建設事業者の多い東京都では、44078業者が建設業許可を取得し許可業者全体の9.2%を占めるほどです。(令和6年3月末時点)この情報はあくまで東京都にのみ事務所を構えている東京都知事許可ですので、東京都に本社を構える大臣許可業者を入れると、かなりの割合を占めると思います。
そこで、東京都の建設業許可を取って500万円以上の大きな工事を請け負い事業拡大につなげたいのに、許可を取得するための要件を満たしていない、もしくは、要件を満たしているのに過去の書類が残っていなく困っている建設業者さんはかなりいます。
今回は、東京都の事業者様向けに建設業許可を取得する方法を様々な角度から紹介していきます。
このページでは、東京都で建設業許可申請をする場合の①経営業務の管理責任者、②専任技術者、③500万円の財産要件のクリア方法や申請書類などをご紹介します。
まずは東京都に営業所があるかを確認しましょう!
東京都で建設業許可を取得するには、まず東京都内にのみ建設業の営業所があり、かつ、他の都道府県には建設業の営業所を設けていないことが条件です。複数の都道府県に営業所がある場合には国土交通大臣許可が必要になってしますので、事前に営業所の場所は確認しましょう。
なお、建設業許可における営業所とは、「常時建設工事の請負契約を締結する事務所のこと」を言います。
営業所と認められるためには、契約締結の権限が与えられていることが必要であり、少なくとも以下の要件を備えていなければなりません。
- 工事の見積もりや入札、契約書の締結行為など、請負契約に係る実体的な業務を行っていること
- 契約締結に関する権限を付与された者が常勤していること
- 営業を行う場所を有し、電話や机などの物理的な施設を備えていること
- 専任技術者が常勤していること
そのため、東京都と埼玉県で営業所を構えていても、東京都の営業所では建設業に関するすべての業務を行い、埼玉県の営業所では不動産取引のみの業務を行っている場合には、東京都の営業所のみ建設業の営業所に該当するため、東京都知事の建設業許可が必要になるということです。
営業所として認められるケース・認められないケース
・JKK・UR・都営住宅
JKK・UR・都営住宅では営業所としては認められていません。理由は、JKKやURや都営住宅は、住居用として貸し出されているため事務所や営業所として利用することは禁止されているためです。
・作業小屋、物置
これらも、建設業の許可を取得する際の営業所としては認められていません。一次的な事務作業の場所とは言えるかもしれませんが、一般常識的に「契約などのために来客を招き入れて」建設業の業務を行う場所とは考えにくいためです。
・自宅兼事務所
自宅兼事務所でも、居住スペースと事務スペースが壁等で明確に分離している場合には営業所として認められる場合があります。具体的には、一戸建てやマンションで居住スペースと事務スペースが部屋で分かれている場合です。しかし、部屋で分かれていても事務スペースに入るまでに居住スペース(リビングなど)を通る必要がある場合は認められません。
そのため、ワンルームマンションでの自宅兼事務所は、居住スペースと事務スペースを分離することができないので、営業所にはあたりません。
〇事務所として認められるケース
×事務所として認められないケース
・同一フロアに別法人がいる場合
同一フロアに別法人が入居している場合にも注意が必要です。フロア図等を用いて、営業所が他法人とは「分離独立」していることを示さなければなりません。
登記上の本店所在地と実際の営業所所在地が異なる場合
「登記上の所在地と実際の営業所所在地が異なる」ことに違和感を感じる方もいるかもしれませんが、実際にはよくあることです。たとえば、登記簿上の本店は完全な自宅で、実際の営業所を他に借りている等のケースです。
その場合は、本店所在地ではなく、実際の営業所所在地で建設業許可を取得することになります。
そこで、この場合には、実際に、営業所の使用権原があることを証明する必要があるため、下記書類を提出する必要があります。
- 当該建物が自己所有の場合には、「建物の登記簿謄本」
- 当該建物を賃借している場合には、「賃貸借契約書」※使用目的が事務所用または店舗用であることが必要です
要件①:経営業務の管理責任者の要件をクリアする方法
経営業務の管理責任者の要件は常勤している取締役のうち、つぎのいづれかの要件をクリアする必要があります。
- 建設業に関して5年以上取締役として経験のある者
- 建設業に関して5年以上取締役に準ずる地位(建設部長等)にあり、経営業務のある者
- 建設業に関して、6年以上取締役に準ずる地位があるものとして、経営業務を補佐する業務に従事した経験がある者
- 建設業に関して2年以上役員等として経験を有し、かつ5年以上役員又は役員に次ぐ職制上の地位にあるもの。さらに5年以上財務管理、労務管理、業務運営管理の従事した者を補佐としておくこと。
- 5年以上役員としての経験を有し、かつ建設業に関して2年以上の経験があるもので更に、5年以上の財務管理、労務管理、業務運営管理に従事した補佐役をおくこと。
建設業許可において経営業務の管理責任者でつまずくケースが一番多いです。5年以上の経営経験(役員経験)というのは、かなり高いハードルだからです。
よく相談をうけるのはこの3つのパターンに分かれます。
- 許可のない業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
- 許可のある業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
- そもそも5年以上の経営経験(役員経験)がない時
それぞれ対処方法を解説します。
①許可のない業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
許可がない法人の代表または個人事業主(一人親方)として建設業を5年以上営んできたものの、請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録といった証明書類が残っていないということはよくあります。
1.請負契約書、注文書+請書については、工事実績が確実にあるのであれば、当時の取引先にコピーをお願いするのも1つの方法です。
2.請求書+入金記録について、通帳が残っていない場合でも「入金記録」は前10年間であれば銀行に問い合わせることで取引明細を発行してもらえることは多いのでそれでクリアできます。請求書については、確定申告時に税理士にコピーを渡しているケースが多いと思うので、税理士に確認するのもいいでしょう。
入金記録さえ入手することができ、かつ、工事実績が確実にあるのであれば、証明する方法はいくつもあります。
他社での役員経験で、協力を得ることができないケースは相当ハードルが高くなります。
もしかしたら建設業許可を持っていた場合もあれば、当時の取引先と関係性が続いているのであれば、そこからクリアの糸口を見つけていくことも方法です。
諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
②許可のある業者で5年以上経営経験(役員経験)があるけど、証明書類がない時
許可がある業者での経験の場合は、基本的には、許可通知書を用意するだけで証明できます。
しかし、許可がある他社での役員として5年以上の経営経験があるものの、協力を得ることができないということはよくあります。その場合は、まずはその会社がどこの都道府県で許可を取得していたかを確認しましょう。
東京都や神奈川県の場合は、行政に「会社名」「営業所の住所」「当時の代表取締役」を伝えるだけで、いつからいつまで許可を取得していたか教えてくれる場合があります。また大阪の場合は行政文書の開示請求をすることで許可状況が記載された文書(黒台帳と呼ばれています)を手に入れることができます。
これらの情報から証明することができるので、諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
③そもそも5年以上の経営経験がない時
そもそも経営経験がない場合は、要件を満たすことは極めて難しいと言えます。5年間は通算でも認められますので、過去、少しでも法人の代表や個人事業主をやっていたのであれば、現在+過去の合わせ技で証明しましょう。
そうでない場合は、経験年数が到達するのを待つか、経験がある人を迎え入れるしかありません。
それ以外では「取締役や個人事業主の直下で経営を補佐した経験者」に該当するかの可能性を探っていくことぐらいでしょう。。
過去・経営業務の管理責任者と認められていた場合
過去、いずれかの都道府県で「経営業務の管理責任者」として認められた者は、当時の建設業許可申請書料(許可行政庁において受付印の押された「建設業許可申請書」または「変更届出書」及びこれらに添付された「経営業務の責任者証明書」を)用意できれば、再び経営業務の管理責任者になることができるとされています。
過去、経営業務の管理責任者と認められたのだから、また簡単になることができると思われている方も多いですが、実際はそうではありません。
たとえば、無許可業者で5年間の個人事業主としての経験を使用し、建設業許可を取得しても、1年後に廃業してしまうと許可業者としては1年の経験しかないため、再度許可を取得しようとおもったら再度、無許可業者で5年間の個人事業主の経験、または、無許可業者で4年間の個人事業主+許可業者での1年間を証明しなければならないのです。
時間がたってしまうと、無許可業者の経験を証明するのはとても大変です。膨大な実績証明資料(請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録)を再度用意しなければなりません。
しかし、東京都の場合は、建設業許可申請書や変更届などを残していれば、実績証明資料がなくても再び経営業務の管理責任者になることができるのです。
また、この制度を利用すれば、例えば建設業許可の取りやすい神奈川県や千葉県でまず建設業許可を取得し、東京都へ許可換え新規申請をすることもできます。
これはかなり詳しい行政書士しか知らないことでもあります。
なお、この制度は埼玉県では認められていません。
神奈川県と千葉県ではそれぞれの県で過去認められれば当時の建設業許可申請書料(許可行政庁において受付印の押された「建設業許可申請書」または「変更届出書」及びこれらに添付された「経営業務の責任者証明書」を)用意できれば、再び経営業務の管理責任者になることができるとされています。
経営業務の管理責任者は常勤性も求められます
経営業務の管理責任者を選任する場合は必ず営業所に常勤させる必要があります。
そして、その常勤性は原則、事業所名称に申請会社が記載された「健康保険証」にで証明します。しかし、75歳以上(後期高齢者医療制度)の方、事業所名所が印字されていない健康健康保険証をお持ちの方、マイナ保険証に移行後に入社した方は健康保険証では証明することができませんので、下記書類が必要になります。
▼健康保険&厚生年金で常勤性を証明する方法
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する標準報酬決定通知書
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
▼厚生年金関係で常勤性を証明する方法
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 資格取得届(新規に認定する者に限る)
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当届※70歳以上の新規に認定する者に限る
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当及び標準報酬月額相当額のお知らせ
▼住民税関係で常勤性を証明する方法
- 住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)
- 住民税特別徴収切替届出※新規に認定する者に限り
▼健康保険組合関係で常勤性を証明する方法
- 資格証明書
▼法人役員の常勤性を証明する方法
- 直近決算の法人税確定申告書(役員報酬手当及び人件費等の内訳書)(年130万以上の役員報酬が確認できること)
なお、採用した直後に常勤性を証明するのは、下記3パターンしかないかなと思います。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 住民税特別徴収切替届出
これらは手続きを行う中で、厳しくチェックされる項目なので注意しておきましょう。
要件②:専任技術者の要件をクリアする方法
2つ目の要件は、営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
<一般建設業許可の専任技術者の要件>
以下のいずれかの要件を満たす者が専任技術者になることができます。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
経営業務の管理責任者に次いで専任技術者もハードルが高いです。
実務経験の証明書類を揃えることができない場合の対処方法を解説します。
10年以上の実務経験はあるけど、証明書類がない時
10年以上の実務経験を証明するためには、経験を積んだ会社での専門工事に関する「請負契約書」、「注文書・請書」、「請求書+入金記録」等を用意する必要があります。
以前勤めていた会社で10年以上の実務経験があるものの、請負契約書、注文書・請書、請求書+入金記録といった証明書類のコピーを用意してもらうのは難しいかもしれません。
以前勤めていた会社が許可業者であれば、許可通知書で証明することができます。関係性によっては許可通知書のコピーをもらうことは難しいかもしれませんが、先ほどと同じように東京都や神奈川県の場合は、主たる営業所の住所・代表取締役を伝えるだけで、いつからいつまで許可を取得していたか教えてくれる場合があります。また大阪の場合は行政文書の開示請求をすることで同様に許可状況が記載された文書(黒台帳と呼ばれています)を手に入れることができます。
以前の会社で役員でもない限り「請負契約書」、「注文書・請書」、「請求書+入金記録」を用意するのはかなりハードルが高いですが、しかし、建設業を専門にしている行政書士であれば、さまざまな経験から糸口を見つけられるかもしれませんので、諦めずにまずは相談をしながら進めていくべきでしょう。
施工管理技士補の活用
10年間以上の実務経験を積むのもそれを証明するのもかなり大変です。そのため、施工管理技士補を取得することにより、実務経験を5年もしくは3年に短縮できる制度を利用することも1つの方法です。
令和3年度より、施工管理技士補の制度が創設されました。それにより、施工管理技士試験の名称が変更になり、今までの学科試験が第1次検定・実技試験が第2次検定となり、第1次検定合格後に「施工管理技士補」の称号を取得可能となりました。
また、令和6年度より第1次検定受検における学歴や実務経験の制限がなくなり、いままで受検資格の無かった学生の方や建設業の実務経験が全くない方でも、第1次検定を受験することができるようになりました!
合格した場合は専任の技術者になるための要件である実務経験が10年→3年又は5年に短縮することができるので、専任技術者の要件をクリアできる可能性がぐんと上がります。
とび・土工工事業であれば登録土工基幹技能者の講習受講を狙う!
実務経験を証明できないとなると資格を取るしかないわけですが、施工管理技士の試験や技能検定試験はハードルが高く感じるかもしれません。
実はとび・土工工事業であれば、講習を受講することで専任技術者になる方法があります。
「登録土工基幹技能者講習」という技能講習を受ける(修了テストはあります)ことで専任技術者の資格を得ることができます。
この技能講習の受講資格は10年以上の実務経験と3年以上の職長経験(契約書、注文書等の証明書類は不要)と以下の1~13のうち2つ以上を修了しているか、14を修了しているかで足ります。
⑨~⑬あたりはすでに修了している方も多いのではないでしょうか。
<2つ以上を修了していることが条件>
- 地山の掘削作業主任者技能講習
- 土止め支保工作業主任者技能講習
- 型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習
- 足場の組立て等作業主任者技能講習
- コンクリート破砕器作業主任者技能講習
- はい作業主任者技能講習
- 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
- 不整地運搬車運転技能講習
- 高所作業者運転技能講習
- フォークリフト運転技能講習
- 小型移動式クレーン運転技能講習
- 玉掛け技能講習
- ガス溶接技能講習
<1つの修了で大丈夫>
14.地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講
講習は2日間で計600分、修了テストは60分、年に2回開催されています。
②8年の実務経験ならある場合(実務経験の緩和措置)
許可を受けようとする業種と技術的な共通性がある業種での実務経験がある場合、許可を受ける業種に必要な実務経験年数が8年に緩和されます。
どのような場合に緩和されるかというと、申請業種について8年をこえる実務経験と、技術的な共通性がある業種での実務経験が合計して12年以上であれば、申請業種の実務経験は10年に満たなくても専任技術者となれます。
ただし、実務経験の緩和が認められる業種と、その業種と技術的な共通性があるとされる業種の組み合わせは決まっています。
(1)土木一式工事の経験と、次にあげる業種のいずれかの経験が併せて12年以上あり、そのうち次にあげる業種の経験が8年を超える場合
- とび土工工事
- しゅんせつ工事
- 水道施設工事
- 解体工事
例:土木一式工事の経験4年+とび土工工事の経験8年→とび土工工事の専任技術者になれる
(2)建築一式工事の経験と、次にあげる業種のいずれかの経験が併せて12年以上あり、そのうち次にあげる業種の経験が8年を超える場合
- 大工工事
- 屋根工事
- 内装仕上工事
- ガラス工事
- 防水工事
- 熱絶縁工事
- 解体工事
例:建築一式工事の経験4年+内装仕上げ工事の経験8年→内装仕上げ工事の専任技術者になれる
(3)大工工事+内装仕上工事において、経験が併せて12年以上あり、どちらかの業種の経験が8年を超える場合
例:大工工事の経験4年+内容仕上工事の経験8年→内装仕上げ工事の専任技術者になれる
例:大工工事の経験8年+内容仕上工事の経験4年→大工工事の専任技術者になれる
(4)とび土工工事の経験と解体工事の経験が併せて12年以上あり、解体工事の経験が8年を超える場合
通常であれば実務経験が10年必要になりますが、これらに該当するときは実務経験が8年あればよいとされています。
専任技術者も常勤性も求められます
専任技術者も「経営業務の管理責任者」と同じように必ず営業所に常勤させる必要があります。
そして、その常勤性は原則、事業所名称に申請会社が記載された「健康保険証」にて証明しますが、健康保険証で証明できない方は、下記書類が必要になります。
▼健康保険&厚生年金で常勤性を証明する方法
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する標準報酬決定通知書
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
▼厚生年金関係で常勤性を証明する方法
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 資格取得届(新規に認定する者に限る)
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当届※70歳以上の新規に認定する者に限る
- 厚生年金保険70歳以上被用者該当及び標準報酬月額相当額のお知らせ
▼住民税関係で常勤性を証明する方法
- 住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)
- 住民税特別徴収切替届出※新規に認定する者に限り
▼健康保険組合関係で常勤性を証明する方法
- 資格証明書
▼法人役員の常勤性を証明する方法
- 直近決算の法人税確定申告書(役員報酬手当及び人件費等の内訳書)(年130万以上の役員報酬が確認できること)
なお、採用した直後に常勤性を証明するのは、下記3パターンしかないかなと思います。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者に関する資格取得確認及び標準報酬決定通知書
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 住民税特別徴収切替届出
これらは手続きを行う中で、厳しくチェックされる項目なので注意しておきましょう。
要件③:財産要件をクリアする方法
建設業許可を取る上であと1つ、申請者からの相談が多いのが財産要件です。
500万円の財産要件を証明する方法は次の2つの基準です。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の残高証明書を用意できるか
資本金を500万円以上しなければ財産要件を満たすことができないと思われている方が多いですが、資本金500万円=財産要件クリアではありません。
また、資本金を500万円以上にしても、財産要件を必ずしもクリアできるというわけではありません。
①自己資本が500万円以上あること
自己資本とは、簡単にいうと財産から借金を差し引きした金額(返済義務のない資金)のことです。
具体的には、直前期の決算報告書内の貸借対照表のうち、「純資産の部」の金額をいいます。資本金や資本剰余金、利益剰余金や繰越利益剰余金といった項目が並んでいると思いますが、これらの合計額が自己資本ということになります。
したがって、資本金が100万しかなくても、利益剰余金(今までの利益金)が400万円以上あれば、自己資本合計が500万以上となり、財産要件はクリアできるというわけです!
②500万円以上の残高証明書を用意できるか
自己資本が500万円以上ある場合(上の①の条件をクリアできるとき)には、次の②は検討する必要はありません。
しかし、もし500万円に満たない場合には、②500万円以上の残高証明書を用意できるかを確認する必要があります。
「残高証明書」というのは、簡単にいえば銀行に500万円以上のお金があることを証明できるということです。
残高証明書は指定日にいくら預金があるかを証明する書類ですので、資金が500万円以上預けられていればスムーズに発行されますし、取引先からの入金があった際、銀行融資、一時的に役員からの借入で500万円以上にしても大丈夫です。
しかし、証明日から1か月以内の残高証明書しか使用することはできませんので、入金があるタイミングから逆算して準備しておくことが重要です。
東京都:建設業許可の申請先
東京都での建設業許可の申請先は、東京都庁になります。新規で許可を取得する場合は窓口で申請しなければなりません。
東京都都市整備局市街地建築部建設業課
(住所)東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 都庁第二本庁舎3階南側
(代表) 03-5321-1111
また東京都では、令和5年10月から電子申請システムを利用することによる電子申請での受付が可能となっていますが、電子申請での受付ができない場合として以下に該当する場合には紙による申請となります。
- 専任技術者について、5年を超える経験を示す必要がある申請・届出
- 経営業務の管理責任者について、「取締役経験5年」以外での申請・届出
特に、経営業務の管理責任者についてはより詳細な確認が必要となるため、「取締役経験5年」「元経営管理業務の責任者であることを建設業許可の副本等で確認できる場合」以外は窓口での受付が必要となります。
東京都知事許可の場合=窓口審査
担当の審査官が申請書の内容を一点ずつチェックし、要件を満たしているかどうかを厳密に審査します。
必要書類の不足や、申請書の内容に不備があれば、一切受け付けてもらえません。何度も都庁へ足を運ぶことにならないように、書類の正確性には気をつけましょう。
(※都庁相談コーナーで予備審査をパスしても、窓口審査がパスできない場合が多いので、注意が必要です。)
窓口審査が無事通過すれば、申請手数料を納付し、受付となります。
東京都知事許可の審査期間
東京都知事許可の場合、審査期間は25日(土日祝を除く)になります。審査が完了したら、許可通知書が郵送にて営業所に届きます。
建設業許可に必要な書類一覧
建設業許可を行う場合、様々な申請書類を作成し、必要資料を集めなくてはいけません。
以下、3つに分けてみてみましょう。
- 建設業許可の申請書類
- 建設業許可に必要な添付書類
- 確認、裏付けが必要な資料
こちらに記載した必要書類は一般的なケースを元に作成しています。許可を取得する業種や、会社の状況によって変わってきますので、事前に行政書士等の専門家に相談されるのが安全です。
では、建設業許可の申請時に必要書類を確認してみましょう!
建設業許可の申請書類
申請するときは、申請書一式を作成し、行政の窓口へ持ち込む必要があります。許可を取得する業種や、会社の状況によって変わってきます。
建設業許可の申請書類 | 様式番号 |
---|---|
建設業許可書 | 第1号 |
役員の一覧表 ※法人のみ | 別紙1 |
営業所一覧表 | 別紙2(1) |
直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 第3号 |
使用人数 | 第4号 |
誓約書 | 第6号 |
経営業務の管理責任者証明書 | 第7号 |
健康保険等の加入状況 | 第7号の3 |
専任技術者証明書 | 第8号 |
実務経験証明書 ※専任技術者を実務経験で申請する場合に必要 | 第9号 |
指導監督的実務経験証明書 ※特定建設業で専任技術者を実務経験で申請する場合に必要 | 第10号 |
令第3条に規定する使用人の一覧表 ※本社以外の営業所があり、その営業所に支店長など請負契約について一定の権限を有する人がいる場合に必要 | 第11号 |
許可申請者の調書 ※本人・法人の役員全員分(監査役は除く) | 第12号 |
令第3条に規定する使用人の調書 ※本社以外の営業所があり、その営業所に支店長など請負契約について一定の権限を有する人がいる場合に必要 | 第13号 |
株主(出資者)調書 ※法人のみ | 第14号 |
財務諸表 ※直前1年分 | <法人の場合> 第15号・第16号・第17号・第17号の2 <個人の場合> 第18号・第19号 |
営業の沿革 | 第20号 |
所属建設業者団体 | 第20号の2 |
主要取引金融機関名 | 第20号の3 |
建設業許可に必要な添付書類
許可申請書には、とても多くの書類を添付しなくてはなりません。ここでは法定書類等、添付資料のご説明をさせていただきます。取得できる場所も記載しておりますので、参考にしてみてください。
建設業許可に必要な添付書類 | 取得できる場所 |
---|---|
商業登記簿謄本又は履歴事項全部証明書 ※直近3か月以内 | 法務局 |
納税証明書 法人:法人事業税 個人:個人事業税 | 県税事務所 |
法人:法人設立届 個人:個人事業開業届出書 ※創業してから一度も決算期に到来しておらず、上記納税証明書が添付できない場合に必要 | 会社保管書類 |
残高証明書(500万円以上) ※財務諸表で自己資本が500万円未満の場合は必要 | 主要取引銀行 |
登記されていないことの証明書 ※本人・役員・令3条に規定する使用人分が必要 | 法務局 |
身分証明書 ※本人・役員・令3条に規定する使用人分が必要 | 本籍地を管轄する市区町村役所 |
定款(写) ※法人のみ | 上記納税証明書が添付できない場合に必要 会社保管書類 |
確認、裏付けが必要な資料
「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」については、要件が設定されていますので、その要件を満たしていることが証明できる裏付け資料が必要です。 加えて、営業所の状況を確認するための資料を用意する必要もあります。
なお、確認・裏付け書類は、一般的な証明書類を記載しています。
確認、裏付けが必要な資料 | 確認・証明書類の例 |
---|---|
経営業務の管理責任者の「常勤性」 | ①健康保険証 ※事業所名の記載されているものに限る ②直近の住民税特別徴収税額通知書 ③その他、常勤を証明できる書類 |
経営業務の管理責任者の「経験期間」 | 法人:商業登記簿謄本又は履歴事項全部証明書 個人:所得税確定申告書の写し |
経営業務の管理責任者の「建設業に係る経営業務を行っていたことの裏付け」 | 許可通知書や工事請負契約書、注文書、請求書等 |
専任技術者の「常勤性」 | ①健康保険証 ※事業所名の記載されているものに限る ②直近の住民税特別徴収税額通知書 ③その他、常勤を証明できる書類 |
専任技術者の「実務経験期間」 ※実務経験期間で申請する場合のみ必要。 | 許可通知書や工事請負契約書、注文書、請求書等 |
専任技術者の「資格」 ※資格で申請する場合のみ。 | 資格者証 |
令3条に規定する使用人の常勤の確認書類 | ①健康保険証 ※事業所名の記載されているものに限る ②直近の住民税特別徴収税額通知書(原本) ③その他、常勤を証明できる書類 |
営業所の確認書類 | 営業所の写真 |
社会保険の加入書類 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の領収書等 |
行政書士に依頼するメリット
建設業の許可申請で必要な書類については、必要となる書類が多岐にわたり、書類取得のための申請先も様々なのでとても手間が掛かります。
初めて申請する書類に関しては、申請の方法や申請先、申請に必要な添付書類や必要となる手数料をそれぞれ申請書類ごとに調べていく必要があります。
例えば、添付書類の一つである「身分証明書」については本籍地の各市区町村の戸籍課にて取得します。本籍地が不明であれば、本籍地の確認のために本籍地の記載のある住民票の取得をする必要があります。
さらに、本籍地が遠方のために郵送申請する場合は、郵送申請のための準備が必要となります。
「登記されていないことの証明書」は、東京法務局の後見登録課もしくは各都道府県の本局の戸籍課窓口で取得することができます。本局の戸籍課は各県に1カ所しかなく、支局・出張所での取得はできません。
また申請時点での作成期限が求められる書類もあるので、取得のタイミングも重要ですし、慣れない書類の収集は想像以上に時間と手間が掛かります。
専門性と実務経験が豊富な行政書士に依頼すれば、建設業許可の書類作成から取得までの期間が大幅に削減することができるので、結果的に自分で申請するより早く許可を取得することができます。
東京都は建設業許可の審査が厳しい
基本的な許可要件は他の自治体と同じですが、確認、裏付けが必要な資料が異なってきます。
特に東京都の場合は、「経営業務の管理責任者」「専任技術者」の経営経験や実務経験を確認する書類をかなり細かい部分まで確認されます。
1都3県で比較すると、東京都が一番厳しいといえます。東京都の建設業許可取得をスムーズに取得したいとお考えの方は、是非経験豊富な行政書士事務所へ依頼してみましょう。
東京都で建設業許可を取得する方法:まとめ
建設業許可の要件をクリアするための裏ワザ的対処方法をいくつかご紹介しましたが、過去・現在の状況によって他にも様々な方法が考えられます。
裏ワザと言うと、過去の経験をでっちあげるような勘違いをされそうですが、実際は手引き記載されていないだけで、経験があればいくつも対処方法があるうちの1つのことなのです。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。