地位や身分に基づく居住資格は4種類あり、それぞれの在留資格に該当する外国人は以下のとおりです。住居資格では就労は制限されていませんので、日本人と同じくどんな仕事にも就くことができます。
居住資格には①永住者②日本人の配偶者等③永住者の配偶者等④定住者の4つがあります。
このページでは、①永住者になるための方法を紹介していきます。
永住ビザ(永住者)になるには?
すでに在留資格があり日本に住んでいる外国人が「永住許可申請」をして許可されれば、「永住者」になることができます。
永住許可を受けた外国人は、「永住者」の在留資格により日本に在留することができます。在留資格「永住者」は在留活動・在留期間のいずれも制限されないので、他の在留資格と比べて大幅に在留管理が緩和されます。
このため、永住許可については、通常の在留資格の変更よりも慎重に審査する必要があることから、一般の在留資格の変更許可手続とは独立した規定が特に設けられています。
なお、「永住者」の親から日本で生まれた赤ちゃんも「永住者」になることができます。
永住ビザ(永住者)になるための要件は?
永住ビザでは次のポイントを審査されます。
要件①素行善良要件
「素行善良要件」とは法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることを指します。
普段の生活の中で、人に迷惑をかけずに生活していますか?ということです。
▼具体例
- 日本の法律に違反して、懲役、禁錮又は罰金刑を受けていないこと。
- 過去の在留の中で多数回の交通違反をしていないこと。
- 留学生や家族滞在等のビザの方が入管から資格外活動の許可を得て仕事をしていること、もしくはオーバーワークをしていないこと。
等があげられます。
この他にも、素行善良要件のケースはたくさん考えられますが、ケースバイケースで判断されるため明確な基準は存在しません。
この素行善良要件については日常生活において法律に違反するような行動をしていなければ、特に心配する必要はありません。
要件②:独立生計要件
「独立生計要件」とは日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることを意味します。
つまり、永住者として自立して生活することができる能力をチェックするための要件です。
具体的には、永住ビザの申請する方が自分で生計を立てるための収入源を持っていること、または、その方と同居している家族が世帯全体の生活を支えられるほどの収入源を持っていることです。
必ずしも申請人自身が具備している必要はなく、申請人が配偶者等とともに構成する世帯単位で見た場合に安定した生活を続けることができると認められる場合には、これに適合するものとして扱われます。
独立生計要件を考える上で重要となるのは「年収」と「対象期間」の2つです。
年収については入管は明確な基準は公表していませんが
- 2人世帯までであれば300万円以上
- 3人世帯の場合は350万円以上
- 4人世帯の場合は400万円以上
の年収が許可・不許可を分けるボーダーラインとされています。
独立生計要件は世帯の年収で審査されるため,同居している家族の中で,申請人以外にも収入を得ている家族がいる場合は,そのご家族の収入は永住ビザの審査対象となります。
なお、家族滞在ビザの方の年収は含まれない傾向が強いため、世帯の年収で申請を考える際には注意が必要です。
対象期間については永住ビザの原則的要件では直近5年間の収入がチェックされます。
なお、上記の金額は絶対的な要件ではなく、年収と対象期間がボーダーラインとされている金額に近いようなケースであれば、永住ビザの申請にチャレンジする価値があります。
要件③:国益要件
国益適合要件は、永住ビザを申請する方が日本に永住することで日本にとってプラスになるかという要件です。
個別に見ていきましょう。
ア.原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。
この場合の引き続きとは、在留資格が途切れることなく在留を続けることをいいます。
※この期間のうち直近5年間において就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き在留していること。
イ.罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
※ 納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付に加え、入管法に定める届出等の義務を履行していることが求められます。
ウ.現に有している在留資格について、入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※ 当面の間は、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
エ.公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
近年の永住ビザの審査傾向からすると、ア在留年数,イ公的義務の履行が特に重要視されています。
永住ビザの特例的な要件
永住許可に関するガイドラインでは、原則10年在留に関する特例的な要件を定めており10年以上日本に在留していなくても永住の申請ができる方がいます。
そのため、外国人が永住ビザを取得する場合、自分に当てはまる特例要件があるかどうかチェックすることが近道です。
以下に、原則10年在留に関する特例の要件を紹介します。
永住ビザの特例①「日本人、永住者及び特別永住者の配偶者またはその実子」
日本人や永住者の配偶者の場合、以下の2つの要件を満たすことで永住ビザの申請をすることができます。
- 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続していること
- 引き続き1年以上日本に在留していること
つまり10年間在留することなく、永住ビザの要件③「国益適合要件」のみをクリアすることで、永住ビザを取得することができます。
しかし、日本でどの様に生活するかは審査の対象となりますので、その点には注意が必要です。
永住ビザの特例②「在留資格が定住者の人」
この特例は在留資格が「定住者」かつその在留資格で日本に5年以上継続して在留していることが要件になります。
また「日本人の配偶者等」の在留資格をもっていた人が、在留資格変更許可を受けて「定住者」の在留資格を付与された後、引き続き日本に5年以上在留していない場合でも「日本人の配偶者等」の在留資格と「定住者」の在留資格で合計5年以上在留している場合にも永住ビザの要件を満たすものとされています。
永住ビザの特例③「難民認定を受けた人」
難民の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していれば、永住ビザの特例に該当します。
この特例は難民認定された後、かつ、難民認定後も日本に5年以上継続して在留していることが要件になります。
難民申請中の在留ではないのでご注意ください。
永住ビザの特例④「特定の分野で日本に貢献したと認められる人」
この特例は、入管が定める「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」に該当し、かつ、5年以上日本において社会生活上問題を起こすことなく滞在してきたことが要件となります。
▼「我が国への貢献」の事例
科学技術研究者として活動し科学技術誌に研究論文数十本を発表した実績が日本の科学技術向上への貢献があったものと認められた方や、長期間にわたり我が国の大学教授として勤務し、高等教育に貢献が認められた方などがいます。
永住ビザの特例⑤「特定の区域内にある機関で日本に貢献したと認められる人」
地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い、当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合、3年以上継続して本邦に在留していれば、本特例に該当します。
申請人の活動やその所属機関側の要件(区域等)を満たしてないといけなく、後述するポイント計算の様に、本人の能力や在留状況によって変動しない要件が含まれているので、一部の限られた方のみしか当てはまらないものとなっています。
永住ビザの特例⑥「高度専門職のポイント計算にて70点以上の人」
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること
イ 3年以上継続して日本に在留している人で、永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること
高度人材外国人とは、就労資格で日本に在留する外国人の中でも、経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた外国人のことを指します。
入管が定める一定のポイントをクリアした高度人材外国人には、優遇措置が与えられます。
永住ビザの特例⑦「高度専門職のポイント計算にて80点以上の人」
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること
イ 1年以上継続して本邦に在留している人で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること
上記⑥と同趣旨で高度人材ポイント計算において80点以上の方は永住ビザの特例要件に該当します。
永住ビザを申請する際の注意点
本チャプターでは,当社でよく聞くご質問から永住ビザを申請する際の注意点をまとめています。
①申請時期について
例えば2024年10月に上陸から10年を迎える方の場合は、2024年10月にならないと申請できないのでしょうか?
この点については期限到来の2か月前である2024年8月を目安に入管に提出することが可能とされています。
これは提出後の審査期間が4ヶ月から6ヶ月と長期に及ぶため、この間に要件である2024年10月が到来するためです。
なお、既にお持ちの在留カードの期限が近い場合は、永住ビザ申請より先に更新の手続きをする必要があります。永住ビザを申請しても、今お持ちの在留カードの期限が自動で延長されるわけではないので、その点には注意が必要です。
②身元保証人について
永住ビザ申請時には,身元保証書の提出が必要です。
そして身元保証人となれる方については制限もあります。
身元保証人は永住ビザを申請する外国人がこれからも日本で生活するにあたって、日本の法令遵守や公的義務の履行に関する必要な支援を行うことを保証するという内容になっています。
そのため、一般的な保証人が負う借金の肩代わりの様な責任は発生しません。
そしてこの身元保証人になれるのは日本人、または既に永住ビザを取得している外国人(特別永住者の方も含みます。)に限られます。
なお、身元保証人の条件に「就労をしていること」という決まりはありませんが、身元保証人の趣旨を考えると無職の方はおすすめできません。
③交通違反について
永住ビザの要件①「素行善良要件」で永住ビザの申請時に求められる原則的な要件を見ていきました。
この中で,「過去の在留の中で多数回の交通違反をしていないこと」を例示しましたが、具体的には、駐車違反という軽微な違反でも回数が多いと注意が必要です。
目安としては直近3年間で違反点数は6点以下が一つの基準です。
以前のことで覚えていないという方は「運転記録証明書」という書類を最寄りの自動車安全運転センターで発行してもらい確認する方法があります。
④社会保険料の支払い遅れについて
永住ビザの要件③「国益適合要件」にて公的義務を適正に履行しているかを見られます。お勤めの方は会社にてお支払いをしているので遅れは多くありませんが、個人事業主の方や転職をされた方などは支払い漏れが時々ありますので注意が必要です。
また、経営者のビザである「経営・管理」のビザは、自分含め社員について会社として納税義務を適正に履行しているかを見られます。
そこで、たまたま口座にお金がなく引き落としがされていなかった・経理が支払うのを忘れていたなどこれら適正に履行していない場合は、永住ビザを申請しても思っていた結果にならないことがあります。
確認の方法としては「社会保険料納入証明書」という書類を事業所の住所を管轄する年金事務所から取得すると支払い時期まで確認できますので、心配な方は永住ビザの申請前に確認するようにしてください。
永住ビザの申請先
永住ビザを申請する際の提出先は「住居地を管轄する地方出入国在留管理官署」と定められております。
勤務先にある最寄りの入管等、永住ビザ申請の提出先を好きに選べる訳ではないので注意してください。
なお、住所地というのは実際に居所を有している場所である必要があり、現住所の届け出は、住民基本台帳法第22条で義務となっているので、旧住所のままというのは、永住ビザの原則的な要件である「イ.公的義務の履行」が適正にされていないという評価を受けてしまうので注意が必要です。
永住ビザの審査期間
入管が公表している標準処理期間では「4か月」となっていますが、最近は申請件数も増えており、東京入管などでは「6か月」を超えているのが現状です。「4か月」というのは稀なケースと考えた方がいいでしょう。
なお、提出書類に不備や追加がある場合はその都度審査がストップしてしまいます。漏れなく、スムーズに結果へつなげたいのであれば、プロへの依頼をお勧めします。
永住ビザのまとめ
地位や身分に基づく居住資格は4種類ありそのうちの、1つ永住ビザについて紹介しました。
すでに在留資格があり日本に住んでいる外国人が「永住許可申請」をして許可されれば、「永住者」になることができ、就労は制限されていません。永住許可については、通常の在留資格の変更よりも慎重に審査する必要があることから、一般の在留資格の変更許可手続とは独立した規定が特に設けられています。
永住ビザを取得できるのか事前に確認する必要があります。