建設業許可を取得する際には、さまざま要件をクリアする必要があります。
その中でも、ハードルが高いと言われている要件の1つが「専任の技術者」の選任です。もし、第2種電気工事士で「専任の技術者」をクリアしようと思っている方は注意が必要かもしれません。
このページでは、第2種電気工事士を専任技術者に選任し電気工事業の建設業許可を取得する方法をご紹介します。
一般的に専任の技術者の求められる要件とは?
専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なりますが、一般建設業の場合は常勤している従業員のうちつぎの4つのいづれかの要件を満たす必要があります。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
しかし、電気工事業の建設業許可を取得する場合、上記の一般論が当てはまらないケースがあります。
電気工事業の専任技術者になるためには?
まず、電気工事業は29業種の中でもかなり特殊な要件があり、「指定学科が定められていない」「10年の実務経験を証明しても専任技術者になることができない」といった点があります。
一般的には、「建築学科などの指定学科を卒業して一定の実務経験」や「10年間の実務経験」を証明すれば、専任技術者の要件を満たしますが、電気工事の場合は特殊な取扱がされています。
そのため、電気工事業の建設業許可を取得するための「専任の技術者」要件はこのようになります。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
そのため、電気工事業の場合、無資格者が実務経験を10年積んでも、20年積んでも、専任技術者になることができません。
第二種電気工事士は3年以上の実務経験が必要
「第1種電気工事士」や「電気工事施工管理技士」の場合は、実務経験の証明なくして建設業許可を取得する際の専任技術者になることができますが、「第2種電気工事士」の場合、資格を持っているだけではダメで、免許交付後3年以上の実務経験を証明する必要があります。
免許交付後3年以上の実務経験を証明しなければ、建設業許可を取得するための「専任技術者」になることができません。
第2種電気工事士の資格を持っている人は、第1種電気工事士や電気施工管理技士の資格を持っている人に比べて、多いと思いますが、第2種電気工事士の場合、電気工事士の資格を持っているにも関わらず、電気工事士の免許交付後3年以上の実務経験の証明が必要という点に注意をしなければなりません。
実務経験を積んだ会社が電気工事業登録を受けている必要がある
最後に、電気工事の実務経験を証明するには、電気工事業の登録をしている会社もしくは個人事業主での勤務経験であることが必要です。
電気工事業は登録制となっており、電気工事業を営むには「経済産業大臣」もしくは「都道府県知事」の登録を受けなければなりません。
つまり、登録を受けずに電気工事業を営むことは違法です。この違法営業中の実務経験は使用することはできません。そのため第2種電気工事士が専任技術者になるために必要な免許交付後3年の実務経験は、「電気工事業の登録を受けている法人または個人事業主での実務経験」というような限定的な解釈がなされるのです。
よくあるのが、電気工事業登録を受けていない会社からの相談で「3年前に第2種電気工事の資格を取得した社員がいるのたけど…」といったお問合せです。
この場合、資格を取得後、3年間建設業に関する何かしらの実務経験を積んでいるかもしれませんが、電気工事については、電気工事業登録を受けていない以上、電気工事についての実務経験は証明することができません。
そのため、いくら「第2種電気工事の資格を持っている社員がいる」としても、その社員を専任技術者にして電気工事業の建設業許可を取得することはできないのです。
第2種電気工事士の3年間の実務経験を証明する方法
ここまでで、電気工事業の建設業許可を取得する場合は、専任技術者の要件が特殊であることを紹介してきました。
そこで、3年間の実務経験についてよく相談をうけるのはこの2つのパターンに分かれます。
- 電気工事業の建設業許可のある業者で3年以上実務経験を積んだ場合
- 電気工事業の建設業許可はないが電気工事業登録のある業者で3年以上実務経験を積んだ場合
①電気工事業の建設業許可のある業者で3年以上実務経験を積んだ場合
許可がある業者での経験の場合は、基本的には、許可通知書を用意するだけで証明できます。
しかし、電気工事業の場合は建設業許可を有していても電気工事業登録は必要ですので、その実務経験を有していた期間、電気工事業登録を受けていたかの証明する必要があります。
▼電気工事業登録を受けていたかの証明方法
- 電気工事業開始届出書のコピー
- 電気工事業届出済証明書のコピー
しかし、電気工事業の建設業許可を取得かつ電気工事業登録を受けている他社での3年以上の実務経験を有しているものの、協力を得ることができないということはよくあります。
建設業許可の場合は、まずはその会社がどこの都道府県で許可を取得していたかを確認しましょう。東京都や神奈川県の場合は、行政に「会社名」「営業所の住所」「当時の代表取締役」を伝えるだけで、いつからいつまで許可を取得していたか教えてくれる場合があります。また大阪の場合は行政文書の開示請求をすることで許可状況が記載された文書(黒台帳と呼ばれています)を手に入れることができます。
しかし、電気工事登録を受けていたから確認は、前職に協力していただく必要があります。当時の取引先と関係性が続いているのであれば、そこからクリアの糸口を見つけていくことも方法です。
諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
②電気工事業の建設業許可はないが電気工事業登録のある業者で3年以上実務経験を積んだ場合
建設業許可を取得していない会社での経験の場合は、ハードルがかなり高くなります。
まず、電気工事の実務経験を3年間証明するためには、その会社での電気工事に関する請負契約書、注文書+請書、請求書+入金記録といった証明書類が必要になります。
また、その期間電気工事業登録を受けていることも必要になりますので、その期間分の電気工事業登録証を用意する必要があります。
建設業許可を有していない場合の電気工事業登録については、その会社がどこの都道府県で登録を受けていたか確認をしましょう。東京都の場合は、行政に「会社名」「営業所の住所」「当時の代表取締役」を伝えるだけで、いつからいつまで登録を取得していたか教えてくれる場合があります。
工事を行っていたかの証明は、当時の会社に協力を依頼することしかできないので、かなりハードルは高くなりますが、当時の取引先と関係性が続いているのであれば、そこからクリアの糸口を見つけていくことも方法です。
諦めずにまずは行政書士等の専門家に相談をしながら進めていくべきでしょう。
第2種電気工事士で電気工事業の建設業許可を取得する方法:まとめ
電気工事業の建設業許可はほかの工事業と比べ特殊性から許可ハードルが高くなります。
そのため、まず専任技術者の要件をどの資格でクリアするのかを検討する必要があります。
第2種電気工事士あれば、実務経験がきちんとあるのか。もしあったとしてもそれを証明することができるのかを事前に確認しておきましょう。場合によっては、第1種電気工事士や電気工事施工管理士をリクルートする必要もあるかもしれません。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。