このページでは、産業廃棄物収集運搬業許可の「積替え保管あり」を取得したい事業者さまのために、積替え保管施設の許可を取得する際の注意点について、紹介していきます!
「積替え保管あり」は「積替え保管なし」と比較して、事前計画書の提出や現地調査など、必要とされる作業がとても多いうえに、チェックも厳しいです。
重要ポイント①土地・建物の所有者からの承諾
「積替え保管あり」の産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためには、積替え保管施設の土地と建物の所有者からの承諾が必須になります。
あらかじめ、当該積替え保管施設をかりる際に、賃貸借契約書等に記載されていれば問題ないですが、使用目的が単なる倉庫や工場などは事前に所有者から承諾を受けておきましょう。
重要ポイント②周辺住民の同意
東京都の申請においては、周辺住民の同意はそこまで厳しい要件ではありません。積替え保管施設に接している方、道路を挟んだ向かい側とその両隣の方が対象になります。
また、同意書をもらえなかったとしても、きちんと説明義務を果たせばこの要件はクリアとされています。
なお、埼玉県や千葉県は半径200m範囲に住んでいる方々に説明をし2/3以上の同意書が必要などがありますので、東京都はハードルが低いことが分かります。
重要ポイント③排水処理設備や保管場所にも細かいルールがあります
積替え保管施設では、保管する廃棄物により排水処理設備が必要な場合があります。具体的には油水分離装(グリストラップ)です。一般的に積替え保管施設には車両の搬出入が多く、廃棄物には水分が含んでいる可能性があるとされているためです。
また、屋外に保管する場合は汚水が地下に浸透してしまうのを防ぐためにコンクリートやアスファルトで舗装されている必要もあります。
積替え保管施設では、下記対策が必要なので覚えておきましょう。
- 汚水が敷地外に流出しないような対策
- 廃棄物が敷地外に流出しないような対策
- 廃棄物が雨に晒されないような対策
- においや虫が発生しないような対策
積替え保管施設を設置する流れ
積替え保管施設を設置する場合の流れは下記ようになります。
- 東京都へ事前計画書の作成・提出
- 現地審査
- 産業廃棄物収集運搬業(積替え保管あり)の許可申請
それぞれ詳しく見てきましょう!
東京都へ事前計画書の作成・提出
まずは事前計画書を作成・提出しましょう。これはその名の通り、積替え保管施設の場所やどのような廃棄物を保管するかなど事業活動の計画書をまとめて提出します。
必要書類としては、以下のようなものがあります。
▼事前計画書表紙
法人名や代表者氏名など会社の基本的情報のほか、積替え保管施設の所在地・用途地域・積替え保管施設の作業時間など施設に関することを記載します。
▼保管場所一覧
積替え保管を行う産業廃棄物の種類・保管方法・保管容量・屋内外を記載します。
▼施設の案内図
施設周辺の地図を作成し、主要な道路や駅、その他目印となるような建物をわかりやすく記載します。
▼用途地域を示す図面
準工業地域や商業地域といった用途地域を示した図面を作成し添付する必要があります。
▼施設の周辺図
施設の周辺の地図を作成します。積替え保管施設の近隣がどのような状況か分かるように作成します。
▼施設内配置図
積替え保管施設の「どこに」「何を」置くのか等の施設内のレイアウトを作成し、敷地・建物の幅・長さ・奥行などの寸法を記載する必要があります。
▼施設及び施設周辺の写真
施設の周辺、施設の外観、施設内の設備の写真を撮ります。施設内の写真は、上記の写真撮影場所を示す図面で示した通りの地点から矢印の方向に向かって撮影します。
▼積替え保管を行う産業廃棄物の一覧表
積替え保管を行う産業廃棄物の種類、搬入者、搬出者、主な搬出先、主な排出元、主な品名、一日当たりの平均的な搬出入量を記載します。搬出と搬入のどちらか一方は、必ず自社のみで行う必要があります。また、一日当たりの平均的な搬出入量について、実績がない場合には「想定される」搬出入量を記載します。
▼作業手順説明書
取り扱う廃棄物の種類ごとに、作業手順説明書を作成します。手選別の有無・手解体の有無・有価物の抜き取りの有無のほかに、廃棄物の荷卸しをどのように行うか、選別をどのように行うかなど、廃棄物の取り扱いについて、細かい手順を記載することが必要です。
▼保管場所の図面及び容量計算
廃棄物の種類ごとに、保管方法、保管量、保管容器設置場所を記載します。保管場所や保管容器については、正面図、平面図、側面図および寸法の記載が必要です。保管容量についても例えば、「0.24㎥の廃油を20ℓの石油缶12個で保管する」というような容量計算をする必要があります。
▼保管容器のカタログ
廃棄物を保管する容器のカタログを添付する必要があります。
▼施設清掃に関する説明
施設の清掃に関して、清掃する頻度・清掃方法を記載します。
▼生活環境の保全対策に関する説明
粉じんの飛散、悪臭、騒音など生活環境へ影響を与える事項について、防止対策を記載します。例えば、粉じんの飛散については、「作業中は必ず散水を行う」とか、悪臭については、「保管場所の清掃を毎日行う」などの対策が考えられます。
▼生活環境の保全対策に関する写真及び図面
上記のオイルトラップや散水設備など、生活環境の保全対策のための設備を、写真撮影します。また、メーカーのカタログや図面がある場合には、それらも添付します。
▼使用権原を証明する書類
建物や土地を、産業廃棄物収集運搬業の積替え保管施設として使用する以上、貸主・所有者から、「積替え保管施設として使用することの承諾」を得ていることが必要となります。賃貸借契約書の使用目的の箇所に「積替え保管施設や仮置き場として使用すること」といった記載があればよいのですが、そういった記載がない場合には、「承諾書」「同意書」の提出が必要になります。
▼重機一覧表・重機の写真
施設で重機を使用する場合には、重機の一覧表・重機の写真が必要です。
▼関係法令に関する書類
建築基準法上の建築確認申請書、消防法上の許可申請書、火災予防条例上の届出書など、法令に関する申請などを行った場合には、管轄部署の受付印が入った申請書を添付することが必要です。
▼施設近隣住民等への説明内容に関する書類
積替え保管施設の設置にあたっては、近隣住民・事業者に対して、「施設で取り扱う産業廃棄物の具体的な内容」「具体的な作業内容」「環境対策」などについて説明を行い、説明を行った旨の書類を提出する必要があります。
▼説明対象者を示す図面
上記の施設近隣住民等への説明を行った説明対象者を示す図面を提出します。
▼同意書・協定書・説明経過書
施設の近隣住民、近隣事業者から取得した同意書、協定書、説明経過書を添付する必要があります。
「積替え保管なし」から「積替え保管あり」の許可に変更するための事前計画書の作成・提出には、上記のようなさまざまな書類や写真撮影が必要になります。なかには、施設所有者の承諾書が必要であったり、周辺住民の同意書が必要であったりと、とてもハードルが高いです。
現地審査
事前計画書の作成・提出が終わったら、次は、現地調査があります。
事前計画書では、施設内部の写真撮影や保管場所の図面や保管容量を記載した書類を提出しました。それらの書類をもとに、「廃棄物の取り扱い方法・容量・保管場所」など実際に現地を確認し、法令違反や書面上の不備がないかを東京都の職員が現地に調査に来ます。
もし、大きな不備があった場合は、何度も現地審査をしなければなりません。きちんと事前計画書通りに施設が設置されているか確認しましょう。
産業廃棄物収集運搬業(積替え保管あり)の許可申請
現地調査ば無事終われば、あとは、「積替え保管あり」の許可を取得する申請を行うことになります。
この許可申請書の必要書類としては、以下のようなものがあります。
1.産業廃棄物収集運搬業許可申請書(第1面~第3面)
2.事業計画書
・取り扱う産業廃棄物の種類及び収集運搬にあたって使用する運搬車両等
・従業員数の内訳
・運搬車両(船舶)一覧表
・運搬容器一覧表(運搬容器を使用する場合に記入)
・運搬方法 (シート掛け、容器の使用、ロープによる容器の転倒防止対策等)を記入
3.運搬車両の写真
・車両の全景が写るよう斜め前方、斜め後方から撮影
・ナンバープレートが明確に判別できるよう撮影
4.運搬容器の写真
5.車庫の案内図
6.誓約書
7.事業開始資金及び調達方法
8.講習会修了証の写し
(財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施する「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に係る講習会」の講習会を事前に受講し、修了証の写しを添付
9.事務所の案内図、付近の見取図
10.自動車検査証の写し(船舶は国籍証書及び船舶検査証書の写し)
11.定款又は寄附行為
12.申請者(法人)の履歴事項全部証明書
13.役員(相談役、顧問など)の住民票(本籍又は国籍・地域記載)
14.役員(相談役、顧問など)の成年被後見人・被保佐人の登記をされていないことの証明書
15.政令使用人の住民票(本籍又は国籍・地域記載)
16.政令使用人の成年被後見人・被保佐人の登記をされていないことの証明書
17.株主等の住民票(本籍又は国籍・地域記載)
18.株主等の成年被後見人・被保佐人の登記をされていないことの証明書(株主等が法人の場合)株主等(法人)の登記事項証明書
19.直近3年間の貸借対照表
20.直近3年間の損益計算書
21.直近3年間の株主資本等変動計算書
22.直近3年間の個別注記表
23.直近3年間の法人税納税証明書
行政書士に依頼するメリット
積替え保管施設の許可申請で必要な書類について多岐にわたり、書類取得のための申請先も様々なのでとても手間が掛かります。また関連法令もかなりたくさんありますので、産業廃棄物収集運搬業(積替え保管あり)の許可申請だけでは不十分です。
初めて申請する書類に関しては、それぞれ関連法令の申請の方法や申請先、申請に必要な添付書類や必要となる手数料をそれぞれ申請書類ごとに調べていく必要があります。
また申請時点での作成期限が求められる書類もあるので、取得のタイミングも重要ですし、慣れない書類の収集は想像以上に時間と手間が掛かります。
専門性と実務経験が豊富な行政書士に依頼すれば、積替え保管施設の許可申請の書類作成から取得までの期間が大幅に削減することができるので、結果的に自分で申請するより早く許可を取得することができます。
まとめ
積替え保管施設の許可申請を取得するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。近隣の状態から施設の状態、密接に関係した関連法令などの手続きもする必要があるためかなりハードルの高い許可といえます。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。