建設業許可を取得しても、何らかの理由によって取り消されてしまうことがあります。
ただし、建設業許可が取り消される場合にもいくつかの理由があるため、すぐに再取得できることもありますし、一度取り消されてしまうと、その後一定期間をおかなければ再取得できない場合もあります。
ここでは、そのように建設業許可が取り消される理由や、その後の再取得について解説していきます。
建設業許可の取り消し後にすぐ再取得できるケース
建設業許可を取得する際には、多くの要件をクリアしなければなりません。また、その建設業許可を維持するためにも、その要件を引き続き維持しなければなりません。例えば、「経営の責任者:経営業務の管理責任者」や「技術の責任者:専任技術者」です。
それぞれの責任者が急に退職してしまい退職時点で代わりの責任者が不在の場合は、建設業許可が維持できないことになってしまいます。
そのような場合、せっかく取得した建設業許可が取り消されることがあるのです。
このような取り消しのことを「手続き上の許可の取り消し」と呼びます。
「手続き上の許可の取り消し」とは
手続き上の許可の取り消しは、法令違反などがあったことにより許可取り消しとは違い、建設業許可の条件を維持できなくなった場合に建設業許可が取り消されることを言います。
建設業許可を取得する際に付された条件を維持できなくなったため、いったん建設業者名簿から削除されるというイメージです。
何かのペナルティとして建設業許可が取り消されるわけではないため、このように呼ばれます。
手続き上の許可の取り消しの具体例
具体的に、手続き上の許可になる具体例を見てみましょう。
▼手続き上の許可の取り消しになる具体例
- 建設業許可に付された条件に違反した場合
- 経営業務の管理責任者の要件を欠いた場合
- 専任技術者の要件を欠いた場合
- 欠格要件に該当した場合
- 許可を受けてから1年以内に営業を開始しなかった場合
- 許可を受けてから1年以上引き続き営業を休止した場合
- 廃業届を提出した場合
5や6については、建設業法に規定があるため、このような説明がされていますが、単純に1年以上売上がゼロだから取り消されるというわけではなく、営業活動を行っていれば問題はありません。
7の廃業届とは、建設業許可を受けている事業者が、その要件を満たさなくなった際に提出するものです。
つまり、廃業届を提出する時点で何らかの事情により、建設業許可を維持できなくなっていると考えられます。
建設業許可の廃止時の対応
建設業許可を受けていた会社の「経営の責任者:経営業務の管理責任者」や「技術の責任者:専任技術者」が急に退職してしまい退職時点で代わりの責任者が不在の場合は、建設業許可が維持できないことになってしまいます。
このような場合は、廃業届の提出義務があります。
廃業届は、建設業許可の取り消しを受けるために提出するものなのです。
建設業許可の取り消し後すぐに再取得できないケース
建設業を営む中で、会社やその会社の役員などが重大な違反をしてしまう場合があります。このような場合、建設業法に違反したことに対するペナルティが科されることとなります。
その結果、取得している建設業許可が取り消されることとなるのです。このような建設業許可の取り消しのことを、「不利益処分の取り消し」と呼びます。
「不利益処分の取り消し」とは
不利益処分とは、行政庁の権限により特定の人や法人の許認可を取り消したり、罰金命令を出したりすることです。
通常、行政庁は何の理由もなしに人や法人の権利に制限を加えたり、義務を課したりすることはできませんが、何らかの違反行為を行った場合には、その権利を制限することが監督官庁によって行われることになります。
不利益処分の取り消しの具体例
具体的に、不利益処分の取り消しを受けるのか具体例を見てみましょう。
▼不利益処分の取り消しになる具体例
- 不正の手段により新規・更新の建設業許可を受けた場合
- 許可行政庁の指示処分にあたる違反を行って情状が特に重い場合
- 許可行政庁の営業停止に違反して営業活動をした場合
(1)は、建設業許可を申請した際に虚偽の申請を行うなど、不正に建設業許可を取得した場合です。
後ほど紹介する欠格要件にも関係する重大な違反であり、この事実が発覚すれば建設業許可は取り消されます。
(2)にある指示処分とは、建設業者に建設業法違反が認められた場合、行政庁から違反した建設業者に出される指示をいいます。たとえば、建設業許可を受けていない事業者と、500万円以上の下請け契約を締結した場合があります。
このような違反行為を行った場合、通常は国土交通大臣や都道府県知事から適切な対応を行うように指示処分が出されます。なお、特に情状が重い場合には、建設業許可が取り消されてしまう場合があるのです。
(3)の内容は、営業停止処分を受けることが前提となっています。
建設業許可を受けた事業者が指示処分を受けても従わない場合、営業停止処分を受けることとなります。その期間内は営業の全部または一部を停止しなければなりません。
しかし、この営業停止処分に違反して期間内に営業活動をしてしまうと、建設業許可が取り消されることとなるのです。
不利益処分の取り消しによる影響
不利益処分の取り消しにより建設業許可が取り消されると、その後5年間は建設業許可を取得することができなくなります。
違反行為の対象となる人は、代表者本人だけではありません。役員については全員が対象となるほか、使用人にも対象になる人はいます。
さらに、株主の中にも対象になる人がいます。
そのため、建設業許可を維持するためには、このような人選に細心の注意を払う必要があるのです。
建設業許可の欠格要件
建設業許可を取得する際には、いくつもの条件があります。
その条件の中に、欠格要件に該当しないことがあります。欠格要件とは、建設業許可を申請しても、形式的に認められないことをいいます。
欠格要件について、建築業法第7条で規定されている内容を抜粋すると次の通りです。
- 破産者で復権を得ないもの
- 建設業の許可又を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 建設業の許可の取消しの通知があった日から当該処分に関わる決定があった日までの間に5年を経過しないもの
- 前号に規定する期間内に届出があった場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等や使用人であった者等で、当該届出の日から5年を経過しないもの
- 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 許可を受けようとする建設業について営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
上記内容は大きく2つに分けることができます。
1つは提出書類の内容に関するものです。
事実と異なる内容を記載して建設業許可の申請を行った場合や、重要な事項の記載漏れがあった場合が該当します。この場合、事実を隠ぺいする意図がある場合はもちろんですが、単なる記載漏れや記載忘れでも、欠格要件に該当するのです。
もう1つは人に関するものです。
過去に建設業の不正取得に関わったことがある人や、禁固以上の刑に処された人などがこの要件に該当する可能性があります。欠格要件に該当する場合、建設業許可を受けることができません。
また、書類の欠格要件に該当する場合は、その時に在籍していたすべての役員が、その後欠格要件に該当することとなります。
その結果、法人として建設業許可を受けることが非常に難しくなることがあるのです。
取り消し後すぐに再取得方法:まとめ
建設業許可を取得しても、その後の状況によっては、その建設業許可が取り消されてしまう場合があります。建設業許可が取り消されると、すぐに建設業許可を再取得できる場合もあれば、5年間取得できない場合もあります。
コンプライアンスがとても重要な時代ですので、違反による建設業許可を取り消されないように、法令順守を徹底することが大切です。