建設業の許認可の取得は、業種ごとに行われます。業種については、国交省(当時は建設省)の昭和49年に公示した考え方により分類されます。建設業許可は、一式工事2種類と専門工事27種類の計29業種に細かく分類されていて、それぞれの業種ごとに許可を取得する必要があります。
苦労して許可を受けたものの、「工事請負に必要なのは別の業種だった」なんてことにならないように、しっかり内容を把握しておきましょう。
必要な許可業種を把握しましょう!
建設業許可に関するよくある間違った認識は、一式の許可を持っていればなんでもできるという誤解です。建築一式を持っていれば内装や大工もできるとか、土木一式を持っていれば舗装や土工もできるという認識は残念ながら誤りです。
自社が施工している工事がどの業種に該当するのか、これからどの業種を伸ばしていきたいのか等をしっかり把握して、適切な許可の申請を進められるよう、以下に各業種の詳細を載せていきますのでご確認ください。
本ページでは、29業種の専門工事のうち防水工事業について詳しく紹介していきます。
防水工事業とは?
アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事を防水工事業と言います。
この区分に該当する工事の例としては次のものがあります。
例:アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事
防水工事に含まれるものは、いわゆる建築系の防水工事のみです。トンネル防水工事等の土木系の防水工事はとび・土工・コンクリート工事に該当します。
とび・土木・コンクリート工事との違い
トンネル防水工事等の土木系の防水工事はとび・土木・コンクリート工事に該当しますが、いわゆる建築系の防水工事は防水工事に該当します。
左官工事との違い
防水モルタルを用いた防水工事は、左官工事業、防水工事業どちらの業種の許可でも施工可能です。
できれば合わせて許可を取得したい工事業種
下記の業種は塗装工事と関連性の高い業種であるため、合わせて許可を取ると事業の拡大の観点において効果的です。
- 塗装工事
- とび・土木・コンクリート工事
建築一式工事業があれば防水工事業も請け負えるわけではない点に注意
建築工事業(建築一式)の建設業許可を受けていれば、管工事も金額制限なく請負えるという誤解は非常に多く見受けられます。
しかし、建築工事業の建設業許可をもって金額制限なく請負えるのはあくまで「建築一式工事」のみです。
防水工事をメインとして請負う場合は、建築工事業ではなく防水工事業の建設業許可が必要となる点に注意しましょう。
防水工事業の一般建設業許可要件とは?
建設業許可(防水工事業)を受けるためには、以下の6つの要件をクリアしなければなりません。
①経営業務の管理責任者がいること
1つ目の要件は、営業所(本店)に常勤する経営業務の管理責任者がいることです。
経営業務の管理責任者とは、現在、(1)もしくは(2)の立場にある人で、
建設業を営む会社の役員(取締役)、個人事業主または令3条の使用人(建設業許可業者の支店長)として『5年以上』の経験があることが求めらます。
(1)法人で許可を受ける場合
許可を受ける法人の常勤の役員(代表取締役・取締役)
(2)個人で許可を受ける場合
事業主本人または支配人登記した支配人
(例)
・建設会社の取締役として5年以上の経験がある。
・個人事業主として5年以上の経験がある。
・建設業許可を取得している建設業者の令3条の使用人(支店長)として5年以上の経験がある。
②専任技術者が営業所ごとにいること
2つ目の要件は、営業所(本店等)に常勤する専任技術者がいることです。専任技術者の要件は一般建設業許可と特定建設業許可で異なりますが、一般建設業の場合は常勤している従業員のうちつぎの4つのいづれかの要件を満たす必要があります。
- 定められた国家資格を持っている
- 定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
- 指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
4つについてそれぞれ紹介していきます!
1.定められた国家資格を持っている
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(種別:仕上げ)
- 一級防水施工技能士
2.定められた国家資格+資格取得後一定の実務経験がある
<資格取得後、防水工事に関する3年以上の実務経験があるもの>
- 一級土木施工管理技士
- 一級土木施工管理技士補
- 一級建築施工管理技士補
- 一級造園施工管理技士
- 一級級造園施工管理技士補
- 二級防水施工技能士
<資格取得後、防水工事に関する5年以上の実務経験があるもの>
- 二級土木施工管理技士(種別:土木)
- 二級土木施工管理技士(種別:鋼構造物塗装)
- 二級土木施工管理技士(種別:薬液注入)
- 二級土木施工管理技士補(種別:土木)
- 二級土木施工管理技士補(種別:鋼構造物塗装)
- 二級土木施工管理技士補(種別:薬液注入)
- 二級建築施工管理技士(種別:建築)
- 二級建築施工管理技士(種別:躯体)
- 二級建築施工管理技士補
- 二級造園施工管理技士
- 二級造園施工管理技士補
3.指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験がある
大学にて土木工学(土木工学、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科)、建築学に関する学科を卒業し、防水工事に関する3年以上の実務経験がある。
もしくは
高校にて土木工学(土木工学、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科)、建築学に関する学科を卒業し、防水工事に関する5年以上の実務経験がある。
4.10年以上の実務経験がある
防水工事に関する10年以上の実務経験がある。
③請負契約に関して誠実性があること
3つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人、役員、個人事業主、令3条の使用人などが請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれがないことです。
過去に不正な行為や不誠実な行為がなかったかどうかについてチェックされます。
不正な行為とは・・・請負契約の締結または履行に際して、詐欺、脅迫、横領などの法律に違反する行為
不誠実な行為とは・・・工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為
④請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
4つ目の要件は、建設業許可を受けようとする法人または個人事業主が請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していることです。いわゆる財産要件です。
財産要件は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
<一般建設業許可の財産要件>
次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 自己資本の額が500万円以上あること
→貸借対照表の「純資産の部」の「純資産合計」の額 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
→500万円の資金調達能力は、会社に500万円以上の預金残高がある状態でその金融機関から発行された「預金残高証明書」もしくは金融機関から発行された「融資証明書」で証明することになります。
<特定建設業許可の財産要件>
次のすべての要件を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上あること
- 資本金が2,000万円以上あること
- 自己資本が4,000万円以上あること
⑤欠格要件に該当しないこと
5つ目の要件は、建設業許可を受けようとする者(法人の役員、事業主本人等)が、以下の欠格要件に該当しないことです。
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けたことなどにより、その許可を取り消されてから5年を経過しない者
- 許可の取り消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
- 請負契約に関して不誠実な行為をしたことなどにより、営業の停止を命じられ、その期間が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
- 建設業法、建築基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、 又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑥社会保険に加入している
令和2年10月の法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。
すべての建設業を営む者が建設業許可の申請をする際、適切な社会保険に加入しているかを確認されます。
この建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。
法律上加入義務があるこれらの保険に加入していないと、すでに許可を取得している許可業者さまも更新ができなくなってしまいます。
まとめ
建設業の業種については、かなり複雑に分けられております。自社で施工している工事がどの業種に該当するかをきちんと把握したうえで、建設業許可を取得する必要がございます。実際に、とび土工工事業だと思っていたのが、塗装工事業だったなどもございますので、一度行政庁や専門家へご相談いただくのがよいかと思います。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。