
建設業許可を取得したいけど、どうやったら許可が取れるのか・どんな要件を満たせばいいのかわからない事業者さんは多いのではないでしょうか。
建設業許可は他の許認可と比べ、許可取得ハードルが高く複雑かつ様々な書類を準備する必要があります。
このページでは、弊社代表が実際に建設業許可を取得した事例をご紹介させていただきます。
給水装置工事主任技術者で建設業許可を!
給水装置工事主任技術者の資格で、管工事業許可を取得した事例をご紹介いたします。
<許可取得概要>
営業所所在地:神奈川県
業種:東京都知事一般建設業・管工事業
<経営業務の管理責任者:候補者>
代表取締役(会社設立後5年経過:第6期進行中)
<専任技術者:候補者>
代表取締役(資格:給水装置工事主任技術者)
<相談内容>
Q:給水装置工事主任技術者の資格では簡単に許可が取れないと聞いた
→給水装置工事主任技術者は国家資格でも、一定の管工事業(給排水工事など)について実務経験が必要です。今回は丸5年、給排水工事を行っていたので、管工事業の許可を取れると判断。
Q:会社を設立して5年+2か月程度だが、最初の請求書を発行したのが、会社設立後4カ月経過してからだが、今時点で5年を証明することができるのか?
→まずは、設立後すぐに現場に入り、工事完了が4か月後ということでしたので、丸5年は経過していると判断。また、第1期の確定申告書の業種欄に「建設業」と記載があったので、証明書類もOKだと判断しました。
ここで、建設業許可を取得するための大きな3つの要件を確認しましょう。
- 経営業務に関わる方の中に、経営業務管理責任者を置く必要がある
- 許可を受けたい業種の専任技術者を持った方がいる
- 500万円以上の財産要件を満たしている
それぞれの要件をクリアした方法をご紹介していきます!
要件①:経営業務の管理責任者の要件をクリアする方法

経営業務の管理責任者の要件は常勤している取締役のうち、つぎのいづれかの要件をクリアする必要があります。
- 建設業に関して5年以上取締役として経験のある者
- 建設業に関して5年以上取締役に準ずる地位(建設部長等)にあり、経営業務のある者
- 建設業に関して、6年以上取締役に準ずる地位があるものとして、経営業務を補佐する業務に従事した経験がある者
- 建設業に関して2年以上役員等として経験を有し、かつ5年以上役員又は役員に次ぐ職制上の地位にあるもの。さらに5年以上財務管理、労務管理、業務運営管理の従事した者を補佐としておくこと。
- 5年以上役員としての経験を有し、かつ建設業に関して2年以上の経験があるもので更に、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営管理に従事した補佐役をおくこと。
建設業許可において経営業務の管理責任者でつまずくケースが一番多いです。5年以上の経営経験(役員経験)というのは、かなり高いハードルだからです。
今回の相談のケースでは会社を設立して5年経過していたので、「1.建設業に関して5年以上取締役として経験のある者」がクリアしていました。
建設業に関して5年以上取締役として経験のある者の証明方法
建設業に関して5年以上取締役として経験のある者の証明方法
今回建設業を取得しようと思っているので、建設業許可がない会社で取締役経験が5年以上営んできた場合、建設業を行っていた証明をしなければいけません。その証明方法は建設業に関する請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録といった書類の提出です。
▼必要書類の一例
証明書類 | |
---|---|
法人役員の経験 | ①登記事項証明書 + ②工事請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) or 確定申告書(業種欄に建設業とわかるものに限る) (必要年数分) (取締役期間中のもの) |
まず、取締役経験は履歴事項全部証明書に登記されているのですぐにクリアできました。
その次に、建設業を営んでいた経験の証明としては、神奈川県では一番スムーズな方法は確定申告書の業種欄に建設業とわかる記載があればその年は建設業を営んでいたと証明することができます。今回のケースは第1期~第3期までは「建設業」、第4期~第5期までが「配管工事業」と記載がされていたので、ばっちりでした。
一都三県で比較すると、この確定申告書の業種欄で証明できるのは神奈川県のみです。
これで、まずは、経営業務の管理責任者の要件はクリアです。
要件②:専任技術者の要件をクリアする方法

2つ目の要件である専任技術者は営業所(本店等)に常勤する技術者のうち、つぎのいづれかの要件をクリアする必要があります。
<一般建設業許可の専任技術者の要件>
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
経営業務の管理責任者に次いで専任技術者もハードルが高いです。
給水装置工事主任技術者は「2.定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある」になり、資格取得後に1年間の実務経験が必要になります。
1年間の実務経験の証明方法
建設業許可がない会社で管工事業の1年以上の実務経験を証明する場合、①該当する工事を行っていた証明、かつ、②その期間その会社に所属していたことを証明しなければいけません。
① 該当する工事を行っていた証明 | 工事請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録 (証明期間分:1年ごとに1件) or 確定申告書(業種欄に建設業とわかるものに限る) (必要年数分) |
② その期間、会社に所属していた証明 | 健康保険証、厚生年金の被保険者記録回答票 |
<①該当する工事を行っていた証明>
経営業務の管理責任者で準備した、確定申告書内の第4期・第5期が「配管工事業」と記載されていたので、管工事を行っていたとみることができ、スムーズに実務経験を証明することができました。
<②その期間、会社に所属していた証明>
専任技術者の候補者が代表取締役で、社会保険(健康保険・厚生年金)に適切に加入したので、健康保険証で証明することができました。(健康保険証の加入年月日~現在までと①の期間が一致していたため)
これで、専任技術者の要件もクリアです!
最後に財産要件を確認していきましょう。
経営業務の管理責任者・専任技術者には常勤性も求められます
経営業務の管理責任者や専任技術者を選任する場合は必ず営業所に常勤させる必要があります。
そして、その常勤性は原則、事業所名称に申請会社が記載された「健康保険証」で証明します。しかし、75歳以上(後期高齢者医療制度)の方、事業所名所が印字されていない健康健康保険証をお持ちの方、マイナ保険証に移行後に入社した方は健康保険証では証明することができませんので、下記書類が必要になります。
▼健康保険&厚生年金で常勤性を証明する方法
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する標準報酬決定通知書
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
▼厚生年金関係で常勤性を証明する方法
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 資格取得届(新規に認定する者に限る)
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当届※70歳以上の新規に認定する者に限る
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当及び標準報酬月額相当額のお知らせ
▼住民税関係で常勤性を証明する方法
- 住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)
- 住民税特別徴収切替届出※新規に認定する者に限り
▼健康保険組合関係で常勤性を証明する方法
- 資格証明書
▼法人役員の常勤性を証明する方法
- 直近決算の法人税確定申告書(役員報酬手当及び人件費等の内訳書)(年130万以上の役員報酬が確認できること)
なお、採用した直後に常勤性を証明するのは、下記3パターンしかないかなと思います。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 住民税特別徴収切替届出
これらは手続きを行う中で、厳しくチェックされる項目なので注意しておきましょう。
最後に財産要件を確認していきましょう。
要件③:財産要件をクリアする方法

建設業許可を取る上であと1つ、申請者からの相談が多いのが財産要件です。
500万円の財産要件を証明する方法は次の2つの基準です。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の残高証明書を用意できるか
資本金を500万円以上しなければ財産要件を満たすことができないと思われている方が多いですが、資本金500万円=財産要件クリアではありません。
また、資本金を500万円以上にしても、財産要件を必ずしもクリアできるというわけではありません。
①自己資本が500万円以上あることを証明
自己資本とは、簡単にいうと財産から借金を差し引きした金額(返済義務のない資金)のことです。
具体的には、直前期の決算報告書内の貸借対照表のうち、「純資産の部」の金額をいいます。資本金や資本剰余金、利益剰余金や繰越利益剰余金といった項目が並んでいると思いますが、これらの合計額が自己資本ということになります。
したがって、資本金が100万しかなくても、利益剰余金(今までの利益金)が400万円以上あれば、自己資本合計が500万以上となり、財産要件はクリアできるというわけです!
しかし、自己資本が500万円未満だったため、500万円以上の残高証明書を用意し、財産要件もクリアしました!
初回相談から様々な資料をご準備いただき、無事に建設業許可を取得することができました!
初回相談から建設業許可申請までは約10日くらいだと思います。
建設業許可を勝ち取る方法:まとめ
建設業許可を取得するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。基本的な許認可であれば、有資格者がいれば取得できることも多いなか、建設業許可はかなりハードルの高い許可といえます。
なお、建設業許可は営業所を構えている都道府県に申請をすることになりますが、各都道府県によって審査基準が大きく変わります。神奈川県で建設業許可の取り方をまとめているので、ぜひご確認ください。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。