電気工事業の許可を取得しよう!自社施工の注意点も合わせて解説

建設業手法に基づく許可業種は29に分かれており、それぞれに許可申請が必要です。

それだけでなく、各々の業種に関しては別の法令により許可・届け出を求められる場合があります。

電気工事業も、その1つです。

建設業許可業者が電気工事を請け負い、なおかつ自社で施工するのに必要な条件について、行政手続きや要資格者を中心に解説します。

電気工事業とは

電気工事業種がカバーする工事範囲は、発電設備・送配電線・引込線・変電設備・構内電気設備(非常用電源を含む)、照明設備・電車線・信号設備・ネオン装置とされています。

ちなみにエアコンなどの取り付けは、「冷暖房設備設置」として「管工事」、屋根一体型ソーラーパネルは「屋根工事」、ケーブルTVやLAN配線の設置は「有線または無線の電気通信設備設置」として電気通信工事の業種許可が求められます。この辺りは紛らわしいので、注意が必要です。

逆に言えば、こうした周辺業種の許可も取得しておけばより幅広い工事の請負が可能なわけです。

電気工事に含まれる工事の特徴や具体例をご紹介します。

電気工事の基本的な仕事内容3種

電気工事では、変電所や鉄塔、電柱などを経た電気をビルや住宅などの施設へ通し、使えるようにします。建設や建物に関わる工事です。いわゆる「強電工事」と呼ばれます。

【電気工事の例】

  • 発電設備
  • 変電設備
  • 送配電設備

身近な例としては、照明器具やコンセントの移設や増設があります。また、「鉄道電気工事」という鉄道に関わる工事もあります。

電気工事士の資格には種類があるため一概には言えませんが、電気工事では電気通信工事よりも大きな電力を扱えるのが特徴です。

電気工事業の一般建設業許可要件とは?

建設業許可(防水工事業)を受けるためには、以下の6つの要件をクリアしなければなりません。

①経営業務の管理責任者がいること

1つ目の要件は、営業所(本店)に常勤する経営業務の管理責任者がいることです。
経営業務の管理責任者とは、現在、(1)もしくは(2)の立場にある人で、

建設業を営む会社の役員(取締役)、個人事業主または令3条の使用人(建設業許可業者の支店長)として『5年以上』の経験があることが求めらます。

(1)法人で許可を受ける場合

許可を受ける法人の常勤の役員(代表取締役・取締役)

(2)個人で許可を受ける場合

事業主本人または支配人登記した支配人

(例)
・建設会社の取締役として5年以上の経験がある。
・個人事業主として5年以上の経験がある。
・建設業許可を取得している建設業者の令3条の使用人(支店長)として5年以上の経験がある。

②専任技術者が営業所ごとにいること

2つ目の要件は、営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なりますが、一般建設業の場合は常勤している従業員のうちつぎの2つのいづれかの要件を満たす必要があります。電気工事については実務経験のみでは専任技術者にはなれない点が特徴です。

  1. 定められた国家資格を持っている
  2. 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある

それぞれ紹介していきます!

1.定められた国家資格を持っている

  • 一級電気工事施工管理技士
  • 二級電気工事施工管理技士
  • 第一種電気工事士
  • 技術士

2.定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある

<資格取得後、電気工事に関する3年以上の実務経験があるもの>

  • ・第二種電気工事士

<資格取得後、電気工事に関する5年以上の実務経験があるもの>

  • 電気主任技術者(一種、二種、三種)

③請負契約に関して誠実性があること

3つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人、役員、個人事業主、令3条の使用人などが請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれがないことです。

過去に不正な行為や不誠実な行為がなかったかどうかについてチェックされます。

不正な行為とは・・・請負契約の締結または履行に際して、詐欺、脅迫、横領などの法律に違反する行為

不誠実な行為とは・・・工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為

④請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること

4つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人または個人事業主が請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していることです。いわゆる財産要件です。
財産要件は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。

<一般建設業許可の財産要件>

次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 自己資本の額が500万円以上あること
    →貸借対照表の「純資産の部」の「純資産合計」の額
  2. 500万円以上の資金を調達する能力があること
    →500万円の資金調達能力は、会社に500万円以上の預金残高がある状態でその金融機関から発行された「預金残高証明書」もしくは金融機関から発行された「融資証明書」で証明することになります。

<特定建設業許可の財産要件>

次のすべての要件を満たす必要があります。

  1. 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  2. 流動比率が75%以上あること
  3. 資本金が2,000万円以上あること
  4. 自己資本が4,000万円以上あること

⑤欠格要件に該当しないこと

5つ目の要件は、建設業許可を受けようとする者(法人の役員、事業主本人等)が、以下の欠格要件に該当しないことです。

  1. 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
  2. 不正な手段で許可を受けたことなどにより、その許可を取り消されてから5年を経過しない者
  3. 許可の取り消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
  4. 請負契約に関して不誠実な行為をしたことなどにより、営業の停止を命じられ、その期間が経過していない者
  5. 禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
  6. 建設業法、建築基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、 又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

⑥社会保険に加入している

令和2年10月の法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。

すべての建設業を営む者が建設業許可の申請をする際、適切な社会保険に加入しているかを確認されます。

この建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。

法律上加入義務があるこれらの保険に加入していないと、すでに許可を取得している許可業者さまも更新ができなくなってしまいます。

電気工事業の施工に必要な手続き

建設業法に基づく電気工事業の許可を受ければ請負は可能ですが、それだけでは自社による施工はできません。

施工のためには、電気工事業法に基づく電気工事業としての登録が必要です。ただし建設業者については、既に建設業法の許可を受けていることから届け出(自家用電気工作物のみ取り扱う場合は通知)で足りることとされています。これをみなし登録と呼んでいます。

届け出先

同一都道府県内に営業所を都道府県庁(東京都の場合は環境局)、営業所が複数にまたがる場合は経産省の保安監督部または商務情報政策局に届け出ます。

主任電気工事士の配置

電気工事施工業者は、営業所ごとに有資格者(第1種電気工事士の免状を取得している者もしくは第2種電気工事士の資格を取得し、かつ取得後3年以上実務経験を有する者)を主任電気工事士として配置しなければなりません。

電気工事の施工は電気工事士等の有資格者以外が従事することを禁止しています。

ただし、以下の「軽微な工事」に関しては、有資格者以外の従事も認められています。

  • 地中電線用の暗渠又は管を設置する工事
  • 火災探知機・インターホン等に使用する小型変圧器(36V以下)の2次配線側工事
  • 電柱・腕木その他電線を支える構築物の設置工事
  • 電圧600V以下で使用するヒューズ・電流整流計・電力量計の取り付け・取り外し
  • 電圧600V以下で使用するソケット・ローゼット・ねじ込み接続器・差し込み接続器等を設置する工事
  • 電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具以外)又は蓄電池の端子に電線をねじ止めする工事

ちなみに標準的なエアコン配置作業も、軽微な作業に該当します。

器具の設置

電気工事を施工する者は、次の器具を営業所ごとに設置しなければなりません。

絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗及び交流電圧を測定する回路計

自家用電気工事を施工する場合は、上記に加え低圧・高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置の設置が必要です。

まとめ

電気工事業の建設業許可を取得しても、施工する場合には電気工事業法に基づく届け出が必要になります。どちらもかなり複雑な要件がありますので、一度行政庁や専門家へご相談いただくのがよいかと思います。

手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。