近年、国際的な地球温暖化防止活動の流れを受けて、日本では太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を促進しています。そこで、東京都では令和7年4月から太陽光パネル設置の義務化が始まります。
今後、太陽光パネルの設置義務化の流れが全国に広がると予想されるため、義務化の対象となる自治体に住んでいる方もそうでない方も今のうちに確認しておきましょう。
このページでは、なぜ太陽光パネルの設置が義務化されるのかをご紹介します。
なぜ太陽光パネル設置を義務化するのか?
近年、温室効果ガスなどによる地球温暖化は世界的に解決すべき問題となっています。2015年に採択されたパリ協定では、国際的に温室効果ガスの削減に取り組むことが決められました。日本は2030年までに温室効果ガスを46%(2013年度比)削減することを目標にしています。
温室効果ガス削減のために、東京都をはじめとした各自治体で太陽光パネル義務化の取り組みが行われようとしています。
いつから太陽光パネルの設置が義務化されるのか?
太陽光パネル設置の義務化の開始時期や条件などは各自治体によって異なります。
基本的に太陽光パネルの設置義務はハウスメーカーや工務店などの建設業者にありますが、住宅購入者も太陽光パネルの性能や設置の説明を受けておくことが大切です。
特にこれから新しい家を建てようとお考えの方は、お住まいの地域が太陽光パネルの義務化に該当するのかを確認しておきましょう。
東京都の太陽光パネル設置義務化
東京都は2030年までに温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向けて、2025年4月から太陽光パネルの設置義務化に関する新しい制度が始まります。
東京都の太陽光パネル設置義務化の特徴
- 令和7年4月から義務化が始まる
- 延床面積2,000㎡未満の中小規模新築建物が対象
(延床面積2,000㎡以上の大規模新築建物はすでに義務化の対象) - 設置義務はハウスメーカーなどの事業者が負う
- 新築建物が対象(既存の物件は対象外)
- ハウスメーカーなどは購入者に対して設備などの説明義務がある
神奈川県横浜市の太陽光パネル設置義務化
神奈川県横浜市は2030年までに温室効果ガスの50%削減(2013年度比)を目標に掲げており、太陽光パネルの導入検討を報告する制度が2010年から始まっています。
横浜市では、延床面積2,000㎡以上の建築物を新築・増築・改築する場合、建築主(事業者)に対して太陽光パネル等の導入を検討し、検討結果を市へ報告することが義務付けられています。
神奈川県川崎市の太陽光パネル設置義務化
神奈川県川崎市は2030年までに温室効果ガスの50%削減(2013年度比)を目標に掲げており、2025年4月から太陽光パネルの設置義務化に関する制度が始まります。
神奈川県川崎市の太陽光パネルの設置義務化の特徴
- 令和7年4月から義務化が始まる
- 延床面積2,000㎡以上の建築物の新築・増築が対象
- 延床面積2,000㎡未満の建築物の新築が対象
- 設置義務は事業者が負う
- 建築士から事業者への設置の説明義務
太陽光パネル設置でこんなにメリットが!
東京都は、太陽光発電を地球温暖化抑制できる分散型の地産地消のエネルギーとして推進していますが、設置する側にとっても電気代削減や停電対策になるなど、さまざまなメリットがあります
- 電気代を節約できる
- 売電収入を得られる
- 停電しても電気が使用できる
それぞれ詳しく見ていきましょう!
①電気代を節約できる
太陽光パネルで発電した電気を自宅で使用することで、電気代高騰の影響は受けにくく、毎月の光熱費を削減することができます。
例えば、毎月電気代1万円程度の戸建住宅に4kWの太陽光発電設備を導入した場合、5割の電気を太陽光パネルの電気を使用することで、月々5,000円、年間60,000円の電気代を削減することができます。
また、東京都の場合、約98万円と見込まれる設置費用は現在の補助金(10万円/kW)を活用すると、約6年で回収できると試算できます。今後、電気代が上がれば上がるほど回収の年数は短くなっていきます。
②売電収入を得られる
太陽光パネルで発電した電気をすべて自宅で消費できるとは限りません。
しかし、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって、余った電気を電力会社に売ることが可能です。
これは、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を、地域の電力会社(例:東京電力など)が一定期間、一定価格で買い取ることを国が保証する制度です。
ただし、「一定価格」は年度によって異なります。制度の開始当初は、1kWhあたり48円でしたが、2024年には16円/kWhまで下がっており、その単価は年々下がってきております。
今後も売電単価が下がることが予想されるため、発電した電気は極力自家消費をすることを目指す方が増えております。
③停電しても電気を使うことができる
自然災害などで突然停電になった場合でも、太陽光パネルや分電盤などに破損がなければ日中は発電することが可能です。
その場合、太陽光発電設備の1つであるパワーコンディショナという機器に備わっている「自立運転機能」というものを活用しましょう。
基本的に、「自立運転機能」で使用できる電気は1,500Wまでとなります。なので、1,500W以内の家電製品のみが使用できるということになります。
ただし、太陽光が発電していない時間帯は、電気(1500W以内の家電を含む)は利用することはできないので注意が必要です。
東京都の太陽光パネル設置義務化と問題
太陽光パネルの設置義務化でメリットだけではなくデメリットもや問題点も懸念されています。
- 住宅価格が高騰してしまう
- 定期的なメンテナンスが必要
- 太陽光発電設備の設置に不向きな家も
①住宅価格が高騰してしまう
太陽光パネルの設置義務化によって、もともと価格の高い都心住宅がさらに高くなり、東京都内で住宅を買いにくくなってしまう恐れがあります。
住宅用の太陽光パネルの設置費用は、1kW当たり20万~30万円程度が相場です。そして、住宅用の太陽光パネルの容量は3~5kWが多いことから、住宅価格が60万~150万円程度の高くなってしまう計算です。
住宅と太陽光発電設備を同時に購入する場合、住宅ローンの中に太陽光発電設備費も含まれるので新たに費用を用意する必要はないですが、予算によっては太陽光パネルを設置するために別の住設設備のグレードを落とさなければならなくなる可能性があります。
なお、例えば屋根に4kWの太陽光パネルを設置した場合、年間約4000kWhの発電量を確保できると推測されます。一般家庭の平均年間電力消費量は約4573kWhなので、太陽光発電設備を導入すると、単純計算で年間8割程度の電力量を賄うことができると考えられます。
今後、電気代が高騰していくことも考えると、ローンに組み込み導入できるのは、大きなメリットと考えられるかもしれません。
②定期的なメンテナンスが必要
太陽光パネルを含む太陽光発電設備は、定期的にメンテナンスをしなければなりません。
太陽光パネル自体は故障することが少なく、寿命は20年~30年と言われています。しかし、発電設備の1つであるパワーコンディショナという機器の寿命は約10年~15年と言われています。
故障ではなく“機器や周辺設備の不具合”の可能性もあり得ます。その場合、点検時に復旧することができれば、交換は不要な場合もあります。数年に1度はメンテナンスを行い、長く稼働できるよう調整をおこないましょう。
③太陽光発電設備の設置に不向きな家も
太陽光パネルは日当たりがよい南側の屋根に設置するのがベストですが、都会では隣接するビルや住宅の距離がとても近いケースが多いです。そのため、屋根に影がかかったり、屋根が狭く太陽光パネルの設置枚数に限りがあるなど、設置に不向きな住宅もあります。
設置が義務化されることによって、こうした太陽光パネルに不向きな住宅や立地にも設置される可能性が出てきます。そうすると発電量にも差が出てきてしまうため、住宅の価格や資産価値にも影響が出る可能性があります。
対象事業者がどの建物に太陽光パネルを設置するかは、日照などの立地条件や住宅の形状などを踏まえて判断し、屋根の面積が一定規模未満の住宅などについては、太陽光パネルの設置対象から除外することも可能です。
まとめ
東京都や神奈川県川崎市では令和7年4月から太陽光パネル設置の義務化が始まります。
これは主に、ハウスメーカーや建設事業者がきちんと条例に沿った太陽光パネルを設置しなければいけません。建設業許可を取得していない業者が施工してしまうと助成金が下りない等も考えられますので、これを機に建設業許可を検討してもいいかもしれません。
なお、東京都で建設業許可を取得するには、まず東京都内にのみ建設業の営業所があり、かつ、他の都道府県には建設業の営業所を設けていないことが条件です。複数の都道府県に営業所がある場合には国土交通大臣許可が必要になってしますので、事前に営業所の場所は確認しましょう。
手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。