建設業は、国民の生活インフラを支える重要な役割を担う業界です。
そのため、建設や建築には工程を適切に管理できる人材が必須ですが、それを証明できる国家資格の一つが建築士です。
建築士は主に設計業務を行うことが多いですが、建設業許可において専任技術者になることができます!
そのため、建築士の国家資格があると建設業許可を取得しやすくなることはもちろんです。
また、すでに取得している建設業許可の業種を増やすことが可能になります。
このページでは、建築士がどのような業種の建設業許可を取得できるか紹介していきます!
建設業許可を取得するための要件について
まず初めに建設業の許可を申請する際に、必ず下記の要件をクリアしておかなければ許可はおりません。
- 経営業務に関わる方の中に、経営業務管理責任者を置く必要がある
- 工事に関わる契約を結び、見積もりを行う営業所を設置する
- 許可を受けたい業種の専任技術者を配置する必要がある
- 財産的信用の基準を満たしている
- 欠格事由に該当していないこと
これらの要件は、内容も複雑で厳しい条件などが含まれます。
この中で、今回のテーマに関わりのある3.の専任技術者についてご説明します。
【許可を受けたい業種の専任技術者を配置する必要がある】
営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なりますが、一般建設業の場合は常勤している従業員のうちつぎの4つのいづれかの要件を満たす必要があります。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
そこで建築士は国家資格なので、1.の条件に該当します。
建築士にはいくつか種類がある?
建築士は、「建築士法」に定められた資格をもって、建物の設計・工事監理を行う建築のプロフェッショナルです。
試験に合格した者は、国土交通大臣もしくは都道府県知事から技術検定合格証明書が交付され「建築士」の称号が与えられます。
建築士の資格は下記のよう書類が分かれています。
▼建築士の種類
- 1級建築士
- 2級建築士
- 木造建築士
一級建築士は、学校、病院、劇場、公会堂、集会場などの施設で、延べ面積が500m2以上ある建造物、高さが13mもしくは軒の高さが9m以上の建造物など大規模な建造物まで、設計する建物に制限なく設計することができます。
二級建築士は、高さ13mかつ軒の高さが9m以下、2・3階では延べ面積1,000m2以下の木造建造物、高さ13mかつ軒の高さが9m以下、延べ面積30~300m2以内の鉄筋コンクリート、鉄骨等の建造物、500m2以下の学校、病院、劇場、百貨店などの公共建築物の設計をすることができます。二級建築士は、所定の高さ、面積を超えなければ、さまざまな種類の建設に携わることができますが、主に住宅の設計を想定した資格です。
木造建築士は、延べ面積が300m2以内、かつ2階以下の木造建築物について、設計、工事管理をすることができます。
それでは、1級建築士・2級建築士・木造建築士がどの業種の建設業許可を取得できるのか見ていきましょう!
1級建築士
1級建築士を持っていると、次の業種の建設業許可を取ることができます。
- 建築工事業(建築一式工事)
- 大工工事業
- 屋根工事業
- タイルレンガブロック工事業
- 鋼構造物工事業
- 内装仕上げ工事業
このように6つの業種をいっきに取得することができます。
2級建築士
2級建築士を持っていると、次の業種の建設業許可を取ることができます。
- 建築工事業(建築一式工事)
- 大工工事業
- 屋根工事業
- タイルレンガブロック工事業
- 内装仕上げ工事業
1級建築士ほどではないですが、主に造作工事やリフォーム工事をメインにする建設業者におすすめの資格です。
木造建築士
木造建築士を持っていると、次の業種の建設業許可を取ることができます。
- 大工工事業
主に木造建築士ですので木工事や造作工事やメインにする建設業者におすすめの資格です。
建築士の種類によって取得できる業種が違います!
このように資格の種類で、許可を取得できる業種が異なります。
自社がどのような専門工事を行っているのか、どこに該当するかを把握しておくことが大切です。
ここまで読んで、該当する資格所有者がいるので許可は取れるかな?と感じてしまいますが、この他にも最初にご説明しました満たすべき要件があるので、1つずつクリアしているかを確認してから、許可の手続きを進めていきましょう。
また該当する業種が多い、1級建築士や2級建築士の資格を持っていると、1人で複数の業種の専任技術者として兼任することも可能です。
専任技術者の配置する場合の注意する点
専任の技術者を置く場合に、下記の項目に注意する必要があります。
・必ず常勤であること
・社会保険に加入しておくこと(雇用保険・健康保険・厚生年金全て)
・他の会社で、専任技術者として登録していないこと(同一企業でないと兼任は認められません)
・資格を持っている証拠として“合格証”が手元にあるか
これらは手続きを行う中で、厳しくチェックされる項目なので注意しておきましょう。
建築士事務所(設計事務所)としても業務を行うことができる!
設計業務を請け負う場合は、建設業許可とは別にあらかじめ事務所を設置する場所の都道府県知事に対して、建築士事務所としての登録手続きを行わなければなりません。
▼建築士事務所として登録が必要な業務
- 建築物の設計
- 建築物の工事監理
- 建築工事契約に関する事務
- 建築工事の指導監督
- 建築物に関する調査または鑑定
- 建築に関する法令または条例に基づく手続きの代理
建設業許可は「建設工事の請負および施工」を行うのに必要な許可で、建築士事務所登録は「建築物の設計・監理」を行うのに必要な登録ですので、必要とされる業務が異なっています。
建築士事務所登録と建設業許可の両方を取得していれば、設計から施工まで自社で行えるといったメリットもありますので、建築士の資格で建設業許可を取得する場合は、建築士事務所の登録もぜひご検討ください。
建築士で建設業許可を取得する場合のまとめ
今回は、建築士がどのような業種の建設業許可を取得できるかというテーマでご紹介しました。
1級・2級かかわらず建築士の資格は、10年間の実務経験を証明することなく複数の業種で専任技術者になることができるので、建築系の工事を幅広く行う事業者様にとっては、かなり便利な資格です。
しかし、建設業許可は専任技術者以外にも様々な要件をクリアする必要があり、申請するためにも作成する書類は膨大です。
なるべく早く許可が必要な方は、自社で行うより、行政書士等の専門家に相談して進める方が結果的に早く許可を取得することができるでしょう。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。