書などで使用権限の証明を求められることもあります。
要件②営業所ごとに一定数以上の管理業務主任者の選任
営業所ごとに、管理事務の委託を受けた管理組合30組に1名以上の管理業務主任者を配置する必要があります。
管理業務主任者には、賃貸住宅管理に関する知識や経験が求められることから、管理業務主任者試験に合格し、管理業務主任者として登録し、管理業務主任者証の交付を受けることが必要です。
管理業務主任者証の交付を受けるためには、以下のいずれか条件をクリアする必要があります。
- 試験に合格した者で、管理事務に関し2年以上の実務経験を有するもの
- 試験に合格した者で、登録実務講習を修了した者
- 国、地方公共団体又は国若しくは地方公共団体の出資により設立された法人において管理事務に従事した期間が通算して2年以上である者
- 国土交通大臣がこれらと同等以上の能力を有すると認めた者
試験に合格しただけでは、管理業務主任者とは名乗れないということを覚えておきましょう!
マンション管理士との違い
管理業務主任者とマンション管理士は、マンション管理業における位置づけや業務の範囲に違いがあります。
マンション管理士とは、管理組合の運営やマンションの管理についての専門的な知識を有しており、その知識を使って区分所有者の相談や援助を行う人のことを指します。マンション管理士の資格は国家資格で、試験に合格した人が各地方自治体でマンション管理士としての登録を済ませた場合のみ、『マンション管理士』としての仕事をすることができます。
管理業務主任者の場合は、不動産管理会社が組合と業務委託を結ぶ際に必要な資格なので管理会社に必要とされます。一方で、マンション管理士は管理組合からの相談を受けるのが業務なので管理組合から必要とされます。
▼管理業務主任者とマンション管理士の業務の違い
管理業務主任者 | マンション管理士 |
---|---|
①管理組合などに対して行う管理事務の報告 ②管理委託業務に関する重要事項の説明 ③マンションの設備や組合運営に関するマネージメント | ①マンションの管理規約および使用細則の作成。 ②大規模修繕計画の策定。 ③区分所有者間のトラブル解決へ向けた予備交渉 ④マンション管理に関する住民相談受付 |
要件③財産的基礎があるか
資産(創業費その他の繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した自己資本額が300万円以上を有すること。
マンション管理業登録の流れは?
マンション管理業登録は、主に以下のような手順で進みます。
- 証明資料の収集や申請書の作成
- 国土交通省への登録申請
- 手数料の納付
- 国土交通省での審査
- 登録の完了、登録証の交付
手続きに必要な期間(日数)
国土交通省へ登録の申請書を提出してから登録証が発行されるまでに要する審査期間は90日です。
審査にかなり時間がかかるため、きちんと事業開始前から計画的に動いていく必要があります。
登録手数料
賃貸住宅管理業の登録申請をする場合は90,000円となっています。
登録に必要な書類
登録申請にはとても多くの書類を添付しなくてはなりません。申請するときは、申請書一式を作成し、行政の窓口へ持ち込む必要があります。
- 登録申請書
- 誓約書
- マンション管理業経歴書
- 事務所について要件を備えていることを証する書面
- 身分証明書(登録申請者及び専任の管理業務主任者)
- 登記事項証明書(法人)
- 相談役及び顧問の氏名及び住所並びに発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主又は出資の額の100分の5以上の額に相当する出資をしている者の氏名又は名称、住所及びその有する株式の数又はその者のなした出資の金額を記載した書面(法人)
- 略歴書(登録申請者及び専任の管理業務主任者)
- 資産に関する調書(個人)
- 直近の貸借対照表及び損益計算書(法人)
- 所得税の直近の各年度における納付すべき額及び納付済額を証する書面(個人)
- 法人税の直近の各年度における納付すべき額及び納付済額を証する書面(法人)
- 保証契約に関する事項を記載した書面(保証契約締結した場合)
こちらに記載した必要書類は一般的なケースを元に作成しています。役員構成など会社の状況によって変わってきますので、事前に行政書士等の専門家に相談されるのが安全です。
行政書士に依頼するメリット
マンション管理業登録において、登録申請書の作成や添付書類の収集などはとても手間と時間がかかるものです。特に添付書類は法務局から取得しなくてはならなかったり、税務署から取得する必要があったりなど、慣れていないと時間と労力を要します。また、申請書類に不備があると、審査がストップしてしまいます。
今まで一度も申請をしたことがないと登録をするために、どれだけの時間と労力がかかるかも未知数だと思います。そのため、行政書士に依頼することで、スムーズに申請することができ、結果的にご自身で行うより早く事業をスタートすることができます。
マンション管理業登録を受けても建設業許可が必要?
管理物件のリフォーム工事が必要になった場合、税込み500万以上のリフォーム工事を自社で請け負う場合は、建設業許可が必要になります。
建設業許可を取得する最大のメリットは、受注できる工事の金額に上限がなくなることです。
建設業許可がない状態では、管理物件のリフォーム工事は最大でも500万円までの工事しか受注できないため、受注したくても行うことができない仕事があります。しかし、建設業許可を取得すれば上限額を気にすることなく、工事を受注できるようになります。
その結果、売上高を大幅に伸ばすチャンスとなり、大きく利益を増やすことができる可能性も出てきます。
なお、リフォーム工事は建設業29業種の内装仕上げ工事業に分類されることが多いため、建設業許可が取れるのか。もし今は取れないのあればどうすれば建設業許可が取れるか事前に確認しておきましょう。
マンション管理業登録のまとめ
管理組合から委託を受けて、マンションの管理事務を行うために必要なマンション管理業の登録手続きについて紹介しました。
宅建業免許や建設業許可ほどハードルの高い要件はありませんが、営業所ごとに一定数以上の管理業務主任者の選任が必要ですので、今後、事業拡大で管理組合との委託が増えるようであれば、早めに人員を確保する必要がありますので、
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。