東京都で深夜にお酒を出す飲食店は届出が必要です!【深夜酒類提供飲食店営業届】

飲食店を開業する際、行政(管轄の保険所)に対し、飲食店営業許可申請をしなければいけません。そして飲食店のなかでも業態によって深夜酒類提供飲食店営業届の提出が必要となる届出があります。

このページでは「深夜酒類提供飲食店営業届」についての手続きや注意点など解説をしていきます。

深夜酒類提供飲食店とは?

まず、深夜酒類提供飲食店とは、深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯に主に酒類を提供する飲食店のことを言います。

しかし、飲食店といってもファミリー向けのレストランから、バーなど様々な形態があり、深夜時間帯に酒類を提供するすべての飲食店が深夜酒類提供飲食店に該当するわけではありません。

平成30年に警察庁生活安全局から通知された内容には下記のように定義されています。

「酒類提供飲食店営業」とは、「飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)」と定められています。
(1) 「酒類を提供して営む」とは、酒類(アルコール分1度以上の飲料をいう。)を客に提供して営むことをいい、提供する酒類の量の多寡を問わない。
(2) 「営業の常態として」の解釈については、次の点に注意すること。

  • 営業時間中客に常に主食を提供している店であることを要し、例えば、1週間のうち平日のみ主食を提供する店、1日のうち昼間のみ主食を提供している店等は、これに当たらない。
  • 客が飲食している時間のうち大部分の時間は主食を提供していることを要し、例えば、大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬を提供するような場合は、これに当たらない。
  • 「通常主食と認められる食事」とは、社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、麺類、ピザパイ、お好み焼き等がこれに当たる。

深夜酒類提供飲食店では以下の行為を行うことはできません。

店員(キャスト)がお酌をする
・店員が一緒にカラオケする
・店員が一緒にゲームする
ショーや生演奏を見聞きさせる など

これらの行為を深夜0時以降も行いたい場合、深夜酒類提供飲食店の営業の届出を行うのではなく、特定遊興飲食店の許可申請を行います。

深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要な飲食店

先ほどの開始届が必要なケースから考えると、居酒屋、焼き鳥・焼きとん屋、立ち飲み屋などのお酒を提供することを目的とした飲食店がこれに該当します。

ただし、これらの業態に該当するとしても、深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯にそもそも同業態にて営業をしないのであれば、深夜酒類提供飲食店営業届は必要なく飲食店営業許可で営業することができます。

深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要な飲食店

一方、ラーメン店、うどん・そば店、お好み焼き・もんじゃ焼き店、ピザ屋、牛丼屋、弁当屋、定食屋、レストラン、中華料理店などの主にお酒を提供することを目的としない飲食店については、深夜酒類提供飲食店営業開始届は不要です。

ただし、居酒屋など主にお酒を提供することを目的とする業態(アルコールがメインの業態)に変更する場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要となりますので注意してください。

深夜酒類提供飲食店営業開始届をするタイミング

まず、店深夜酒類提供飲食店営業開始届の前に所轄保健所にて飲食店営業許可を取得しておく必要があります。

その上で、店舗のオープン予定日の10日前までに所轄の警察所を経由して都道府県公安委員会に届出をしなければなりません。

なお、予約が必要な警察署とそうでない警察署があるので事前に電話で確認をしてください。あわせて、届出に際して必要な書類に不備がないかのチェックも忘れないでください。

深夜酒類提供飲食店営業ができる店舗条件

深夜酒類提供飲食店営業をするためには、下記の条件を満たす必要があります。

(1)客席の面積は一室の床面積を9.5㎡以上とすること。(客室数が1室のみである場合以外)

9.5㎡に満たない個室を作ってはダメということです。

(2)客席の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。

1mを超えるパーテーションや仕切りの設置はできません。ソファーや椅子の背もたれが1mを超えるのもダメです。

(3)風俗を害する恐れのある装飾、写真等の設備が無いこと。

一般的にイヤラシイと捉えられる写真や物を置いたらダメです。

(4)騒音、振動の数値が条例により定められた数値以下であること。

深夜に営業するため騒音・振動が規制値以下になっている必要があります。

(5)営業所の照度が20ルクス以上あること

(6)営業可能区域に店舗を構えること

<東京都の場合>

  • 商業地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域
  • その他用途が指定されていない地域

(7)保全対象施設が近くにないか

保全対象施設とは、学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所をいいます。また、これらの建築予定地も対象となりますので注意が必要です。

お店の場所から、東京都公安委員会規則で定められた一定の距離内に保全対象施設があると営業することができません。

保全対象施設の距離制限

用途地域保全対象施設保全施設までの距離
商業地域学校(大学を除く)50m以上  
図書館
児童福祉施設(助産施設を除く)
大学20m以上  
病院(第1種助産師施設を含む)
診療所(8人以上の患者を入院させる施設を有するものに限る)
第2種助産施設10m以上
診療所(7人以下の患者を入院させる施設を有するものに限る)
近隣商業地域学校(大学を除く)100m以上  
図書館
児童福祉施設(助産施設を除く)
大学50m以上  
病院(第1種助産師施設を含む)
診療所(8人以上の患者を入院させる施設を有するものに限る)
第2種助産施設20m以上
診療所(7人以下の患者を入院させる施設を有するものに限る)
その他の地域(準工業地域)    学校100m以上
図書館
児童福祉施設
病院
診療所(患者を入院させる設備を有するものに限る)

※保全対象の除外となる特定地域

商業地域及び近隣商業地域のうち、風俗営業に係る営業所が密集している地域で、保全対象施設からの距離にかかわらず、風俗営業が可能であると公安委員会が認める地域を『特定地域』といい、東京都の場合は以下の場所が該当します。

中央区銀座4丁目~8丁目までの区域
港 区新橋2丁目~4丁目までの区域
新宿区歌舞伎町1丁目、2丁目(9番、10番、19番~46番)新宿3丁目の区域
渋谷区道玄坂1丁目(1番~18番)、2丁目(1番~10番)桜丘町(15番、16番)の区域

深夜酒類提供飲食店営業開始届に必要な書類

飲食店営業許可を取得したら、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を作成し、必要な書類を添付して警察署に届け出ることになります。

▼必ず必要になる書類

  • 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
  • 営業の方法を記載した書類
  • 店舗の図面類
  • 住民票(本籍地が記載されているもの)
  • 法人の場合は、定款・法人登記事項証明書

この届出において、自分で作成するのが難しいのは店舗の図面です。営業所の平面図だけではなく様々な図面が必要となることがあります。その中でも求積図は警察署独自のものなので建築図面などをそのまま使用することができません。手書きでも作成は可能ですが、手間や正確性を考えるとCADソフトなどを使用するのがいいでしょう。

▼店舗の図面類

  • 営業所周辺の略図
  • 建物概略図
  • 営業所の平面図
  • 配置図
  • 求積図
  • 照明・音響設備図

▼警察署によっては必要になる書類

  • 保健所の飲食店営業許可証の写し
  • 店舗の賃貸契約書、使用承諾書
  • 用途地域が分かる書類(用途地域の証明)
  • 店舗のメニュー表の写し
  • 誓約書

店舗の賃貸借契約書や使用承諾書は東京都では強く求められています。物件が自己所有であれば問題ないですが、例えばビルの1室を賃貸した場合、賃貸借契約書と「深夜酒類提供飲食店営業を行ってもよい」という承諾書も必要となります。
なぜなら、ビルの所有者が自分のビルで深夜営業が行われているということを知らずに賃貸した場合、トラブルとなることが予想されるからです。

また、管轄の警察署によってはメニュー表誓約書などを求められるケースがあります。
誓約書の内容は、警察署独自のものから任意のものまで様々です。さらに自著による誓約書や申請者の出頭など、警察署によって運用が異なります。必ず事前に所轄の警察署に確認してから申請するようにしましょう。

 

無届で営業した場合、どうなるのか?

深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要なのに、届け出なかった(無届)場合、50万円以下の罰金に処される可能性があります。

罰金は、懲役や禁固と同じく前科となってしまうので注意してください。また、同法34条2項を確認すると、深夜酒類提供飲食店営業開始届を行わずに営業していることが発覚し、行政から提出するよう指導を受けたにもかかわらず、これに従わなかった場合、罰金のほか、最長で6カ月の業務停止処分を受ける可能性があります。

これらは、そんなこと知らなかったではすまないことなので、必ず、店舗の営業開始前に深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出するようにしてください。
 

従業者名簿の営業所への備え付け

深夜酒類提供飲食店営業を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごとに、従業者名簿を備え、これに以下の事項を記載しなければなりません。なお、従業者名簿は、従業者が退職した後も、その退職日から起算して3年を経過する日までは営業所に備え付けておかなくてはなりません。
・住所
・氏名
・性別
・生年月日
・本籍(日本国籍を有しない者はその者の国籍を記載する。)
・採用年月日
・退職年月日
・従事する業務の内容
※従業者の生年月日や本籍または国籍を記載する際は従業者より住民票、運転免許証、パスポート、外国人登録証明書等(在留カード)などを提出してもらいそれが事実であるのかの確認を必ずしてください。また、それらの写しを作成して従業者名簿と一緒に保管してください。

深夜酒類提供飲食店営業届:まとめ


今回は、深夜にお酒を提供する居酒屋やバーに必要な深夜種類提供飲食店営業届について紹介しました。これは主にお酒を提供しているのか、主食を提供しているのかによって、提出の有無が異なります。

自身の店舗では提出が不要だと思っていても、実は必要だったというケースも多いです。

コンプライアンス違反にならないように行政書士など専門家への相談をするのをおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。

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